ヨーロッパはなぜ台湾との関係を強化しはじめたのか

ヨーロッパはなぜ台湾との関係を強化しはじめたのか

 ヨーロッパと台湾の距離が急速に縮まっている。ヨーロッパが台湾との関係を強化しはじめている。

 10月21日、欧州議会は台湾との関係強化を欧州連合(EU)に求める「ヨーロッパ連合(EU)と台湾との政治関係と協力」という報告書を、賛成580票、反対26票、棄権66票で可決した。圧倒的と言ってよい。この報告書はEUに対する勧告であって拘束力はないそうだが、欧州議会の総意を示したものと理解できる。

 台湾国際放送は、台湾の外交部が「この報告書は、欧州議会が台湾とヨーロッパ連合(EU)との政治関係のために作成した初めての公式な書類」と発表したと報じている。

 また、報告書は「ヨーロッパ連合(EU)に対して、加盟国と共に、台湾との政治的な関係を強化すること、台湾をインド太平洋地域における重要なパートナーと民主国家の盟友と見なすこと、台湾とヨーロッパ連合との交流を全面的なパートナー関係に引き上げることを求め」る内容で、EU加盟国であるリトアニアが台湾の名を冠した代表処を設けるのと同じく「ヨーロッパ連合の台湾における代表機関『欧州経済貿易弁事処(オフィス)』の名称を『駐台湾欧州連合弁事処(オフィス)』に改めるよう提案」しているとも報じている。

 一方、台湾からは、スロバキア共和国、チェコ共和国、リトアニア共和国の3カ国を歴訪してサプライチェーンの構築をめざす経済視察団66名が10月20日に出発した。また、10月26日からは呉[金リ]燮・外交部長もスロバキアとチェコを訪問する予定だそうで、中東欧国家とのさらなる交流と連携を強化するためだという。

 なぜこれほど急速にヨーロッパと台湾の交流が頻繁になったのだろうか。

 台湾の外交部は「台湾の戦略地政学的価値がEUから高く重視されていることの表れ」(中央通信社)との見解を表明している。台湾の行政院も「ヨーロッパ中部・東部の国が台湾と関係を深めているのは、強権体制に抵抗して民主化のプロセスを歩んだ経験と、自由や民主主義といった普遍的な価値を共有しているからだ」(NHK)との見解を表明している。

 台湾側の見解には一理ある。

 今年3月の日米安全保障協議委員会(2+2)から6月の先進7ヵ国首脳会議(G7サミット)まで中国への「深刻な懸念」とともに「台湾海峡の平和と安定の重要性」が強調され、菅義偉総理(当時)とシャルル・ミシェル欧州理事会議長とウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長による5月27日の第27回日EU定期首脳協議でも同じ認識が共有された。

 G7直後、バイデン大統領も参加して6月14日に開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議では「中国の野心と強引なふるまいはルールに基づく国際秩序とNATOが関わる安全保障への挑戦」とし、日本や韓国、オーストラリアなどアジア太平洋の各国との連携を強化する方針の共同宣言を採択している。

 加えて、昨年8月末には、EU加盟国であるチェコのミロシュ・ビストルチル上院議長やフジブ市長など代表団90人が訪台し、中国が大反対してチェコに経済的圧力を強める一方で、ドイツ、フランス、スロヴァキアがこのチェコ代表団の訪台を支持した。

 EU加盟国のリトアニアが、台湾の大使館に相当する代表処の名称に台湾を冠し「台湾駐リトアニア代表処」を開設することに同意したのは今年7月。そして今年の10月6日には、フランスのアラン・リシャール元国防相率いる上院議員団が訪台している。

 このように、ヨーロッパと台湾の距離は今年に入って急速に縮まっている。交流も頻繁に行われるようになってきている。

 その理由は、台湾側からすれば「台湾の戦略地政学的価値をEUが高く重視していること」や「自由や民主主義といった普遍的な価値を共有しているから」となる。

 一方のヨーロッパ側は台湾をどのように見ているかと言えば、冒頭に紹介した「ヨーロッパ連合(EU)と台湾との政治関係と協力」という報告書を取りまとめた欧州議会のベイマース議員は「アジアで中国以外の国や地域と関係を深めることは、中国が民主主義を抑圧しようとした場合の重要な保険となる。EUは中国一辺倒になるべきではない」(NHK)と話しているそうだ。

 「自由で開かれたインド太平洋」や「台湾海峡の平和と安定の重要性」という安全保障の観点から台湾の重要性について述べるのかと思いきや、台湾と中国を相対的に見る観点からの発言にいささか意外な印象を受けた。ただ、この発言からは「民主主義」をとても大事に考えていることと、その民主主義を中国が抑圧するかもしれないという懸念または危機感を抱いていることは明確に読み取れる。

 つまり、台湾側の「自由や民主主義といった普遍的な価値を共有している」という見解とは一致していることになる。日本にしても「民主、自由、平和といった基本的価値観の共有」という立場から台湾を見ている点では変わりがない。ただ、日本の場合は、そこを土台に「緊密な経済関係と人的往来を有する」という認識が加わって「重要なパートナー」という見解が導き出されている。

 ヨーロッパの場合、中国とはこれまで緊密な経済関係で結ばれてきたが、台湾とはそうではない。しかし、中国のウイグルや香港への不当な人権弾圧により、人権という基本的価値観の齟齬から中国と距離をとるようになり、同時に、基本的価値観を共有できそうな台湾との距離を縮めはじめたという現況のようだ。その点で、ヨーロッパも米国と同じように、中国への「深刻な懸念」を共有したことを背景として、台湾との関係強化を図りはじめたと言える。

 日米同盟を中軸に、オーストラリア、インド、イギリスなどにヨーロッパが中国包囲網に加わる意味はすこぶる大きい。EUが安全保障まで踏み込むか、今後の動向に注目してゆきたい。

—————————————————————————————–欧州議会、「EUと台湾との政治関係と協力」を可決 EUに台湾との関係強化促す【台湾国際放送:2021年10月22日】https://jp.rti.org.tw/news/view/id/94295

 欧州議会が、フランスのストラスブールで開かれた本会議で、賛成580票、反対26票、棄権66票で、「ヨーロッパ連合(EU)と台湾との政治関係と協力(EU-Taiwan Political Relations and Cooperation)」報告書を可決しました。

 欧州議会は、報告書の中で、ヨーロッパ連合(EU)に対して、加盟国と共に、台湾との政治的な関係を強化すること、台湾をインド太平洋地域における重要なパートナーと民主国家の盟友と見なすこと、台湾とヨーロッパ連合との交流を全面的なパートナー関係に引き上げることを求めました。

 同報告書では、欧州連合外務・安全保障政策上級代表に対しても、台湾とヨーロッパ連合との密接な実質関係を反映するため、ヨーロッパ連合の台湾における代表機関「欧州経済貿易弁事処(オフィス)」の名称を「駐台湾欧州連合弁事処(オフィス)」に改めるよう提案しました。

 外交部が21日に発表したところによりますと、この報告書は、欧州議会が台湾とヨーロッパ連合(EU)との政治関係のために作成した初めての公式な書類です。この報告書では、いかにして台湾とヨーロッパ連合との関係を促進するかについて30項目以上の具体的な提案を行いました。それは、台湾とヨーロッパ連合との関係に対する欧州議会の高い関心を示すと共に、台湾の地政学的地位の重要性も浮き彫りにしているということです。

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