僚会合を官邸で開き、魚釣島、南小島、北小島の3島を20億5000万円で地権者から買い取
り、国有化すると決定し、正式発表した。翌11日の閣議で予備費の支出による購入を決
め、その日のうちに地権者と売買契約を交わした。
これが「尖閣諸島の国有化」だったが、この国有化に対し、尖閣諸島の領有権を主張す
る中国や台湾が猛反発、中国では各地で反日デモが繰り返された。台湾でも日本交流協会
台北事務所へのデモや尖閣諸島への海上デモが行われたことは未だ記憶に新しい。
ところで、国有化というが、いったい政府のどの部署が地権者と売買契約を結んだのだ
ろう。当時のニュースを振り返ってみてもはっきりしない。
例えば日経新聞は「購入後は海上保安庁が管理する。中国に配慮して船の待避(船だま
り)施設や気象観測所などの建設は見送る方針だ」と伝え、また産経新聞も「購入後は海
上保安庁の管理とするが、灯台や漁船待避施設などの整備は行わない方針」とほぼ同様の
ことを伝え、国有化後の維持・管理は海上保安庁が行うとのみで、売買契約は政府のどの
部署が結んだのかは明らかにされなかった。
最近、海上保安庁関係の資料を入手したところ、なんと「取得」すなわち売買契約も登
記手続きも海上保安庁が行ったと記してあり驚いた。売買契約の締結も、維持・管理も海
上保安庁だった。以下にその資料の該当箇所を紹介したい。
≪本年9月10日の「尖閣諸島の取得・保有に関する関係閣僚会合」において「尖閣諸島の取
得・保有に関する関係閣僚申し合わせ」が行われ、魚釣島、南小島及び北小島の所有権を
国が速やかに取得すること、取得及び管理は海上保安庁において行うこと等が申し合わさ
れました。
さらに、9月11日の閣議において尖閣諸島の購入経費として一般会計予備費20.5億円を
使用することが決定され、その後海上保安庁において所有者との売買契約締結、登記手続
きなどを行い尖閣諸島は全て国が所有することとなりました。なお、国有化の理由として
は、前記申し合わせに「尖閣諸島における航行安全業務を適切に実施しつつ、尖閣諸島の
長期にわたる平穏かつ安定的な維持・管理を図るため」とされており、今後は「関係省庁
は、内閣官房の総合調整の下、尖閣諸島の長期にわたる平穏かつ安定的な維持・管理を図
るため、その取得・保有に際し、相互に緊密に協力する」こととなっております。≫
国土交通省の外局である海上保安庁の年間予算は約1800億円。1万2000人を擁しているか
ら、そのうち半分の940億円は人件費だという。
平成25年度の予算の概算要求額をみても、巡視船艇・航空機等の整備や巡視船艇の整備
など「海洋権益保全のための海上保安体制の強化」として382億6700万円、「東日本大震災
の教訓を踏まえた防災対策の強化等」として102億1600万円などで、とても「灯台や漁船待
避施設などの整備」に回す予算は取れない状況にある。
補正予算として198億円が計上されたが、これとて領海警備に使う巡視船6隻やヘリコプ
ター1機の新造費など警備態勢強化のためだ。
やはり「灯台や漁船待避施設などの整備」「船の待避(船だまり)施設や気象観測所な
どの建設」は、予算上できない。国土交通省なら予算もあるのでそのような整備や建設も
可能だが、予算のない海上保安庁に売買契約をさせ、維持・管理も行わせることで、実質
的になにもしない状況を意図したことが看て取れる。民主党政権が中国に配慮して、この
ような措置を取ったことは明白だろう。
しかし、中国に「配慮」したことで、逆に中国の猛攻を受けることになったのは何とも
皮肉としか言いようがないが、民主党政権が決めた尖閣諸島の「平穏かつ安定的な維持・
管理を図る」こととは、日本は尖閣諸島には手も足も出さない、何もしない状況を実質的
につくることだったのだ。これを「売国奴政権」あるいは「媚中政権」と言わずして、い
ったいなんと呼ぶのだろう。