台湾の「松下村塾」─芝山巌学堂に殉じた六士先生  占部 賢志(中村学園大学教授)

産経新聞に「消えた偉人・物語」という連載がある。毎週、土曜日に掲載されている。
執筆者は、植草学園大学の野口芳宏教授、皇學館大学の渡邊毅准教授 武蔵野大学の貝塚
茂樹教授、中村学園大学の占部賢志教授らだ。

 先週土曜日は占部賢志(うらべ・けんし)氏が「松下村塾の精神は芝山巌学堂に承け継
がれた」として「台湾の『松下村塾』」と題して芝山巌学堂を紹介していた。

 本誌読者には、今さら芝山巌学堂についての解説は不要であろうが、占部氏が書かれて
いる中に非命に倒れた6人の教師(六士先生)の一人として楫取道明(かとり・みちあき)
の名前が出てくる。楫取は本会の小田村四郎会長の祖父である。その縁で本会設立時から
副会長として関わり、現在は阿川弘之・初代会長の後を継いで第2代会長を務めている。

 土匪に虐殺された楫取道明の父が群馬県令(知事)や元老院議官、貴族院議員などを務
めた楫取素彦(かとり・もとひこ)で、吉田松陰の妹を夫人としている。道明は次男だっ
た。

 手島仁著『群馬学とは』が出版されたとき、六士先生の一人だった中島長吉も群馬県出
身で、息子を喪った楫取県令が、同じく息子を喪った中島家を訪れて漢詩を贈って両親を
慰めたというエピソードを掲載していることを本誌で紹介したことがある。

 当時、首相だった伊藤博文が台湾を訪れたとき、六士先生を偲んで「学務官僚遭難之
碑」を揮毫、また芝山巌学堂跡には「台湾教育の聖地」として芝山巌神社が建立され、教
育関係者や生徒などが参拝していたが、戦後、蒋介石にとって取り壊された。しかし、六
士先生たちの「芝山巌精神」を尊敬する地元有志が「六氏先生の墓」を建立している。

 芝山巌は、一般の観光コースに入っていない。しかし、「こども大使」を育成しようと
する占部氏のように、芝山巌を訪れる日本人は少なくない。訪台した折には、日台交流の
原点といえる芝山巌を訪ね、お墓に参拝したいものだ。


占部賢志(うらべ・けんし) 昭和25年、福岡県生まれ。九州大学大学院博士課程修了。
福岡県の公立高校教諭として奉職し日本史を担当。高校ホームルーム経営研究会代表、福
岡県いじめ問題対策協議会委員などを歴任。現在、社団法人国民文化研究会理事、NPO
法人「師範塾」塾長、NPO法人アジア太平洋こども会議イン福岡「世界にはばたく日本
のこども大使育成塾」塾長。主な著書に『歴史の「いのち」─時空を超えて甦る日本人の
物語』『続 歴史の「いのち」─公に生きた日本人の面影』『語り継ぎたい美しい日本人の
物語』など多数。


台湾の「松下村塾」─芝山巌学堂に殉じた六士先生  占部 賢志(中村学園大学教授)
【産経新聞:平成24(2012)年6月2日「消えた偉人・物語」】
http://sankei.jp.msn.com/life/news/120602/edc12060207470001-n1.htm

 筆者は勤務の傍ら、NPO法人アジア太平洋こども会議イン福岡に併設の「世界にはば
たく日本のこども大使育成塾」の塾長を務めて4年目を迎えている。

 この塾の目的は、小学校高学年の児童を対象に1期1年4カ月のカリキュラムを通じてわ
が国の歴史と文化を修得させ、派遣先のアジア太平洋の国々で日本の真の姿を紹介できる
「こども大使」の育成にある。

 先般の春休みには台湾に赴き、震災に見舞われたわが国への惜しみない支援に対して感
謝を伝えるミッションを果たした後、八田與一(はったよいち)が築いた烏山頭(うさん
とう)ダム(台南)を視察。次いで六士先生と呼ばれる日本人教師が創設した「芝山巌
(しざんがん)学堂」を引き継ぐ士林(しりん)国民小学(台北)を表敬訪問して帰国し
たところである。

 当欄では、塾生の児童30人が感動に浸った士林国民小学創設にまつわる史実を取り上げ
てみたい。

 明治28年のこと、日清戦争の勝利の結果、台湾を領有したわが国は、早々に教師を募集
し、台北郊外の芝山巌と呼ばれる地で近代教育を開始した。

 ところが、翌29年元旦、彼ら日本人教師を抗日派の武装兵が襲撃し惨殺する。非命に倒
れた教師は楫取道明(かとりみちあき)ら6人。実は楫取の母、寿(ひさ)は吉田松陰の妹
に当たる。彼らは台湾人子弟と寝食をともにし、松陰さながらに心魂を込めて教え育んだ
という。

 教え子の一人、潘光楷(はんこうかい)はのちにこう述懐している。「我等(われら)
が恩師は南瀛(なんえい)の文化を啓発し、人心を陶冶(とうや)するの目的を以て遠く
絶海の孤島にのぞまれ、旦夕(たんせき)余等を教導するの任にあたり、余等亦(また)
慈父の親みを以て之に見(まみ)えたりしも、…空(むな)しく天涯の鬼と化せらる。今
や当時を追憶し轉々(うたた)断腸の念に堪へざるものあり」と。

 このように、芝山巌での教育は1年にも満たなかったが、その情熱の火は消えはしなかっ
た。悲報が内地に伝わるや、先覚者の志を継ぐべく全国津々浦々から有志教師が続々と訪
台し、半世紀に及んで献身した。

 筆者は、松下村塾の精神は芝山巌学堂に承け継がれたと見る。この2つの教場が日本と台
湾の新たな時代を拓(ひら)いたのである。

                         (中村学園大学教授 占部賢志)

写真:台北市郊外の芝山巌に建つ「学務官僚遭難之碑」とこども大使一行

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