「台湾統一」計画の終焉  アンディ・チャン

「台湾統一」計画の終焉  アンディ・チャン
【Andyの国際ニュース解説(AC通信:No.562):2015年10月8日】

 前号で来年の総統選挙で国民党の洪秀柱公認候補に反対する委員が増えて党の混乱を招いたと書
いたが、昨日7日に国民党本部で行われた中央常務委員会(中常委)では洪秀柱を更迭する声が高
かった。しかし、党本部の前では洪秀柱の支持者が大規模なデモを行っていた。

 国民党は中央常務委員会で洪秀柱の更迭を票決する予定立ったが意見がまとまらず、17日の臨時
大会で決めることになった。

 洪秀柱を更迭する理由は彼女の「終極統一」が民意に反するからだ。つまり中国と国民党の統一
計画が頓挫したことである。中国と台湾の在台中国人が推進してきた「終極統一」が失敗したので
ある。

●中央常務委員会の混乱ぶり

 前号の「国民党の瓦解」に書いたように、来年の総統選挙に国民党の公認候補となった洪秀柱の
人気が低迷しているので、選挙に出る立法委員の候補者たちが洪秀柱と一緒に選挙運動をやらなく
なり、彼女を交代して国民党主席の朱立倫を立てると言い出したのだ。公認の候補者交代は党の規
則に反するだけでなく前代未聞である。

 それにも拘らず、国会議員の選挙で3分の1の議席を確保できないという危機感が強く、洪秀柱を
降して朱立倫を立てれば立法院(国会)で3分の1の議席を確保できると期待している。3分の1の議
席を確保できなければ憲法改正、国民投票法などの重要法案がすべて国民党の意志に反する結果と
なり、中華民国の台湾化が実現する。

 中常委では洪秀柱を降して朱立倫を立てる提案に21名の中常委が賛成したが、28名が賛成すれば
提案が通ると言われる。10月2日から7日の委員会の開催までの5日間に党首の朱立倫は洪秀柱と三
度会見したが、洪秀柱は交代を拒絶したため、7日の中常委で公認候補のすげ替えを提案して投票
に持ち込む予定となったのだ。

 7日朝、中常委の開会前に国民党本部は洪秀柱の選挙対策に任命していた4名の助理党員を更迭し
た上で、洪秀柱の支持者を内部に入れないため門前に鉄条網バリケードを張るといった破天荒な処
置を行った。

 中常委の開会では、馬英九総統が「党の決定に従う」と発表し、続いて4人の元老、連戦、呉伯
雄、呉敦義、王金平がそれぞれ「党が危機に陥っている時は非常処置が必要である」と講演した。
続いて党主席の朱立倫が「洪秀柱の努力には敬意を表する。しかし彼女の主張する『究極統一』は
台湾の民意に沿わない。台湾は現状維持を望んでいる」と講演した。

 これに対し洪秀柱は「終極統一は馬英九総統がこれまで主張してきた路線である。馬英九総統は
私を支持している」と述べて交代を拒否した。このため候補者交代の票決が取れなくなり、17日に
臨時党大会を開いて決定することになった。洪秀柱は臨時党大会でも最後まで戦うと言うが、馬英
九の支持を失えば敗北は明らかである。

 8日朝の報道によると、馬英九は洪秀柱に立候補辞退を要求したと言う。彼女にとっては馬の統
一路線を主張してきたのに、今では馬に見捨てられたら最後の防衛線を崩されたことになる。洪秀
柱の支持者は市内で抗議デモを行って交代に反対している。

 報道では、候補者すげ替えに賛成7・反対3という。結論として国民党は統一路線を捨てて党生
き残りの道を探っているのである。17日の臨時党大会までいろいろ違ったニュースが出てくるだろ
う。

●「終極統一」路線の終焉

 洪秀柱の「終極統一」は馬英九の統一主張と同じである。馬英九は「不統、不独、不武(中台の
統一をしない、台湾独立をしない、武力を行使しない)」と呼ぶ実質的な降参宣言をし、中国の台
湾併呑計画に合作してきた。最近になっても「九二共識」(92年に合意した中国と台湾は一つの国
と言う嘘)を繰り返し、今年の春に朱立倫が中国を訪問した際にも「同属一中」と述べた。馬も朱
も、洪秀柱の統一主張に一致している。

 馬英九は中国の統一主張を援助するためECFA(経済合作協定)に署名し、去年はサービス貿
易協定を国会で通そうとしたため、ヒマワリ学生運動で国会を占拠された。11月の市町村選挙で国
民党は大敗した。

 この一連の発展があったので、来年の総統選挙には朱立倫、呉敦義、王金平などが立候補を拒否
し、人気のない洪秀柱が公認候補となったのである。

 このような状況で朱立倫を担ぎ出しても当選することはない。但し、国民党はどうしても3分の1
の議席を確保したいため、洪秀柱を降して朱立倫が「現状維持」を主張すれば議員の選挙に効果が
あると期待している。

●中国の台湾統一は失敗した

 台湾統一は中国の夢であり、国民党の外省人も中国の統一計画に従っているに過ぎない。江沢民
の時代に始まった台湾併呑計画は着々と進んでいた。胡錦濤は2008年に令計画の立案した「戦わず
して勝つ」戦略を中共政治局大会議で通した。これによると2012年までに台湾統一を果たす計画を
進めていたのである。

 令計画の統一計画は三部分に分かれている、(1)国民党を籠絡し、(2)民進党を分裂させ、
(3)傀儡政党を作る、のである。この計画は順調に進んでいたが、ヒマワリ運動で挫折し、11月
の選挙で頓挫した。

 2012年までに統一を果たせなかった胡錦濤は政権を習近平に渡して沈黙し、習近平政権は令計
画、薄煕来、徐才厚、周永康などを粛清した。台湾は反中国となり国民党に援助すれば逆効果にな
るから中国は傍観している。

●中国の覇権拡張にストップ

 尖閣諸島、台湾統一、南シナ海の埋め立ては中国の覇権拡張の三部作だが、このうち台湾統一が
最重要だった。台湾統一に大切なのは中華民国を温存しておくことである。国民党が選挙に負けて
もつぶされてはならない。国民党が潰れたら中華民国は滅亡し、中国の台湾統一はもっと困難にな
る。

 逆に言えば、台湾が独立すれば国民党、中華民国をつぶすことになる。台湾人の独立派はこれま
で中国の統一路線に手も足も出なかった。次の選挙に勝っても、すぐに中国の路線を潰せるわけが
ない。たとえ政権をとっても台湾人民は独立に対し準備が足りない。しかも、人民は今の民進党を
信用していない。独立を達成するのは民進党ではなく、体制外派の団結が必要であると思われる。

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