片倉 佳史
■「な〜るほど・ザ・台湾」12月号「片倉佳史のもっと知りたい台湾」より
http://www.naruhodo.com.tw/katakura/index.php
■台湾体験 片倉佳史のブログ
http://blog.goo.ne.jp/taiwankatakura
興味深い新刊が出た。東京で編集プロダクションを経営する松田義人さんの『らくら
く台湾一周旅行』(白夜書房)だ。松田さんとは本書の対談で初めてお会いしたが、と
にかく台湾への思いがストレートに伝わってくる人物。台湾の話題になると、途端に表
情が生き生きしてくる好青年だ。
本書はあくまでも旅行というスタンスにこだわった一冊である。各種ガイドブックや
サブカルチャー本など、台湾をテーマにした書籍は数多く出ているものの、その内容は
必ずしもしっかりしたものとは言えず、全体的なレベルダウンがささやかれているのも
事実。とりわけ、これだけの多様性を誇る台湾の文化をあまりにも安易に語ってしまう
危険さを嘆く声は小さくはない。そんな中、台湾各地の日常をそのまま見て綴った旅日
記は、かえって新鮮な趣が感じられる。言ってみれば、生半可な台湾文化論でもなく、
ドタバタとした旅行記でもない一冊なのだ。
本書を読み進めていくと、著者がどれだけ台湾を愛しているかというのはもちろん、
台湾では文化の奥深さに触れるのが何よりも楽しいということがダイレクトに伝わって
くる。確かに台湾は表面をなぞるだけでも十分に面白く、しかも、言葉のできない外国
人を笑顔で迎え入れてくれるありがたい土地。著者は肩の力を抜いて、そんな台湾の風
景を真っ正面から見据えている。読む側も一人の旅人となって、軽い気持ちで読み進め
ていくと、より臨場感が出てくるはずだ。
さらに興味深いのは、著者がどこまでも「現場主義」を貫いていることである。奇妙
な先入観は持たず、蘊蓄もたれない。バスや列車を降りた瞬間に感じ取ったインパクト
と、身振り手振りを交えながら創りあげていった人間関係。そして、著者自身が出くわ
すさまざまなハプニングだけで、旅が編まれているのだ。
ハプニングと言えば、著者がどんな事態に陥っても、必ずどこかから親切な人が現れ、
そんな人々に支えられながら旅を続ける姿にも共感が持てる。台湾の町並みや自然風景、
食文化を楽しむばかりでなく、時にはトラブルに巻き込まれて痛い思いもする。読者は
そんな著者の旅模様をこっそりとのぞき見られる。この点も無視できないポイントかも
しれない。
台湾高鉄の開業で台湾南部への距離が一気に縮まったが、実際に旅をして、どんなこ
とが体験できるのかという点では、まだまだ未知数な部分が多い。そういった意味でも
新鮮な印象を得られるはずだ。
松田義人(まつだ よしひと)
1971年・東京都生まれ。出版社勤務を経てフリー編集者に。『たのしい中央線』(太田
出版)シリーズ責任編集を務めるかたわら、趣味の台湾旅行に余念がない。台湾で最も
好きな場所は花蓮(食べ物もウマいし、自然も豊富。もちろん人も暖かい)。
■著者 松田義人 http://deco-tokyo.com/main/
■書名 らくらく台湾一周旅行
■体裁 四六判、並製、208ページ
■定価 1,260円(税込)
■版元 白夜書房
http://www.byakuya-shobo.co.jp/product_info.php?products_id=1484
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