米国防総省高官が台湾を「極めて重要な結節点」「アンカー(碇)」と表現

米国防総省高官が台湾を「極めて重要な結節点」「アンカー(碇)」と表現

 昨日の本誌でお伝えしたように、産経新聞はリトアニアなどの北欧や東欧諸国が台湾との関係を強化しはじめた背景を伝える三井三奈・パリ支局長による記事を掲載しました。

 本日の1面で産経新聞は「米国防総省高官が今月、上院外交委員会に提出した陳述書で、インド太平洋における台湾の重要性について「米国の同盟ネットワークの極めて重要な結節点だ」と説明していたことが明らかになった」として、過去にはない表現だと伝える記事を掲載しました。

 上院外交委の台湾問題に関する公聴会にこの陳述書を提出したのは、中国専門家のイーライ・ラトナー国防次官補だそうで、下記の陳述書を読み上げたと伝えています。

「台湾が米国の安全保障になぜそれほど重要か、その概観から始めたい。台湾は第1列島線における極めて重要な結節点に位置し、インド太平洋地域における安全保障と米国の死活的利益の防衛に極めて重要な米国の同盟国・パートナー網をアンカー(いかり)となって支えている」

 本会の「政策提言」でも台湾については「『自由で開かれたインド太平洋』における地政学上の要衝にあり、中国の外洋への展開を扼する重要な位置にある。日米同盟にとっての戦略的価値は、太平洋への軍事的展開を図る中国を阻止するのみならず、中国戦略原潜の南シナ海への展開を牽制することにより、米国の核の傘の信頼性を確保する上でも掛け替えのないもの」などとその重要性について表現してきましたが、このラトナー国防次官補による「極めて重要な結節点に位置」という表現は、台湾が第1列島線の結び目に台湾は位置しているということですので、台湾の地政学上の位置づけをより明確に表現していることになります。

 また「インド太平洋地域における安全保障と米国の死活的利益の防衛に極めて重要な米国の同盟国・パートナー網をアンカー(いかり)となって支えている」という表現も、中国が台湾問題を「核心的な利益」と位置づける表現を思い出させ、米国にとって台湾はどんな代償を払っても守らなければならない重要なアンカー(anchor)だと位置づける表現です。

 米国の同盟国・パートナー網のアンカー、つまり、船を一定の場所に留めておくための重りの役割を果たしていると評価しているわけですから、台湾が「自由で開かれたインド太平洋戦略」に果たす重要性を最大限に表現した言葉かと思われます。

 ちなみに、ラトナー氏は「2011〜12年、国務省で中国・モンゴル問題を担当し、15〜17年にはバイデン副大統領(当時)の副補佐官(国家安全保障担当)を歴任。バイデン政権下では国防長官特別補佐官として、国防総省内に新たに設置された中国タスクフォースを率いた」(2021年7月23日付「時事通信」)という人物だそうです。

 バイデン政権の台湾へのスタンスは、トランプ前政権を除いて米国の歴代政権がとってきた「戦略的曖昧性」というスタンスを取らず、台湾を支持する戦略に変わりつつあることを示すイーライ・ラトナー国防次官補の陳述書のようです。下記に全文をご紹介します。

—————————————————————————————–米「台湾は同盟の結節点」 過去にない表現 戦略的評価【産経新聞:2021年12月31日】https://www.sankei.com/article/20211230-MZNJGU3Z6RNTXIMWMOKIU6GUHE/?294821

 【ワシントン=渡辺浩生】米国防総省高官が今月、上院外交委員会に提出した陳述書で、インド太平洋における台湾の重要性について「米国の同盟ネットワークの極めて重要な結節点だ」と説明していたことが明らかになった。当局者は、過去にはない表現としている。米国の地域安全保障に不可欠な台湾の戦略的価値を強調することで、軍事的威圧を続ける中国を牽制(けんせい)したとみられる。米国の「一つの中国」政策の解釈変化を指摘する見方もある。

 12月8日の上院外交委の台湾問題に関する公聴会。証人のラトナー国防次官補(インド太平洋安全保障担当)は冒頭の陳述書を読み上げた。

「台湾が米国の安全保障になぜそれほど重要か、その概観から始めたい。台湾は第1列島線における極めて重要な結節点に位置し、インド太平洋地域における安全保障と米国の死活的利益の防衛に極めて重要な米国の同盟国・パートナー網をアンカー(いかり)となって支えている」

◆中国の圧力牽制

 公聴会で証言する高官の陳述書は事前に議会に提出される政府見解である。国防総省幹部は本紙の取材に対し「『新たな言い回し』ではなく、単に状況を表現する最良の方法だから選ばれた」と強調しつつ、「結節点」や「アンカー」という表現が台湾に特別使用された例は見当たらない、と明らかにした。

 東西冷戦期、米国が日本や断交前の台湾を「反共産主義の防波堤」と呼んだように、米国は同盟国の戦略的な役割を比喩的に表現する場合がある。国防次官補の表現が示唆する台湾の位置づけや政策的意図をめぐり論議が広がっている。

 米中央情報局(CIA)などで長年分析官を務めた東アジア研究者のポール・ヘール氏は本紙取材に「政策転換を意図したとは考えられないが、米政策当局者が台湾を西太平洋の米国の安全保障にとっての『極めて重大な結節点』と過去に特徴づけたことはなかった」とし、他の高官が同じ評価を繰り返すか注視する必要があると強調した。

 米政府は「民主主義を共有する重要なパートナー」として台湾との関係強化を進めてきた。インド太平洋における中国の軍事的覇権の追求を受け、地政学的要衝にある台湾の戦略的価値を米国がかつてなく評価していることが、「結節点」との表現からうかがえる。

 米政策研究機関「グローバル・タイワン・インスティテュート」のラッセル・シャオ執行長は「中国が軍事力で台湾を破壊すれば深刻な結果を招くという米国の認識を明確に示した」と話す。台湾の武力統一が米国の地域同盟網の崩壊に直結するとの危機意識を同盟国やパートナーに投げかけたという。

 陳述書でラトナー氏は「台湾の自衛力向上は喫緊の課題」とも指摘した。米国側は、インド太平洋の平和と安定の「礎石」と位置付ける日米同盟や地域の安定には台湾の安全が不可欠だとみて、台湾の蔡英文政権にも自助努力を促した。

◆「非公式な変化」

 一方、ヘール氏は外交誌ナショナル・インタレストの論文で、陳述書から「いかなる状況でも中国による台湾統一は容認できないという判断」が読み取れると指摘。「中国はただ一つであり、台湾は中国の一部であるとの中国の立場を認識する」という「一つの中国」政策との整合性が問題となる可能性を示した。

 米国務省や国家情報会議で中国の対外戦略分析を担当したジョージワシントン大のロバート・サター教授は「『一つの中国』政策はあいまいで広範囲にとらえることが可能」と指摘。バイデン政権下で同政策をめぐる「非公式な変化」が徐々に起きていることを陳述書は示唆したと語った。

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