ドゥテルテ大統領「変心」に気をもむ習主席  中沢 克二(日経新聞編集委員兼論説委員)

ドゥテルテ大統領「変心」に気をもむ習主席  中沢 克二(日経新聞編集委員兼論説委員)
昨日(10月26日)、安倍総理は総理大臣官邸で来日したフィリピン共和国のロドリゴ・ドゥテル
テ大統領と首脳会談等を行った。

 安倍総理は会談後の夕食会の冒頭「本当に有意義な会話をすることができました。中身について
は申し上げることができません」「日本とフィリピンの関係は、深くて温かい家族や兄弟のような
関係であり、ドゥテルテ大統領と両国で未来を大きく花開かせたいと思います」と述べ、単なる
リップサービスではなく、首脳会談がうまくいったことをにおわせた。

 ドゥテルテ大統領も「日本は真の友人で、しかも兄弟よりももっと近しい関係にある」と挨拶し
たという。

 伝えられるところによれば、この首脳会談でドゥテルテ大統領は「南シナ海問題について『法の
支配に基づいて平和裏に解決したい』と強調。その上で、中国の南シナ海での主権主張を否定した
7月の仲裁裁判所判決を踏まえ、「(判決の)範囲外の立場を取ることはできない」と述べた。
『常に日本の側に立つつもりだ』とも語り、平和的な解決に向けて日本と連携していく方針を示し
た」(読売新聞)という。

 また、「中国に関して『プレーヤーではないにもかかわらず、いろいろなノイズを出したりして
いる』とも言及した」(産経新聞)と伝えられている。

 フィリピンは中国とは南シナ海をめぐって対立する関係にもかかわらず、ドゥテルテ大統領は10
月20日に行った訪中演説で「軍事的にも経済的にもアメリカと決別する」と述べ、習近平主席との
首脳会談では南シナ海問題を棚上げし「今後長い間、中国が頼りだ」と述べたとも伝えられてい
る。

 南シナ海問題は、日本やアメリカ、台湾、沿岸国のフィリピン、ベトナムが覇権的に浸出してい
る中国と対立関係にある。日本は無関心ではいられない。いったいドゥテルテ大統領の本心はどち
らにあるのか。外交辞令なのか。安倍総理との会談前に書かれたものだが、日本経済新聞の中沢克
二・編集委員兼論説委員が興味深い分析をしている。いささか長いが下記に紹介したい。


ドゥテルテ大統領「変心」に気をもむ習主席 中沢 克二(編集委員兼論説委員)
【日本経済新聞:2016年10月26日】

 フィリピン大統領、ドゥテルテは東南アジア諸国連合(ASEAN)域外では初の外遊の地とし
て中国を選んだ。しかも5年ぶりの公式訪問だった。北京で「米国との経済、軍事上の決別」まで
宣言させただけに、国家主席の習近平は勝ち誇っている。と思いきや、少し雲行きが怪しくなって
きた。

■「中国はふられた。だまされたのだ」

 「ドゥテルテは、中国からカネをせしめてフィリピンに帰国するや、すぐに顔を変えた」

 今、中国のインターネット上で、こうした議論が沸騰している。“顔を変える”とは、京劇の幕
間や酒席で演じられる伝統芸で、一瞬にして別人の顔に変わる「変面」を指す。本来は、中国のお
家芸だが、今回はドゥテルテが演じた。いわゆる変心である。

 直接的なコメントは「中国はふられた。だまされたのだ」。気の利いた書き込みには「借金のた
めの(米国との)偽装離婚だ。中国では良く目にする」というものもあった。なかでも過激な内容
は、中国のネット監視当局により削除されていた。

 ドゥテルテの“放言”には当然、米政府やフィリピン国内から批判が沸き起こった。すると彼は
発言をいとも簡単に修正した。「本当に言いたかったのは、米国に従属する外交政策からの決別
だった」「(米国との関係は)まったく何も変わらない」。悪びれない釈明である。

 今度は、中国のネット市民らが反応した。米大統領候補、トランプばりの大口と、発言の変化で
ある。極めてよく似ている。批判は覚悟で、ズバリ本音を口にする。うまくいかなければ、言い直
すまでだ。

 麻薬犯罪に手を染めた人を、有無を言わさず殺害している――。国際社会から批判を受けても、
支持率の高さをバックに馬耳東風の様相である。中国は、彼の肝煎りの政策である麻薬撲滅に関連
して多額の支援を申し出ている。

■習主席の皮算用、ドゥテルテの算盤

 では、習は今回、どのぐらいの援助をフィリピンに申し出たのか。フィリピンの閣僚が明かして
いる。訪中に同行した貿易産業相のロペスが、インフラ建設などの経済協力で中国側と合意した契
約は総額240億ドル(約2兆5000億円)に達する、と語った。

