NHK「JAPANデビュー」の偏向番組 [柚原 正敬]

NHK「JAPANデビュー」の偏向番組 [柚原 正敬]
親日台湾を反日台湾に仕立て上げる

 石川県金沢市にある北潮社が発行する「時事評論・石川」(6月20日発行、第664号)に
日本李登輝友の会の柚原正敬・常務理事がNHK「JAPANデビュー」問題について寄
稿している。

 この論考で柚原常務理事は「日台戦争」という呼称がいかに的を射ていないかを説き、
「人間動物園」の実態は決して「見せ物展示」などではなかったことを明かしている。いささか長いが全文をご紹介したい。                     (編集部)

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NHK「JAPANデビュー」の偏向番組─親日台湾を反日台湾に仕立て上げる

                      日本李登輝友の会常務理事 柚原 正敬

 NHKはどうしてこんな底意地の悪い番組を作るのだろう、というのが偽らざる感想だ
った。親日台湾がその実、反日だったかのようだ。今年四月五日に放送された「NHKス
ペシャル シリーズ JAPANデビュー・第一回『アジアの一等国』」を見ての感想だ。

■「日台戦争」とは一体何か?

 この番組は「プロジェクトJAPAN」シリーズの第一回であり、今年から三年間、
「戦争と平和の百五十年」をテーマに放送するという。その嚆矢が「アジアの!)一等国!)」
だ。

 番組は明治二十八年の領台当初から昭和二十年の終戦まで、日本がいかに台湾人を差別
し弾圧したかを延々と描く。領台当初はその抵抗を武力で押さえつけ、これを「日台戦争」
と称し、日英博覧会ではパイワン族を「人間動物園」として!)展示!)し、「皇民化運動」
では宗教を弾圧して改姓名を強制、果ては二十一万人の台湾人を戦場に動員したとする。
だから「親日的とも言われる台湾に、今も残る日本統治の深い傷」があるとする内容だっ
た。

 この番組の内容を象徴しているのが「日台戦争」と「人間動物園」だ。多くの視聴者も
初耳だったようで、私自身も初めて耳にした。

 番組では「日台戦争」について、「武力で制圧しようとする日本軍に対し、台湾人の抵
抗は激しさを増していきます。戦いは全土に拡がり、後に『日台戦争』と呼ばれる規模に
拡大していきました」と説明しているので、「日台戦争」とは領台直後の混乱を平定した
ことを指しているようだ。NHKはこの件に関し「一九九〇年代に日本の台湾統治の専門
家が『日台戦争』と名付け、以後研究者の間では、この表現が使われるようになっていま
す。例えば『日清戦争|秘蔵写真が明かす真実』(講談社、一九九七年)、『東アジア国
際政治史』(名古屋大学出版会、二〇〇七年)などがあります」と、視聴者の質問に答え
ている。

 そこで、檜山幸夫・中京大学教授の『日清戦争』を見てみれば、確かに第六章に「日台
戦争」という小見出しがあり、住民がいかに抵抗したかが詳しく書かれている。だが、戦
争の定義はされていない。「清軍兵士と異なり、彼らが頑強に抵抗した」ことをもって
「日台戦争」と呼んでいるだけだ。

 台湾人が抵抗したのも無理はない。清国は台湾を「化外の地」、つまり清王朝による王
化が及ばない地と見做し、台湾の住人には何も知らせることなく日本に割譲したからだ。
そのため台湾では割譲反対の声が民政と軍事を司る清国台湾巡撫らから挙がり、住民の間
では日本軍が自分たちの土地を奪いに来るという噂が広まった。だから、女も子供も自分
たちの土地を守るために立ち上がり、台湾民主国軍や台湾人義兵とともに抵抗したのだっ
た。

 日本は下関条約で定めたように、平和裡に「二ヵ月以内に受け渡しを完了」できるもの
と思っていた。しかし、清国は手を拱くだけで何もせず、日本は武器を持った台湾側の抵
抗に対しては武力を用いるしかなかった。つまりこの戦いは、日清戦争という戦争後にお
ける治安回復のための一種の掃討戦であり、新たな戦争だったわけではない。日本は台湾
接収に当たって、平時は天皇や皇居の警護などに当たる近衛師団を派遣して事に当たらせ
た。ところが、近衛師団だけでは頑強な抵抗を止められず、最後は乃木稀典率いる第二師
団を投入することでようやく終息、樺山資紀総督は約五ヵ月後の十一月十八日に全島平定
宣言を発している。

 確かに激しい戦いであり、規模的にも決して小さくはなかった。日本軍の戦病死者は四
千八百六人にも上っている。だが戦死者は百六十四人のみで、ほとんどがマラリヤによる
病死者だった。

