謝長廷代表がTPP加入に影響と警告するも政治判断下せない5県産品輸入問題

謝長廷代表がTPP加入に影響と警告するも政治判断下せない5県産品輸入問題

 謝長廷・台北駐日経済文化代表処代表は昨日(12月5日)、輸入を禁止している福島県など5県産品解禁について「国民の健康第一だとした上で、放射能汚染がない食品の輸入は解禁すべきだと述べ、汚染の有無については科学的な方法で鑑定すべき」とのこれまでと同じ見解を述べ、また「国際的な安全基準に準じなければ、台湾が目指している環太平洋経済連携協定(TPP)参加に影響を及ぼすとの見方を示した」(中央通信社)という。

 本誌前号でお伝えしたように、すでに台湾政府自身がサンプル調査で放射能の影響はないという科学的根拠を公表し、公民投票による延期措置の期限も切れているのだから、台湾政府は誠意をもって速やかに解禁日を定めるべきだろう。

 一方、日本政府も5県の悲願を達成するため、これまでのように日本台湾交流協会台北事務所を窓口とするのではなく、せめて農水省の副大臣クラスを派遣して台湾側に早期解禁を求める積極的な姿勢を示してもらいたいものだ。

 朝日新聞がことの経緯を紹介し、台湾世論は依然として解除反対が多数を占める状況に、蔡英文総統が政治判断を下せないでいることを指摘、「包括的及び先進的な環太平洋経済連携協定(TPP)」へ加入したいこととのジレンマに陥っていることを紹介している。

 蔡英文総統は人体に有害といわれるラクトパミン飼料で育てた米国産豚の輸入を政治判断で決定した。しかし、台湾政府は5県産品に放射能の影響がないことを科学的に調査し公表もしている。ラクトパミン問題とは本質的に異なる。なぜ政治判断を下して輸入に踏み切れないのか、不可解だ。

—————————————————————————————–台湾の日本食品の禁輸、いつまで 世論に揺れる蔡政権:朝日新聞デジタル【朝日新聞:2020年12月4日】

 台湾が東京電力福島第一原発事故から続ける福島など5県産の食品禁輸について、解除を拒んだ2018年の住民投票の効力が11月末で切れた。日本政府は早期に解除を実現させ、同様に禁輸を続ける中韓にも働きかけたい考え。ただ、蔡英文(ツァイインウェン)政権は別の食品問題で世論の反発を受けており、慎重姿勢を崩していない。(石田耕一郎=台北、高木真也)

◆人気商品も輸入できず…

 台北市で日本産食品を中心に扱う小売店には、日本産の菓子や米、調味料などが並ぶ。店員によると、禁輸措置が始まってから、台湾で人気だった一部のおまけ付き菓子が輸入できなくなった。店員は「今も客からの問い合わせは多い」と言う。

 日本酒や調味料を輸入してきた台湾の食品商社「三商食品」によると、事故後は家庭向けの小瓶ソースや弁当用の小袋入りマヨネーズなどが禁輸になった。メーカーの工場が対象5県にあるためという。担当者は「原材料の一部が5県産でも、商品を廃棄させられてしまうほど検査は厳しい」と説明する。台湾の消費者の懸念を考慮し、禁輸対象にはなっていない酒も取り扱いを控えている状態だ。

 台湾は2011年3月の原発事故後、福島、茨城、栃木、群馬、千葉各県産の酒類を除くすべての食品を禁輸とした。5県以外からの輸入でも、産地証明書の発行手続きを求めている。

 緩和に向けた動きもあったが、18年11月の住民投票で有権者の多数が禁輸の継続を選択。当局は2年間は世論の意向に反する政策はとれなくなったが、今年11月末でその縛りが解けた。

◆香港、中、米に次ぐ輸出先

 日本政府によると、台湾は人口が約2350万ながら、日本の農林水産品・食品の輸出先として、10年は香港、米国に次ぐ3位(609億円)。昨年は香港、中国、米国に次ぐ4位(904億円)で全体の約1割を占める。リンゴや酒類、ソースなどの調味料の輸入が多い。

 日本政府は30年に農林水産品の輸出額を今の5倍以上の5兆円に増やす目標を掲げる。台湾は日本食へのなじみも深く、成長が見込める地域の一つ。同じく事故後に禁輸を続ける中韓に解除を迫る狙いからも、様々なルートで台湾側に全面解禁を求めてきた。農林水産省の担当者は、台湾による禁輸が全面撤廃されれば、輸出時の手続きの簡略化などで5県産以外の輸出にも弾みが付くとみる。

 ただ、蔡政権は解除の是非についての見解を公式にコメントしていない。

 政権は8月に成長促進剤・ラクトパミンを使った米産豚肉の輸入を来年1月から認めることを表明し、世論の厳しい批判を浴びている。対米関係強化を狙った判断だったが、食品の安全に対する住民の関心の高さが示された形で、日本食品をめぐる判断は当面先送りされそうだ。

 台湾世論は依然、解除反対が多数を占める。台湾民意基金会が9月に行った調査では解除反対が65%強、賛成は約28%にとどまる。解除を強行すれば反発は必至で、同基金会は「政権は不発弾を抱えている状態だ」と指摘する。

 11月にあった米産豚肉の解禁に反対する集会に参加したタクシー運転手の男性は「放射性物質の影響は今の科学では解明できないものもある。禁輸解除には絶対反対だ」と話した。

◆TPP加入にも影響

 ただ、日本食品の輸入解禁は、台湾が目指している「包括的及び先進的な環太平洋経済連携協定(TPP)」への加入問題とも絡んでいる。中国の習近平(シーチンピン)国家主席が11月20日にTPP参入の意向を表明。中国が先に参入すれば、台湾排除に動くとの観測が台湾社会で広がる。来年のTPP議長国は日本が務めることになっており、蔡政権の高官も台湾メディアに、日本食品の禁輸問題がTPP加入交渉での懸念材料になっていることを認めている。

※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。

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