「一つの中国」に関する台湾と中国本土との共通認識だと言われている「92年コンセンサス」
(九二共識)について、習近平・国家主席が「中国本土と台湾が一つの中国に属するということ」
と述べたことに対して、台湾の68.8%の人が「受け入れられない」と答えたという。
すでに本誌で伝えたように、総統として当時の全貌を把握し、国家統一委員会や国家安全会議を
主宰する立場にあった李登輝元総統ご自身も、これまで公の場で何度も「存在しない」と否定され
てきた。5月2日の憲法改正シンポジウムでも「そのような合意があったとは報告を受けておらず、
当時、中国との会談に出席した海峡基金会の辜振甫や許恵祐に聞いても、合意はなかったと言って
いる。これは2000年以後、蘇起・元大陸委員会主任委員が、国民党に都合よく利用させるために作
り上げたものだ」と改めて否定されている。
通常、「92年コンセンサス」は「中国と台湾が1992年、香港での協議で達した合意。『一つの中
国』を認めつつ、解釈は各自に委ねるとの内容」(5月5日付「産経新聞」)と解説されている。
しかし、総統だった李登輝氏はじめ辜振甫氏(故人、元海峡基金会理事長)や黄昆輝氏(当時、
総統府秘書長、現台湾団結連盟主席)もその存在を否定、なにより蘇起氏自身が2006年2月に「92
年コンセンサスは自分がでっち上げたもの」(2006年2月)と認めたと報じられているのだ。
自分の都合で歴史を捻じ曲げたのは、中国国民党の連戦・名誉主席であり、馬英九総統だったこ
とが明らかになりつつある。
「中台は“一つの中国”」習近平主席発言に台湾人の7割「受け入れられない」
【Focus-Asia:2015年5月25日】
「一つの中国」に関する台湾と中国本土との共通認識「九二共識」をめぐり、中国本土の習近平
国家主席は先ごろ、「つまりは中国本土と台湾が一つの中国に属するということだ」と述べた。台
湾で行われた世論調査では、習主席のこの発言について、68.8%の人が「受け入れられない」と
答えたという。香港メディア・東網が25日伝えた。
調査は台湾の国会観察文教基金会が実施。台湾の馬英九総統が「『一つの中国』は堅持しなが
ら、解釈はそれぞれにする」と主張していることに対して、「賛成しない」という人は53.2%だっ
た。
同基金会の姚立明氏は、「多くの人が『九二共識』を基盤とした両岸関係を続けることを支持し
ていないことが分かる。国民党が多くを語れば語るほど、選挙で不利になる」と指摘。さらに、台
湾の民意の中にすでに、2016年1月に行われる総統選挙で両岸問題が民進党候補の障害になること
はない、との考えが生まれていると分析した。
(編集翻訳 恩田有紀)