例えば、可決条件の「全有権者の過半数の賛成」の場合、900万人から950万人の賛成が得られなければ成立しなかった。
台湾の有権者は現在約1900万人。2016年の総統選挙では投票総数は約1250万票で、投票率は66%だった。蔡英文候補は投票者の56.12%の689万4,744票で総統選を制した。しかし、全有権者数からすれば36.7%で、とても過半数には達していない。
1996年の住民による直接総統選挙以降、当選した総統の得票数は馬英九氏による2008年の765万票が最高得票数だった。しかし、それでもこのときの全有権者数1732万1,622人の過半数866万人には及んでいない。いかに公民投票法が実現困難な規定をしていたかがわかるのではないだろうか。
台湾民主主義のターニングポイントとなった2014年3月の「太陽花学運(ひまわり学生運動)」も、学生たちが占拠していた立法院を立ち去った後は「公民投票法」の改正を強く求めていた。
12月12日、台湾の立法院は本会議において「公民投票法部分条文改正草案」を可決した。今後の台湾に明るい展望が開けたと言ってよい。下記にそれを伝える「台湾国際放送」の記事をご紹介したい。
—————————————————————————————–「公民投票法改正草案」が可決・成立【台湾国際放送:2017年12月12日】
立法院は12日、「公民投票法部分条文改正草案」を可決した。現在、公民投票に関する法律では「投票率は50%以上に達すること」及び「過半数の賛成」という2つの高いハードルがあるが、この改正草案の可決により、公民投票の発案、必要な署名数、通過に必要な人数の3つのハードルがこれまでに比べ大きく緩和される。
まず、発案については、現行では直近の正副総統選挙の有権者数の0.5%となっているものを、0.01%まで引き下げた。また、必要な署名数も、現行の5%から1.5%に引き下げた。さらに、通過のためのハードルは多数決に変更され、かつ賛成投票の有効数が投票権をもつ人の4分の1をクリアすればいいこととなった。
与党・民進党団の劉櫂豪・幹事長は、ハードルを下げることは、国民が憲法が保証する国民の権利行使を促すものだとして、「民進党の主張は、総統選挙の罷免法を参考にしている。政党に所属していない人が総統選挙に立候補したい場合、1.5%の署名により、立候補の資格を得られる。その為、我々は公民投票の実施に必要な署名の必要数についても、1.5%をハードルとするよう主張した。国民が権利を行使しやすくする目的のほか、一定の基準を定めており、およそ28万人の人数が必要だ。これは一定の代表性をもっているものと信じている」と説明した。
なお、公民投票法の改正後、投票年齢を現行の20歳から18歳に引き下げるほか、「公民投票審議委員会」は廃止されるという。
また、法改正の過程においては「不在者投票」を含めるか、また、公民投票の適用項目に「憲法改正と台湾海峡両岸関係のテーマ」を含めるかが、与野党の議論の焦点となった。
最終的に「不在者投票」については条文に加えることが決定したが、施行の方法については他の法律による制定が必要という。
また、「憲法改正と両岸関係のテーマ」については、公民投票の対象とならなかった。このほか、行政院に、公民投票の発案権を与えることも決まった。
蔡英文・総統は12日午後、自身のフェイスブックに「18歳で公民投票権を得られるようになった。今後、公民投票の発案、実質に必要な署名数、通過については、多くの民主国家と並ぶ然るべきハードルとなった」と記し、国民が主人公となる歴史的な時だと喜んだ。