浅野和生編著『1895−1945 日本統治下の台湾』(展転社)を推す  宮崎 正弘

浅野和生編著『1895−1945 日本統治下の台湾』(展転社)を推す  宮崎 正弘
平成国際大学教授で本会理事の浅野和生氏の編著により『1895−1945 日本統治下の台湾 戦後
70年の視座から』(展転社、2015年12月20日刊)が出版された。

 台湾統治から120年の節目の年。特に日本の台湾統治のうち「1895年の統治の開始と1945年の統
治の終焉に着目」し、一般に「植民地支配」と言われる台湾の統治がどのように行われ、どのよう
に変化したのかを跡づけるとともに、果たして日本の台湾統治は「植民地」であったのかという根
源的な問い掛けをする興味深い内容だ。

 台湾問題にも造詣が深い評論家の宮崎正弘氏が元旦の「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」で取
り上げ、特に浅野和生氏が執筆した第6章「安倍首相の『戦後70年談話』と台湾」に焦点を当て、
「この箇所を読んで爽快な気持ちになった」とつづっている。

 なお、本書は本会でも取り扱う予定で、近々ご案内したい。本会会員の皆さまには、自宅に居な
がらにして、送料込みで定価より安くお頒ちする予定です。


【宮崎正弘の国際ニュース・早読み:平成28年(2016)1月1日(元旦)」

浅野和生編著『1895−1945 日本統治下の台湾』(展転社)

安保法制成立でほっとしたのは台湾の民衆だった
安倍談話を日本人より熱心に見守り、聞き入った台湾

 この本は日本が統治した台湾でいったいどのような政治が行われたか。それは列強の搾取だけと
いう植民地主義の遣り方と、日本の教育重視、拓殖、殖産という善意の政策とどのような違いがあ
るかを学術的に論じた論考が集められている。

 下関条約で台湾は清朝から日本に割譲された。そのときに日本の反応はどうだったか、という
テーマは、これまであまり学術的研究のテーマとなったことは稀だった。

 日本統治下の台湾の地方行政制度の変遷、戦前の台湾における地方選挙に関しての考察も日本の
アカデミズムでは、少なかった上、蒋介石の台湾接収の経過さえ、くわしくは論じられてこなかっ
た。

 概括的にサンフランシスコ条約で日本は台湾を放棄したが、国際法的に国民党が不法占拠してい
る格好でしかなく、「国際法上、台湾の地位は曖昧」というのが現在の日本政府の立場であり、こ
れは馬英九政権の言っている法的解釈とはまるっきり異なる。

 しかし、ともすれば学者が忌避しがちな台湾問題。ジャーナリズムやノンフィクションの世界に
於いて台湾問題はおおいに論じられてきたし、映画も台湾を舞台に様々な名作が制作されてきた。

 だが学術界は台湾を閑却してきたのだ。

 後藤新平、八田與一、明石元二郎らの名前は人口に膾炙しており、八田のダム建設の苦労譚は、
アニメにもなったし、野球の交流映画は大ヒット、相互の理解は深まり、お互いのアンケートを読
めば、「大好きな国」は日本では台湾が高位につけ、そして台湾からみれば一番は日本である。

 民間交流の深さはいうまでもない。

 さて、本書は最後のチャプターで「安倍談話と台湾」という短い文章が挿入されているが、この
箇所を読んで爽快な気持ちになった。

 戦後70年の安倍談話はすでに多くが論じた。有識者懇談会の論議を横目に、あの談話は安倍首相
がゴーストも使わずに一人で書いた。

 そして「台湾、韓国、中国など、アジアの隣人である人々」と、わざわざ「台湾」を、しかも一
番先頭に言及したことである。

 野党時代に安倍氏は台湾に何回か訪れ、李登輝前総統とも懇談しているが、このおりに台湾で開
催されたシンポジウムで安倍氏は「積極的平和主義のパートナー」として台湾を位置付けているの
である。

 これほど明確に台湾の立場を位置づけた宰相は戦後いなかった。

 そして「安保法制」の成立でほっとしたのは、むしろ台湾の民衆だった。台湾は日本にもアメリ
カと同様な「台湾関係法」の成立を呼びかけている。

 そのうえで、8月になされた「安倍談話」をおそらく日本人より熱心に見守り、聞き入ったので
ある。


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