【黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」:2021年6月25日】*読みやすさを考慮し、小見出しは本誌編集部が付したことをお断りします。
◆蔡英文政権を「ワクチンこじき」とののしった国民党の台北市議
・国民党市議の「ワクチンこじき」発言 政府が反論「不適切」/台湾 https://japan.cna.com.tw/news/apol/202106220008.aspx
中国と野党・国民党が手を組んで、ワクチン入手に奔走している蔡英文政権のイメージダウンを狙っています。国民党は台湾内部から、中国が台湾外部から蔡政権を攻撃するという作戦なのでしょう。中国と国民党の連携プレーは、ワクチン問題でより鮮明に表面化しています。
その典型が、冒頭のニュースです。日本やアメリカからワクチンの提供を受けている蔡英文政権を、国民党の羅智強台北市議が「台湾はワクチンこじき」だと表現したのです。
もちろん、政権側はこれに対して反論しています。以下、報道を一部引用します。
<行政院(内閣)の羅秉成(らへいせい)報道官は22日、相手方の善意を「施し」と見なすことは「好ましくなく、不適切だ」と反論した。(中略)
羅報道官は、長期的に友好関係にある米国と日本が緊急用に恵みの雨のようなワクチンを台湾に届けたことは対等な友好的態度に基づくものであり、いずれも善意で、台湾は非常に感謝していると言及。このような助け合いは、台湾が昨年、マスクの供給に余裕がある際に友好国を支援したのと同じだと述べた。>
この報道が出た後のことですが、日本からのワクチン提供のお礼に台湾からマスク40万枚が日本に届きました。しかも、感謝の気持ちを込めてマスクを贈りたいと提案したのは、滋賀県大津市で産婦人科病院を営む医師の王輝生さんで、彼の提案に賛同した台湾の大手マスクメーカーが商品を提供したのでした。
医師の王さんは、「台日の友情は長年にわたる積み重ねによって作られたものであり、両国は恩を知ってお返しをすることや助け合いを理解していると指摘する。ワクチンを載せた飛行機が台湾に向けて成田空港を出発する際、謝長廷駐日代表(大使に相当)が雨の中で深々と頭を下げる姿に、多くの台湾人が感動を覚えた」とコメントしています。
台湾人の多くは王さんと同じ気持ちだと思います。逆に、ワクチン提供を政権批判の理由として悪用するのが国民党です。
国民党の羅智強市議は、ベトナムが1億2500万回分のワクチンを購入したというニュースを取り上げて、蔡英文政権に対して「恥ずかくないのか」との暴言まで浴びせました。
もちろん、これに対しても民進党側は反論していますが、とにかく国民党はこのように政権批判のネタさえあれば、何でも悪用して、どんな手も使って蔡政権を批判するわけです。
さらに、こういう時だけ出てくる馬英九前総統も、「台灣疫苗不足,政府應開放小三通打疫苗,贏得兩岸人民的尊敬」(台湾のワクチンが足りないなら、政府はワクチンを打つために「小三通」を解放して、中国と台湾の人々から尊敬されるべきだ)、などと言っています。
(注:「小三通」とは中国と台湾の間で「通航、通商、通信」の三つを解放して直接往来すること)
このように、国民党勢力が蔡政権のイメージダウンを狙って、あれこれと言っていますが、国民党勢力は完全に闘うべき相手を間違えています。今は、台湾が一丸となってコロナと闘わなければならない時にもかかわらず、蔡政権の足を引っ張るばかりです。本当に厄介な人たちです。
◆北欧の小国リトアニアが台湾にAZ製ワクチン2万回分の提供を表明
一方、世界では、日本とアメリカだけでなく、北欧のリトアニアも台湾にワクチン提供を申し出ました。以下、報道を引用します。
<バルト海東岸に位置するリトアニアは22日、新型コロナウイルスワクチンを台湾に提供する方針を発表した。英アストラゼネカ製2万回分を9月末までに送るという。
同国のランズベルギス外相は22日、自身のツイッターを更新。「小さな動きではあるが、コロナとの戦いにおいて台湾の人々への支持を示せることを誇りに思う」とつづり、「自由を愛する人々は互いに気を配るべき>との考えを示した。
台湾は昨年4月、リトアニアに医療用マスクを10万枚寄贈した。>
これこそが国交というものでしょう。台湾でコロナ感染が拡大し、ワクチン問題が生じたことで、国民党の卑しい政権批判の手口が、より鮮明にあぶり出されました。台湾の未来を託すべき政党は、すでに明白です。それがはっきりと分かっただけでも、台湾人にとってはよかったのかもしれません。
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