しかし、そのときの違和感はいまだに拭えない。そこで当時、「少なくとも日本の5県産品の輸入禁止問題は、民意を問う公聴会などは開かなくてもよかったのではないか。蔡英文総統が政治判断すべきだったのではないかという疑問が残る。公聴会は、国民党など反政府派に政治利用されただけに見える。政治家は民意にゆだねすぎる弊害も考慮すべきだろう」と述べた。
また、これは謝長廷・台北駐日経済文化代表処代表なども指摘していることだが、科学的根拠によらず、5県という地域を問題視していることにもやはり疑問が残る。
さらに言えば、日本人はもちろん5県を訪れている台湾の人々も5県産品を食べているのだ。いったいどこに輸入を禁止する合理的な理由があると言うのだろう。
国民党が統一地方選挙で勝った理由の一つは、公民投票案を説明するために開いた集会が選挙運動にもなったことを挙げる専門家もいる。
蔡英文政権内には、やはり5県産品の輸入禁止を継続することに、表明こそしないものの反対の立場をにおわせる閣僚もいる。デジタル政策担当の唐鳳・行政院政務委員もその一人のようだ。
3月8日から5日間の日程で来日し、10日、ツイッターに日本語で「#福島県産の干柿を食べることで、#台湾は復興支援の手伝いができます。とても美味しいんですが、残念ながら#台湾ではまだ購入できません」と投稿している。
英語でも「I accept @eballgogogo’s #推特吃 challenge.#TaiwanCanHelp its friends in #Japan by eating persimmons from #Fukushima.They taste superb ? (but sadly cannot be purchased in Taiwan.)と投稿、動画では英語で話しかけ「激ウマ」という日本語も飛び出す。
日本人には先の公民投票の結果を知り、台湾との距離を感じたという人々も少なくない。唐鳳・行政院政務委員のこの一石がどのような波紋を投げかけるか、その行方に注目したい。
◆唐鳳 @audreyt 3月10日 https://twitter.com/audreyt/status/1104556136148004864
—————————————————————————————–台湾の閣僚、福島産干し柿をツイッターで紹介 議論に 一方感謝も【中央通信社:2019年3月13日】http://japan.cna.com.tw/news/apol/201903130005.aspx
(東京 13日 中央社)唐鳳・行政院政務委員(無任所大臣に相当、デジタル政策担当)が10日、福島県産干し柿を自身が食べる動画をツイッターに投稿し、議論を巻き起こしている。台湾は2011年3月の東京電力福島第1原発事故以降、福島など5県で生産、製造された食品の輸入を禁止しており、昨年11月の国民投票では禁輸継続が賛成多数で可決となった。動画の投稿により、唐氏が5県産食品の輸入解禁を支持しているのではないかとの指摘が上がった。一方、福島県出身だという人から唐氏に感謝のコメントも寄せられている。
唐氏は非営利団体の招待を受け、8日から5日間の日程で訪日。10日、英語と日本語でツイッターに「福島県産の干し柿を食べることで、台湾は復興支援の手伝いができる」と投稿した一方、台湾ではまだ購入できないと残念がった。唐氏が食べたのは「あんぽ柿」と呼ばれる干し柿で、東日本大震災からの復興のシンボルとされているという。唐氏は同日、フェイスブックも更新し、福島と同様に輸入禁止となっている栃木県のイチゴ「とちおとめ」の写真も紹介した。
ツイッターでは、福島県出身だという人から唐氏が干し柿を食べたことに感謝するコメントが寄せられた。唐氏は台湾の新竹や嘉義でも干し柿が有名だと写真を添えてこれに返信。干し柿フェスティバルの際に台湾を訪れるよう薦めた。唐氏によれば11日、台湾に関わる日本人と面会。この日本人にも福島の食品をツイッターで称賛したことについて感謝されたという。
5県産食品の輸入解禁に賛成かどうかについて唐氏は、「食品の輸入問題は自身の管轄外」とコメント。国民投票で結果が示されたとし、解禁する簡単な方法は今のところないとの見方を示した。
11日、東日本大震災から8年を迎えた。唐氏はどこへ行っても日本人から「謝謝(ありがとう)台湾」と声を掛けられたと話し、台湾人がした良い行いが日本の人々の印象に深く残っていると語った。
(楊明珠/編集:楊千慧)