柚原事務局長の台湾セミナー講演を日本新唐人テレビがYouTubeにアップ

 バイデン政権がトランプ政権のこの政策をどこまで継承するのか注目される中、自民党・国防部会内に初めて台湾を冠した「台湾政策検討プロジェクトチーム」が発足しました。そこで、本会の柚原事務局長が2月20日開催の「台湾セミナー」において、日米の台湾をめぐる動きについて「バイデン政権の台湾政策と日本の対応」と題して講演しました。

 取材に来ていた日本新唐人テレビが講演の最初から最後までユーチューブ(YouTube)に映像をアップしましたのでご紹介します。

 映像には的確な説明文を付けていただいていますので、とても分かりやすい映像になっています。手間のかかる映像に仕上げていただき、日本新唐人テレビ様には深く御礼申し上げます。

 なお、台湾セミナーで配布したレジュメは、冒頭にキーワードとして「(1)自由で開かれたインド太平洋 (2)主要脅威 (3)台湾への武器供与」を記し、「1 トランプ政権の台湾政策と中国政策」「2 バイデン政権の台湾政策と中国政策」「3 日本の対応」の三方向から解説し、最後に「残された課題」としています。ここでは「バイデン政権の台湾政策と中国政策」を下記にご紹介します。

 ちなみに、バイデン大統領が呼びかけて昨夜(3月12日夜)開いた日本、米国、オーストラリア、インドの4カ国による初の首脳会合(オンライン形式)で、「『自由で開かれたインド太平洋』の実現がそれぞれの国の将来に不可欠だ」と述べたと報じられています。

 昨年11月の菅義偉総理との初の電話会談で、バイデン大統領は「安全で繁栄したインド太平洋」と表現し、今年1月下旬の菅総理との電話会談で「自由で開かれたインド太平洋」と修正し、2月の習近平主席との電話会談では「自由で開かれたインド太平洋を守る」と話したことを振り返ってみますと、バイデン大統領も「安全で繁栄した」という表現の中には中国も入ることに気づいて「自由で開かれた」という表現に修正したようです。

 それが今回のクアッド(Quad)では、さらに踏み込んで「自由で開かれたインド太平洋」を守ることの重要性を強調し、「実現がそれぞれの国の将来に不可欠だ」とまで述べるに至ったことに注目すべきではないかと思います。

 なぜなら、中国から不断に圧力をかけ続けられている台湾が「自由で開かれたインド太平洋」の要衝にありますので、バイデン大統領の発言の変化は、台湾にとっても日本にとっても歓迎すべき変化だからです。

 ただし、トランプ大統領のように「自由で開かれたインド太平洋戦略」とは表現していません。米国の基本戦略とするかどうかはまだ分かりませんが、米国が日米豪印のクアッドを重要視していることがよく分かり、4ヵ国に共通する「核心的利益」に「自由で開かれたインド太平洋」を位置づけたようですので、期待感がふくらむバイデン大統領のクアッド発言だったと受け止めていいのではないでしょうか。

 このクアッドを踏まえ、日本は茂木敏充・外務大臣と岸信夫・防衛大臣、米国はアントニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースティン国防長官が対面で臨む「安全保障協議委員会」(2プラス2)が3月16日に開かれます。この2+2会談において「自由で開かれたインド太平洋」がどのように位置づけられるのかに注目したいと思います。

—————————————————————————————–

◆バイデン政権の台湾政策と中国政策

アントニー・ブリンケン国務長官(オバマ政権の国家安全保障担当副大統領補佐官、国務副長官)

・1月19日、上院公聴会において「台湾関係法にのっとって台湾の自己防衛力強化を支援する」「台湾の国際参加 については、構成員が国家と定められていない国際機関には参加すべきで、 国家であることが条件となる機関 でも、参加を可能にするその他の方法がある」(1月26日に賛成78対22の賛成多数により承認)。

ロイド・オースティン国防長官(オバマ政権の陸軍副参謀総長、アメリカ中央軍司令官)

・1月19日、上院公聴会において「中国に台湾侵攻の決定を下させないために力を尽くす」「台湾の自己防衛力強 化が台湾海峡両岸と地域の安定に役立つ」(1月22日に93対2の賛成多数により承認)。

・1月24日、岸信夫防衛大臣との電話会談で「東シナ海・南シナ海問題に関し、力を背景とした一方的な現状変更の 試みに反対するとともに、航行及び上空飛行の自由を含め法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序の維持・強 化に向けた協力の重要性を確認」(防衛省HP)し、「自由で開かれたインド太平洋を維持するための取り組みに ついて話し合った」とツイート。

