ジャーナリストの野嶋剛(のじま・つよし)氏が「台湾美術の『恩人』石川欽一郎の絵が90年ぶりに『奇跡の発見』」と題して書いているので、別途、ご紹介したい。
このような折も折、台湾美術研究家の森美根子(もり・みねこ)さんが『語られなかった日本人画家たちの真実』を上梓し、50年におよぶ台湾近代美術の歩みを著した。
台湾近代美術は、石川欽一郎をはじめ塩月桃甫(しおづき・とうほ)、郷原古統(ごうばら・ことう)、木下静涯(きのした・せいがい)、立石鐵臣(たていし・てつおみ)など日本人画家の関与なくしては形成しなかったと言われ、本書は台湾で活躍した日本人画家たちの軌跡を留める貴重な作品だ。
森さんは前著『台湾を描いた画家たち─日本統治時代 画人列伝』(産経新聞出版、2010年)で、石川欽一郎、塩月桃甫、立石鐵臣の3人の日本人とともに、台湾絵画史に名を留める睨蒋懐、黄土水、陳澄波など台湾画壇第一世代の18人の画家を紹介している。
新著『語られなかった日本人画家たちの真実』とともに併せて読まれることをお勧めしたい。日本と台湾の間には、絵画界にも実に密度の濃い交流史があったことがよくわかる。
・書 名:『日本統治時代台湾 語られなかった日本人画家たちの真実』・著 者:森美根子・版 元:振学出版 http://shingaku-s.jp/index.html・発売元:星雲社・体 裁:四六判、並製、248ページ・定 価:本体2,000円+税 ISBN 978-4-434-24140-6 C0070・発 売:2017年12月(奥付:2018年1月11日)
森美根子(もり・みねこ)台湾美術研究家。1954年、東京都生まれ。1996年、台北県立文化センター開催「民俗風情―立石鐵臣回顧展」の日本側責任者を務めて以降、台湾人画家を紹介する展覧会を多数企画。また「台湾美術 現代の旗手5人展」「台湾の心・台湾の情―廖修平・江明賢二人展」(松濤美術館)「いま、台湾 台灣美術院の作家たち展」(松濤美術館)「立石鐵臣 麗しき故郷『台湾』に捧ぐ」(府中市美術館)などの展覧会に論文を発表。その間、国立台湾師範大学、国立台湾藝術大学、北京中国美術館、拓殖大学講座「世界の中の日本」、台湾政府文化部講座「台湾文化光点計画」などで講演。著書『台湾を描いた画家たち 日本統治時代 画人列伝』。了徳寺大学非常勤講師を経て、現在、一般財団法人台湾協会理事。