Z経済提携協議(Taiwan-New Zealand Economic Cooperation Agreement: ECA)」を締
結した。
台湾はこれまで、パナマやグアテマラなど中南米の5カ国とFTAを結び、中国とも実質
的なFTAである「経済協力枠組み協定(ECFA)」を結んでいるが、国交のない国と
締結するのは初めて。
このFTAでは「コメなど一部を除くほぼ全ての品目を開放、サービスと投資もほぼ全
面的に自由化する。そのほか、航空自由化や電子商取引の促進、検査・検疫や知的財産保
護での協力、映画の共同制作や原住民族の交流強化なども取り決めており、双方の国会承
認などを経て発効する」(中央通信社)という。
これまで台湾が中国以外の国とFTAを結ぼうとすると、必ず中国が横槍を入れてき
た。日本も例外ではなかった。ところが、今回はいささか様相を異にしている。
下記に紹介する日経新聞では中国の反応について触れていないが、中国外務省は同日の
定例記者会見で「中国とニュージーランドとの関係発展は良好である。ニュージーランド
は、一つの中国の政策を堅持し、関係諸問題を適切に処理している。……外国と台湾地区
との経済貿易や文化面における民間的往来に異議を持たないが、ただし、いかなる形であ
っても政府レベルの関係発展に反対している」(China Radio International)と表明した
と伝えられる。
日経新聞が伝えているように、台湾は間もなくシンガポールともFTAとなるASTE
P(Agreement between Singapore and Taiwan on Economic Partnership:経済パートナー
シップ協議)を締結する見通しで、「現在は文字上の確認という最終段階」(Radio Taiwan
International)だという。
台湾は、こと経済問題に限っては中国の剄(くびき)を脱し、米国や日本との本格的に
FTAを協議する土壌が整ったようだ。
台湾がNZとFTA締結 先進国とは初、TPP参加にらむ
【日経新聞:2013年7月10日】
【台北=山下和成】台湾とニュージーランドは10日、実質的な自由貿易協定(FTA)
を締結した。台湾は中国との間でFTAに相当する協定を結んでいるが、先進国との締結
は初めて。馬英九政権はこれをきっかけに東南アジアや日米とのFTA締結も目指し、将
来の環太平洋経済連携協定(TPP)参加にもつなげたい考えだ。アジア太平洋の自由貿
易競争に拍車がかかりそうだ。
両者の代表は同日、ウェリントンで「ニュージーランド・台湾経済協力協定(ANZT
EC)」に調印した。台湾はニュージーランドと外交関係がないためFTAの名称は使わ
ないものの実態はFTAだ。双方の議会の承認を経て発効する。
台湾はニュージーランドにとって12番目の貿易相手。2012年の輸出入実績は約12億ドル
(約1200億円)だ。台湾から輸出する化学製品や鉄鋼、自動車部品など99%超の工業品の
関税が協定発効後ただちに撤廃される。
一方、台湾はニュージーランドの主力輸出品である農産物について73%の品目の関税を
即時撤廃。その他の農産物も2〜12年間で段階的に撤廃する。コメ関連は対象外とした。
台湾の張家祝・経済部長(経済産業相)は台北市内で開いた記者会見で「輸出を187億台
湾ドル(約623億円)押し上げる効果がある」などと説明。台湾の農業への影響については
「補助金などで損失を最低限に抑える」と強調した。
台湾は主要国と外交関係がなく、従来のFTA締結は中米諸国などに限られていた。今
回のニュージーランドとのFTA締結は先進国とは初めて。外交関係がない国との締結と
しても初のケースとなる。
台湾はシンガポールともFTAの協議を続けている。「最終段階に入った」(張経済部
長)とされ、今月中にも締結するとの見方もある。台湾は今年3月、米国と締結済みの貿易
投資協定の具体化協議を5年8カ月ぶりに再開しており、早期にFTA交渉に発展させたい
考え。11年9月に投資協定を結んだ日本とは、FTAも視野に入れる。
ニュージーランドやシンガポールはTPPの初期の参加国でもある。馬英九総統は昨
年、「20年までにTPPに加盟したい」と発言。こうした国々とのFTA締結で関係を深
め、TPP参加の地ならしにつなげる狙いもある。
アジアでは日中韓がFTA協議入りするなど、自由貿易競争が激化。台湾も輸出のライ
バルである韓国などに比べ出遅れた競争での巻き返しを図る考えだ。
台湾とニュージーランドのFTA締結は、08年に誕生した馬英九政権(国民党)が進め
た対中融和策の成果でもある。経済を中心に中国との交流を拡大し、10年には中国と経済
協力枠組み協定(ECFA)も締結。これが奏功し、従来は中国に気兼ねしていた国々も
台湾とのFTA協議に前向きになった経緯がある。最近は中国の経済成長が減速してお
り、中国以外との貿易・投資の拡大で成長を目指す意味もある。