ネッド・プライス国務省報道官

・1月23日、13機の中国軍機が台湾の防空識別圏に侵入したことを受け「中国の台湾への軍事圧力は地域の平和と安 定を脅かす」(PRC Military Pressure Against Taiwan Threatens Regional Peace and Stability)声明を発表。 「われわれは北京に対し、台湾への軍事・外交・経済的圧力を停止し、台湾の民主的に選ばれた代表者と有意義な 対話を行うことを要請」し「三つの米中共同コミュニケ、台湾関係法、6つの保証で示された米国の長年の責任を 継続する」と述べ「台湾が十分な自衛能力を維持するのを引き続き支援してゆく」「米国の台湾への関与は盤石で あり、台湾海峡の両岸や地域の平和と安定の維持に貢献していく」と表明。

・2月3日、「一つの中国」政策を支持する米国の立場に変わりはないと表明。

ジェン・サキ大統領報道官

・1月25日、記者会見で対中国政策について「われわれの中国への対応は過去数カ月と同じだ」と述べるも「新たな 方針が必要になっている。戦略的忍耐を持ちながら臨みたい」とも。

・2月9日、産経新聞に「インド太平洋と中国に関する包括的戦略を構築する上で、戦略的忍耐という(政策の)枠 組みを採用する意図はない」と明言。

ジョン・カービー国防総省報道官

・1月28日、中国軍用機が台湾の防空識別圏への進入活発化を巡る1月28日の中国国防省報道官の「外部勢力の干渉と 台湾独立勢力の挑発に対する厳正な反応」「火遊びをする者は必ず自ら焼け死ぬ。台湾独立は戦争を意味する」と の記者会見での発言に、カービー報道官は即応「われわれには台湾の自衛を支援する義務がある」と反発。

ジェイク・サリバン国家安全保障担当大統領補佐官

・1月29日、1月28日の中国国防省報道官発言に対して「中国の攻撃的な姿勢に対し我々は信念を守るため、立ち向か う」「中国・新疆ウイグル自治区の人権問題や中国政府の香港、台湾政策について「『我々は代償を払わせる用意 もできている』」、日米豪印4か国による協力枠組み、クアッド(Quad)が「インド太平洋地域の政策を米国が策 定する基礎となる」と表明。

ジョセフ・バイデン大統領

・2021年1月20日、大統領就任式に断交以来初めて蕭美琴・駐米台北経済文化代表処代表を正式招待 →招待したのは大統領就任式を主催する連邦議会の大統領就任式両院合同委員会。

・2020年11月11日18時20分、菅義偉総理と電話会談。「日本の防衛へのコミットメントと日米安保条約5条の下での 米国のコミットメント」「新たな分野での日米同盟のさらなる強化に向けた自身の強い希望を示した」「繁栄し 安全なインド太平洋地域の礎として日米同盟を強化することへのコミットメントの共有についても話し合った」 (政権移行ウェブサイト)。

・2021年1月27日10時45分、菅義偉総理と初の電話会談。バイデン大統領から「日米安保条約第5条の尖閣諸島への適 用を含む日本の防衛に対する揺るぎないコミットメントが表明され、米国の日本に対する拡大抑止の提供に対する 決意も再確認されました」「日米豪印の日本の貢献に対する高い評価が示され、今後とも推進していくことで一致」 (外務省)

*日米安全保障条約第五条(共同防衛):各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対す る武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共 通の危険に対処するように行動することを宣言する。

・2月10日夜(中国時間の2月11日朝)、中国の習近平・国家主席と初の電話会談 バイデン大統領は「中国の高圧的で不公正な経済的慣行、香港での取り締まり、新疆ウイグル自治区での人権侵害 問題、台湾などへの圧力強化が根源的な懸念事項と強調」「新型コロナウイルスのパンデミック対策、世界的な衛 生問題、気候変動、兵器の拡散防止という共通の課題について意見を交換」「自由で開かれたインド太平洋を守る ことを希望する」

 電話会談に先立ち、オースティン国防長官と国防総省に立ち寄り「インド太平洋および世界における平和を維持し、 米国の国益を守るには、中国に突き付けられた諸課題に対処しなくてはならない」と演説。中国がもたらす課題に 対する米軍の戦略の即時見直しを命じ、特別タスクフォース(任務部隊)を設置すると表明、今後4カ月以内に対 中戦略や作戦概念、米軍の態勢、同盟諸国との連携策などに関し提言をまとめ、国防長官と副長官への提出を命ず。

・同じ2月10日、ソン・キム米国務次官補代行(東アジア・太平洋担当)は国務省内で台湾の蕭美琴・駐米台北経済 文化代表処代表と初の公式会談を行い、ブリンケン国務長官も、日本の茂木敏充・外務大臣と電話会談。

※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。