 このような武力衝突は確かに戦争状態ではあっても、宣戦布告がなされているわけでは
ないし、台湾側は台湾民主国のトップが早々に大陸に逃げたため、いわばゲリラ戦状態と
なっていたわけだから、それを安易に「日台戦争」と称することは当を射ていない。まし
てや日本軍の台北入城や台南入城は台湾人有力者や商人などの一致した要望でもあったの
だから、「日台戦争」という呼称は正確さに欠ける。だがNHKは、日本が武力で鎮圧し
たことと台湾人の抵抗を最大限にアピールする言葉として、刺激的な「日台戦争」という
呼称を用いたかったのだろう。そこにNHKの底意が垣間見える。

■「人間動物園」という偏向

 刺激的といえば、「人間動物園」の方が視聴者にはショックが大きかったようだ。

 一九一〇年、日英博覧会がロンドンで開かれた。番組では、ここに日本が台湾の原住民
であるパイワン族を連れて行き、「その暮らしぶりを見せ物とした」と紹介する。それに
イギリスやフランスが博覧会で植民地の人々を盛んに見せ物にしていたことを重ね、「人
を展示する人間動物園と呼ばれました。日本はそれを真似たのです」と断定的に解説する。

 しかし、誰がそう呼んでいたかは明かされない。そして、次の場面ではわざわざ「展示
された」と前置きして、博覧会に行った青年の息子と娘へのインタビュー場面を出す。二
人は生前の父から何も聞いていないにもかかわらず、「悲しいね。この出来事の重さ語り
きれない」と涙ながらに語る。

 だが、放送内容からはさっぱり日英博覧会の全容が見えてこない。実は、中山成彬・元
国土交通大臣が会長をつとめる「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」が日本政府の
公式報告書である『日英博覧会事務局事務報告』を精査したところ、この博覧会では「本
邦の品位を損するものは一切之を許容せさることに方針を定め」、「日本余興」として
「会場内に日本家屋数軒を建築しその内に於て日本物品の製作実演すること。パノラマ的
なる我田園の模型。アイヌ村落。台湾蕃人の生活状態。本邦演劇。獨樂曲藝、手品、雀藝、
水藝等。活動写真。要馬術」を行ったことが判明している。

 日英博覧会では何よりも「本邦の品位」に意を払い、日本物品の製作実演もすれば、演
劇や手品なども行い、パイワン族ばかりではなく、アイヌ人もその生活ぶりを見せるため
に普通に寝泊りしていたのであり、戦いの踊りや戦闘の真似事もその中の一つだった。だ
からこれは決して「人間動物園」などと言われる「展示」ではなかった。相撲も行われた
というから、むしろパイワン人やアイヌ人は誇りを持って戦いの踊りなどを披露したとい
うのが事実のようだ。

 このように、日英博覧会の全体像を示さず、日本が台湾の原住民を差別し、「人間動物
園」として「見せ物」としたとしか受け取られないような描き方はあまりにも一方的であ
り、これをして偏向と言うのである。ましてや、映像の専門家で、二度の台湾検証取材を
行った衛星放送「日本文化チャンネル桜」の水島総代表によれば、禁じ手である「やらせ
取材」の疑いが極めて濃いという。

■百十六ヵ所の事実歪曲

 実は、NHKの「JAPANデビュー」は「日台戦争」や「人間動物園」だけが問題で
はない。黄文雄氏によれば百十六ヵ所の事実歪曲があるという。だから、多くの人々が批
判の声を挙げた。取材を受けた台湾の日本語世代も、NHKに騙された憤りを隠さない。

 すでに「NHK『JAPANデビュー』に抗議する国民大行動」と銘打った抗議活動は
東京でも二回行われ、札幌、名古屋、豊橋、大阪、福岡、台北でも行われている。また、
日本李登輝友の会はNHKへの受信料不払いを合法的に行おうと、放送法を改正して強制
から任意の自由契約にするための署名活動を始めている。

 NHKへの批判は民間ばかりではなく、国会議員にも飛び火し、「日本の前途と歴史教
育を考える議員の会」は公開質問状を二度送り、放送から二ヵ月を過ぎて、「日本の統治
はひどかったという一方的な内容にしている」という観点から、自民党内には「公共放送
の公平性を考える議員の会」も設立された。

 五月三日放送の第二回目「天皇と憲法」でも、すでに多くの識者から天皇廃絶を示唆し
ているなどと非難の声が挙がっている。

 今後、公共放送のあり方とともに、このシリーズの中止を求めたり、NHKそのものの
「解体」を求める声はますます高まっていく気配が濃厚だ。祖国を貶め、台湾人をたぶら
かし、歴史を弄んだ代償は決して小さくないことをNHKは知ることになるだろう。

                                  【6月6日記】

*編集部注:自民党の「公共放送の公平性を考える議員の会」は6月11日に設立総会を開
 き、古屋圭司・衆院議員を会長に選出し、正式名称を「公共放送のあり方について考え
 る議員の会」としています。

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