共同通信がタス通信を引用する形で3月7日、「ロシア政府は7日、ロシアのウクライナ侵攻に関連して対ロ制裁に踏み切った国・地域を『非友好国』に指定し、リストを公表した。欧米などの制裁に同調した日本も含まれた。『非友好国』とされたのは米国、英国、欧州連合(EU)加盟国のほかカナダ、オーストラリア、シンガポール、台湾など」と報じた。
驚いたのは、ロシアが台湾を「非友好国」に指定したこともあるが、台湾を「非友好国」と、国として台湾を認めたようにも読めることだった。
続報を確認すると、中央通信社が、台湾には「中国の領土と見なされているが、1949年から独自の政府による統治が行われている」という注釈を付けていたことを報じたことに、さらに驚かされた。
ロシアは「チャイニーズ・タイペイ(中華台北)」ではなく「台湾」と表記し、それも「独自の政府による統治が行われている」とした。ロシアは、台湾と中国を区別し、台湾には独自の統治実態があると公表したことになる。それも「中国の領土と見なされているが」と、中国側の「一つの中国」原則を否定する形でだ。
当然ながら、中国はロシアに烈火のごとく怒りの反応を示して訂正を迫るだろうと思っていたら、豈はからんや中国外務省は「『台湾地域』がなぜこのリストに入れられたのかは地球上の皆さんが理解している」と述べるにとどまったという。ロシアに訂正を迫った形跡はない。
台湾はロシア制裁に踏み切り、ロシアから「非友好国」という逆制裁を受けたものの、中身はうれしいプレゼントをお返しされたようなものだ。ロシアが中国を黙らせた形ともなった。
ロシアのウクライナ侵略には大義も理由もない。ロシアの早期撤退を望むだけだが、唯一、中国の主張を退け、台湾を統治実態と公表したことだけはよしとしたい。
奇禍居くべし。日本と台湾が「非政府間の実務関係」に入って今年でちょうど50年を迎える。日本も「中国の領土と見なされているが、1949年から独自の政府による統治が行われている」ことを認め、台湾という独自の統治実態との新たな「実務関係」を進めるべき時期に来ている。
産経新聞の矢板明夫・台北支局長が、台湾の人々も「多くの台湾人にとってうれしいことのようだ」と「台湾有情」で伝えている。下記にご紹介したい。
—————————————————————————————–ついにロシアに認められた? 【産経新聞「台湾有情」:2022年3月16日】https://www.sankei.com/article/20220316-Y2VXYSQHKRK6DBSXGMJAVSCPPU/?896417
台湾の蔡英文政権はウクライナ侵攻を理由に、ロシアに経済制裁を科す方針を発表したが、ロシアの逆鱗(げきりん)に触れてしまった。プーチン露大統領が5日、自国通貨ルーブルでの対外債務返済を一時的に認める大統領令に署名し、ルーブル建て返済の対象となる「非友好国・地域」のリストに台湾が入ったのだ。
リストには、米国、英国、日本などに続いて台湾の名前があり「中国の領土と見なされているが、1949年から独自の政府による統治が行われている」との注釈が付けられていた。
リストを見た台湾紙の男性記者は「ロシアはついに台湾政府の存在を認めてくれたのか」と意外な反応を見せた。というのは中国当局はこれまで、台湾の在外公館の名前には「台北」という都市名を使うよう求め、五輪など国際スポーツ大会へ参加する際のチーム名も「中華台北」しか認めないなど、国際社会での台湾の存在を打ち消そうと外交攻勢を展開してきた経緯があるからだ。
今回、思わぬ形で中国の友好国のロシアから台湾の存在が認められ、しかも中国政府がロシアに抗議しなかったのは、多くの台湾人にとってうれしいことのようだ。蘇貞昌行政院長(首相に相当)は8日、記者団にこの件について「台湾が主権独立国家であることは周知の事実だ」と胸を張った。
(矢板明夫)
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