 しかし、中国側は公式にこの内容を発表していない。ちなみに中国は、すでにインドネシアやマ
レーシアにもこれを上回る援助、貸し付け、契約を提供している。しかし、リップサービスの段階
にすぎないフィリピンに240億ドルというのは大盤振る舞いがすぎる。

 7月の国際仲裁裁判所で中国がフィリピンに「全面敗訴」して以降、あれだけこだわってきた南
シナ海問題。習・ドゥテルテの会談と共同声明では、それを少しだけ脇に置いただけにすぎない。
今後も効果が曖昧なら批判が習や中国外務省に向かうのは避けられないだろう。

 対フィリピン援助が不透明な実態には「景気減速で不満を持つ一般中国人の反発を恐れて、真の
数字を明かしていないのでは……」との見方もある。いずれにせよ、習の皮算用の成否は、この段
階では分からない。

 中国の公式メディアもネット上で流布される“詐欺論”をかなり気にしていた。共産党機関紙、
人民日報傘下の国際情報紙、環球時報も論評でこの問題を取り上げた。まず、中国のネット上で話
題が沸騰した“ブラックジョーク”を紹介している。

 中国側がドゥテルテに要求した。「『南シナ海は中国のものだ』(中国語で漢字6文字)と言い
なさい」と。そして、こう付け加えた。「1つの漢字は1億(ドルの対フィリピン援助)に相当しま
すからね」。するとドゥテルテが答えた。「それなら、こう言っても良いでしょうか? 南シナ海
は中華人民共和国のものです、と」(漢字16文字)

 もともとの6億ドル援助が、中国を中華人民共和国に言い換えるドゥテルテの機転、言い回し一
つで16億ドルに跳ね上がった、という小話だ。つまり、中国が弄ばれている危機意識をあおってい
る。実際は、契約総額240億ドルだったのだが。

 そのうえで、論評はこうした“詐欺論”について国際政治の実情を理解していないと断じた。さ
らに「彼は、巧言令色、朝令暮改ではない」とドゥテルテを擁護している。習の側に立ち、習のメ
ンツを守るのに必死な解説だ。

■内政で頭がいっぱいな習主席

 中国・北京では10月24日、2017年の共産党大会に備えた党中央委員会第6回全体会議(6中全会)
が始まった。まさに習は正念場に立たされている。内政で頭がいっぱいなのだ。

 もしドゥテルテが、あえてこの中国政治の間隙を突いたとすれば、身体の小さなフィリピン側が
優位にゲームを進めていることになる。

 習の目の前でガムをかむような仕草(しぐさ)までしたというドゥテルテは一見、粗暴で傍若無
人に見える。だが、大口の裏では一定の算盤(ソロバン)をはじいている。

 日本にとっても対フィリピン外交は安全保障上、極めて重要だ。ドゥテルテは同25日、来日し
た。彼は、たび重なる日本側の要請をふって、先に中国を公式訪問。その発言で物議を醸した。そ
して中国から帰国後、わずか3日おいて日本にやってきた。

 ドゥテルテは、長く務めたミンダナオ島のダバオ市長の時代から、国際協力機構(JICA)を
通じた日本の対フィリピン援助・協力の実態を良く知っている。この交渉術にたけた人物と、首相
の安倍晋三が今後どう渡り合っていくのか、見ものだ。(敬称略)

               ◇    ◇    ◇

中沢克二(なかざわ・かつじ)
1987年日本経済新聞社入社。98年から3年間、北京駐在。首相官邸キャップ、政治部次長、東日本
大震災特別取材班総括デスクなど歴任。2012年から中国総局長として北京へ。現在、編集委員兼論
説委員。14年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。


【日本李登輝友の会:取扱い本・DVDなど】 内容紹介 ⇒ http://www.ritouki.jp/

*ご案内の詳細は本会ホームページをご覧ください。

● 台湾フルーツビール・台湾ビールお申し込みフォーム
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/rfdavoadkuze

●美味しい台湾産食品お申し込みフォーム【随時受付】
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/nbd1foecagex

