【國民新聞:平成27年3月25日】
日本戦略研究フォーラム編『中国の野望をくじく日本と台湾』
日本李登輝友の会事務局長 柚原 正敬
ここまで詳しく「中国の野望」を分析し、台湾の政治、経済、外交、歴史、民族問題等について
も言及しつつ、中国の野望をくじくために日本が採るべき具体策まで提言しているものは稀であろ
う。
本書で特に注目しているのは、中国共産党創設百周年の2021年と中華人民共和国成立百周年の
2049年。中国は、2020年までに第二列島線内の制海能力を持つ海軍を整備し、2040年から50年の間
に米海軍と肩を並べる海軍力を建設することで「中華民族の偉大な復興」を実現しようとしてい
る。
この野望を抱く中国にとって、まずは太平洋へ進出しなければならないが、その「かんぬき」つ
まり「列島線バリケードの支柱」となるとなるのが台湾だと指摘する。それゆえ日米は、台湾の政
治的価値と戦略的価値に関する認識を改めて共有し、運命共同体意識を高める必要があると剔抉す
る。
ところが、米国は台湾関係法を制定して台湾と実質的な軍事同盟を結んでいるものの、日本は台
湾との法的関係は一切ない。そこで、日本の喫緊の課題は米国の台湾政策と整合性を有する台湾政
策を推進できるようにする日本版「台湾関係法」の制定だと提言。
また、日台間の軍事・技術提携のためには「軍事情報保護協定」が必要で、そのため現職自衛官
を交流協会台北事務所に派遣できるようにすることも喫緊の課題だと提言する、読み応えのある一
冊だ。