「日本がつくった台湾」の英断に日本は学べ  黄 文雄(文明史家)

「日本がつくった台湾」の英断に日本は学べ  黄 文雄(文明史家)

【黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」:2021年5月9日】*読みやすさを考慮し、小見出しは本誌編集部が付したことをお断りします。

◆台湾は5月5日から接種当日と翌日に仕事を休める「ワクチン休暇」を導入

 日本は、緊急事態宣言が4都府県で5月末まで延長され、さらに愛知県と福岡県も追加することを決定しましたね。日本政府のコロナ対策については、世界各国で言われているように、無策ぶりが目立ちます。ただ、緊急事態宣言を繰り返すだけで、他の策はこれといってありません。それに対して、台湾政府の対応は非常に柔軟で、軽やかに状況に合わせた策を即実施しています。

 コロナ関連だけでなく、社会生活を円滑にするための施策が次々と打ち出されています。日本と比較する意味でもここでご紹介したいと思います。

 まずは、コロナ関連です。台湾はワクチン接種が遅れている上に、感染者数が微増しています。そこで、政府はワクチン接種を加速させるために、公費接種の大勝を拡大するだけでなく、ワクチン休暇を設けました。

 ワクチンを接種した人が当日と翌日に仕事を休める制度です。以下、報道を一部引用します。

<台湾当局の発表によりますと、この「ワクチン休暇」は接種したことを示すカードを持っていれば、接種の当日と翌日に仕事を休むことができるもので、職場側が休暇の申請を拒否したり解雇などの不利な扱いをしたりすることを禁じています。 有給扱いにすることは求めていません。 民間の事業所で働く人も公務員もともに対象で、当局は5日から直ちに実施に移しました。>

 日本の医療衛生は台湾の大先輩ですが、現在、コロナのことで医療についてモタモタした感じを受けるのは政治の問題でしょう。特に与党内を蝕んでいる媚中派の存在が大きく関係していると思います。

 武漢発パンデミックの温床は、中国人の生活環境そのものにあります。コロナのパンデミックが過ぎ去っても、人類にとっての一大課題は何も解決していません。WHOの専門家は、武漢調査よりも中国人の生活環境調査をするべきなのです。

 そのほか、台湾政府は弱い立場の労働者を守るため、「労災保険特別法」を公布しました。以下、報道を一部引用します。

<同法は、労工保険(労働保険)条例で規定する職業災害保険(労災保険)と、被保険者の権利について定めた職業災害労工保護法を統合した特別法。今月23 日に立法院(国会)で可決された。労災保険への加入義務を持つ事業者規模を、従来の従業員5人以上から全事業者に拡大し、各種給付額を引き上げたほか、雇用主の負担軽減、職場復帰制度の拡充なども盛り込まれた。

 蔡氏は、台湾には1000万人余りの労働者がおり、就業人口の約9割を占めていると指摘。これらの人々を支えることは、台湾を支えることでもあると述べ、同法がより良い労災補償システム構築を目指すものであることを強調した。>

 日本では、コロナ禍の中で職を失った人がフードデリバリーの配達員に殺到する一方、労働環境が悪化しています。何の補償もなく、配達員が飽和状態の今、仕事の奪い合いで収入は減る一方。この状況に業を煮やした配達員らは、自分たちで同労組合を結成して抗議の声明を出す事態にまで至りました。

 もちろん台湾と異なり日本政府は知らんぷりです。

◆少子化対策にも実用的施策

 また、少子化が顕著となったと判断した台湾政府は、少子化対策に向けた新しい措置を施行しました。以下、報道を一部引用します。

<不妊治療費の助成金は、対象を従来の低・中所得世帯から全世帯に拡大。夫婦のどちらか一方が中華民国籍でかつ妻の年齢が45歳未満である場合、低・中所得世帯は現行の年間最高15万元(約59万円)を維持し、その他の世帯には初年最高10万元(約39万円)、翌年以降は毎回最高6万元(約23万円)が支給される。申請回数は、妻の年齢が40歳未満であれば子供1人につき6回まで、40〜45歳であれば同3回まで。

 妊婦検診費助成の申請回数は従来の10回から14回に増やし、検査項目に糖尿病検査や貧血検査などを追加する。これに合わせ、労動部(労働省)が1カ月以内に「性別工作平等法」(男女雇用機会均等法に相当)改正に着手し、受診のための有給休暇の日数を5日から7日に調整する。

 出産後の福利としては、育休手当を基本給の6割から8割に引き上げるほか、性別工作平等法の改正を経て、父母が同時に育児休暇を申請し、手当を受給できるようにする。>

 非常に具体的、かつ実用的な施策です。一方の日本は、不妊治療についての助成は拡充したものの、自治体にもよりますが、検診費の助成や検診休暇までは整備されていません。

◆台湾鉄路にも会社化に向けた改革案

 台湾鉄路にも、ついに改革案が出ました。4月2日の台湾鉄路の脱線事故を受けて、台湾政府はやっと動いたようです。以下、報道を一部引用します。

<台湾交通部(交通省)は4日、台湾鉄路(台鉄)を運営する台湾鉄路管理局(台鉄局)の改革を進めるため、「会社化」に向けた草案を行政院(内閣)に提出した。100%政府出資の公営企業とする方針。労働組合側は草案に強く反発し、差し戻しを求めている。聯合報などが伝えた。

 草案によると、会社名は台湾鉄路股フン有限公司(フン=にんべんに分)とする。交通部が年度計画や予算、決算、投資などを指揮する。小規模駅の運営による赤字などは政府が穴埋めする。鉄道設備の建設や更新に当たっては、交通部が組んだ予算を無条件で使用できるようにする。>

 もっとも、この報道内容を読む限りでは、あまり改革は期待できないような内容ですが。しかも、労組側が反対していて交通部との協議の席を途中退席したそうです。何事も一歩ずつですね。

 台湾の鉄道について、戦前の利権を牛耳っていたのは客家でした。その後、戦後になって中国から国民党軍が台湾に進駐してきてからは、国民党政府の利権になりました。鉄道利権に群がる人々は、「交通幇」とも呼ばれていました。

 日本が台湾に残した貴重な遺産の一つが鉄道や道路などの交通インフラです。また、医療衛生、教育、金融諸制度などもあります。ハードとソフトのインフラについては、いくら評価してもしきれません。

 その点を台湾人はよくわかっているからこそ、今年の八田与一の慰霊祭には、蔡英文総統も参列したのでしょう。

 戦後、この日本の遺産がなければ国民党軍政府は、台湾に渡って早々に体制崩壊していたはずです。戦後、日本やアジアなどのトライアングル貿易で、アジアNIESが生まれたのも日本あってのことです。かつての日本は決断力を持って積極的に動いていました。台湾を通してそのことを日本人は思い起こすべきです。

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