*沖縄県や伊豆諸島を含む一部離島への送料は、1件につき1,000円(税込)を別途ご負担いただ
 きます。【2014年11月14日】

・奇美食品の「パイナップルケーキ(鳳梨酥)」 2,910円+送料600円(共に税込、常温便)
 *同一先へお届けの場合、10箱まで600円

・最高級珍味「台湾産天然カラスミ」 4,160円+送料700円(共に税込、冷蔵便)
 *同一先へお届けの場合、10枚まで700円

●書籍お申し込みフォーム
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/uzypfmwvv2px

・李登輝・浜田宏一著『日台IoT同盟─第四次産業革命は東アジアで爆発する』 *new
・李登輝著『熱誠憂国─日本人に伝えたいこと』 *new
・王育徳著『台湾─苦悶するその歴史』(英訳版)
・浅野和生編著『1895-1945 日本統治下の台湾
・片倉佳史著『古写真が語る 台湾 日本統治時代の50年
・王明理著『詩集・故郷のひまわり』
・李登輝著『新・台湾の主張
・李登輝著『李登輝より日本へ 贈る言葉
・江畑哲男・台湾川柳会編『近くて近い台湾と日本─日台交流川柳句集
・宗像隆幸・趙天徳編訳『台湾独立建国運動の指導者 黄昭堂
・小林正成著『台湾よ、ありがとう(多謝!台湾)
・喜早天海編著『日台の架け橋
・荘進源著『台湾の環境行政を切り開いた元日本人
・石川公弘著『二つの祖国を生きた台湾少年工
・林建良著『中国ガン─台湾人医師の処方箋』
・盧千恵著『フォルモサ便り』(日文・漢文併載)
・廖継思著『いつも一年生』
・黄文雄著『哲人政治家 李登輝の原点
・井尻秀憲著『李登輝の実践哲学−50時間の対話
・李筱峰著・蕭錦文訳『二二八事件の真相』

●台湾・友愛グループ『友愛』お申し込みフォーム *第14号が入荷!
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/hevw09gfk1vr

●映画DVDお申し込みフォーム
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/0uhrwefal5za

・『KANO 1931海の向こうの甲子園
・『台湾アイデンティティー
・『台湾アイデンティティー』+『台湾人生』ツインパック
・『セデック・バレ』(豪華版)
・『セデック・バレ』(通常版)
・『海角七号 君想う、国境の南
・『台湾人生
・『跳舞時代』
・『父の初七日』

●講演会DVDお申し込みフォーム
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/fmj997u85wa3

・片倉佳史先生講演録「今こそ考えたい、日本と台湾の絆」(2013年12月23日)
・渡部昇一先生講演録「集団的自衛権の確立と台湾」(2013年3月24日)
・野口健先生講演録「台湾からの再出発」(2010年12月23日)
・許世楷駐日代表ご夫妻送別会(2008年6月1日)
・2007年 李登輝前総統来日特集「奥の細道」探訪の旅(2007年5月30日〜6月10日)
・2004年 李登輝前総統来日特集(2004年12月27日〜2005年1月2日)
・許世楷先生講演録「台湾の現状と日台関係の展望」(2005年4月3日)
・盧千恵先生講演録「私と世界人権宣言─深い日本との関わり」(2004年12月23日)
・許世楷新駐日代表歓迎会(2004年7月18日)
・平成15年 日台共栄の夕べ(2003年11月30日)
・中嶋嶺雄先生講演録「台湾の将来と日本」(2003年6月1日)
・日本李登輝友の会設立総会(2002年12月15日)


◆日本李登輝友の会「入会のご案内」

・入会案内:http://www.ritouki.jp/index.php/guidance/
・入会申し込みフォーム:https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/4pew5sg3br46


◆メールマガジン日台共栄

日本の「生命線」台湾との交流活動や他では知りえない台湾情報を、日本李登輝友の会の活動情報
とともに配信する、日本李登輝友の会の公式メルマガ。

●発 行:
日本李登輝友の会(渡辺利夫会長)
〒113-0033 東京都文京区本郷2-36-9 西ビル2A
TEL:03-3868-2111 FAX:03-3868-2101
E-mail:info@ritouki.jp
ホームページ:http://www.ritouki.jp/
Facebook:http://goo.gl/qQUX1

●事務局:
午前10時〜午後6時(土・日・祝日は休み)

●振込先:

銀行口座
みずほ銀行 本郷支店 普通 2750564
日本李登輝友の会 事務局長 柚原正敬
(ニホンリトウキトモノカイ ジムキョクチョウ ユハラマサタカ)

郵便振替口座
加入者名:日本李登輝友の会(ニホンリトウキトモノカイ)
口座番号:0110−4−609117

郵便貯金口座
記号−番号:10180−95214171
加入者名:日本李登輝友の会(ニホンリトウキトモノカイ)

ゆうちょ銀行
加入者名:日本李登輝友の会 (ニホンリトウキトモノカイ)
店名:〇一八 店番:018 普通預金:9521417
*他の銀行やインターネットからのお振り込みもできます。


タグ: , , , , , , , , , , , , , ,