またお)胸像の除幕式が執り行われました(4月27日、第511号)。
式典では元富士見村村長で羽鳥又男顕彰会の関口隆正(せきぐち たかのぶ)会長が
挨拶し、羽鳥又男の台湾における功績とともに、羽鳥が学びそして教鞭をとった地に胸
像が建立される意義について話された。
羽鳥又男翁令息(三男)の羽鳥直之氏を通じてその挨拶文をお送りいただきましたの
でご紹介します。掲載に当って、タイトルと小見出しを新たに付し、注を加えたことを
お断りします。 (編集部)
「望峰澄心」の思い出の地に胸像を建立して─会長挨拶
羽鳥又男顕彰会会長 関口 隆正
■初の台湾旅行で感じた台湾の人々の心
俳句の季語に「風光る」というのが今の季節を表しているようです。春真っ盛りの今、
普通であれば陽光燦々と差し込む季節ですが、本日はあいにくの雨。しかし、暦の上で
は大安のよき日です。
年度初め公務多忙の中を出席いただいたご来賓をはじめ、珊瑚寺檀信徒会役員の皆様、
そして遺族、親戚縁者多数ご参加の中、「元台南市長、羽鳥又男先生」の胸像除幕式が
盛大に開催されるにあたり、顕彰会を代表して一言ご挨拶申し上げます。
最初から私事で恐縮ですが、一昨年の秋、珊瑚寺住職の企画で「元台南市長羽鳥又男
氏の足跡を訪ねて」というトリップに参加し、初めて台湾の旅をしました。
自分の無知をさらすようですが、想像以上に発展している台湾を見てただただ驚くば
かりでした。道路整備は勿論のこと、日本の技術支援で台湾の南北を走る鉄道も新幹線
も建設中とのことでした。一般市民の交通手段はバイクが主であり、その数の多さには
驚きました。ただ間もなくこのバイクが自動車に代わるだろうと言われましたが、それ
を裏付けるように自動車の看板の多さが目立ちました。勿論、日本のメーカーが断然多
いように思いました。
いろいろ驚くことばかりの旅でしたが、それ以上に私が感じたのは台湾の人たちの
「心」でした。
昭和20年8月15日、戦争が終わり日本人は台湾を引き揚げましたが、その後に残された
日本人のお墓から遺骨を集め、台湾の人たちは今でもその遺骨をお守りし、毎日鐘をつ
いてその霊を慰めているというガイドの説明でした。そして、その鐘をついているとい
う場所では、「私達がそれをやっている」という老婦人に偶然にも直接会うことができ、
感激したのを思い出します。
台湾旅行全行程の中で羽鳥又男先生に関係した史跡や名所のすべてを見学し、台南市
長としての治績に改めてその手腕、人柄を感じることができました。ただ、この時は胸
像寄贈の話は全然なかったのですが、その後レプリカ寄贈の話があり、建立場所につい
て紆余曲折がありましたが、今回この場所に建立できたのは、珊瑚寺住職の英断と檀信
徒会役員皆様のご理解とお力添えの賜と感謝している次第です。
■感謝と尊敬という道徳心
ここで、レプリカの寄贈についてふれたいと思います。
寄贈者は台湾の実業家であり、かつ大富豪である許文龍先生です。許先生は、台湾の
振興発展に功績のあった3人の日本人の胸像を作って(*注)、ゆかりの地や場に建立
しました。
1人は総督府の民生長官を務め、後に内務大臣、外務大臣を歴任し、東京市長もされ
た後藤新平先生、もう1人は台湾の治水事業にすばらしい功績を残され、更に大きなダ
ムを建設してそのダムが台湾の米作りを飛躍的に向上させた石川県出身八田與一(はっ
た よいち)先生。八田夫人は日本に引き揚げるのを惜しんでご主人の創ったダムに身
を投じて自らの命を絶つという悲しい出来事もあったと聞きました。そしてもう一人が
羽鳥又男先生です。
*編集部注─許文龍氏は浜野弥四郎(はまの よしろう)の胸像も作っていますので、
日本人は4人です。その他にも、李登輝前総統と鄭南榕の胸像を製作しています。
ところで、台湾は1895年、約110年程前、日清戦争の終了後、日本の植民地でした。通
常、植民地は搾取と圧政で住民は苦しい生活を強いられます。しかし、羽鳥先生は市長
に就任するや、台南市民を真の同胞として保護し、台南市の文化や経済の向上に努め、
市民の温厚で勤勉な気質と相まって輝かしい治績を挙げたことによって、市民の生活が
非常に向上したと言われています。
特に台南市は日本の京都のようで、非常に多くの文化財がありますが、戦時下の苦し
い時期、様々な苦難を乗り越えて、修復、保存に努め、その貢献が大きかったとして台
南の人々に高く評価され、胸像が台湾一級の古跡に指定されている赤嵌桜(せっかんろ
う)文昌閣の正面玄関ホールに飾られています。それは元市長に深い「感謝と尊敬」の
気持ちを表し、その業績を世の末まで残し、強いては台日の友好に寄与できればという
気持ちだと言われます。
今回、胸像のレプリカを贈ることになったのは、羽鳥元市長の故郷の人々に是非この
偉大な功績を末代まで伝えて頂きたいという思いからであると、寄贈の趣旨は説明され
ています。
日本にはかつて道徳という崇高な文化が国民全体にありました。しかし今、この素晴
らしい精神文化が大きく失われ、経済優先、効率優先の風潮の中で時に目や耳を覆いた
くなるような事件事故が起きています。
私は台湾を旅して、昔の日本人の美しい心を台湾の人の中に見ることができました。
この胸像を通して「感謝と尊敬」という道徳心が如何に大切かを感じていただけると思
います。
■一族および地域の誇り
羽鳥先生はこの珊瑚寺が石井小学校の仮校舎になった一時期、ここで学び、その後石
井小学校の正教員として奉職した石井小学校に非常に強いプライドを持っていたと遺族
からお聞きしました。
人は故郷を離れて暮らす時、どんな時でも故郷の山河を思い出すと言われます。この
胸像の左側にある「望峰澄心」の回文字こそそれを物語っていると思います。羽鳥先生
は、時には珊瑚寺の境内を遊び場にして飛び回ったかもしれません。また、先生として
充実した日々を過ごした思い出の多く詰まったこの場所に胸像が建てられたことは、先
生本人も満足していることでしょうし、一族の誇りであると同時に、地域の誇りでもあ
ります。
この胸像が取り持つ縁で、今後の日台の友好親善が図られることを期待して、言葉整
いませんが主催者の挨拶にかえさせていただきます。ありがとうございました。
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