【AC論説】民主主義と利己主義

【AC論説】民主主義と利己主義

    アンディ チャン

御民われ生けるしるしあり
天地の栄ゆるときにあへらく思へば

小学校の時によく歌っていた万葉集の歌は、いまでも何かの拍子に
思い出したら一日中頭の中で繰り返してやまない。戦争が終わって
台湾人は日本人でなくなった。日本人も皇御国(すめらみくに)の
臣民でなく民主国家の国民となった。私も日本人から台湾人となり
アメリカ人になった。21世紀となって諸国は繁栄しているが、一般
に民主国家の国民は「天地の栄えを生ける徴」と感受せず、国家の
安全に無関心になった。

民主主義を標榜する国々は民主主義を謳歌しながら政党闘争に明け
暮れ、国の安全より自己やグループの利益を優先するようになった。
二大政党は民主主義の理想的制度であるというが現実には二大政党
が政権奪取で敵対し国家分裂の原因を作っている。21世紀は闘争の
世紀である。政党、人種、宗教、性別など、いろいろな方面で自由
を謳歌し、人民の権利をふりかざし、私利主張を乱発している。

言論の自由があるから身近な思いつきを主張することが多くなるの
は理解できる。しかし身辺事情は大切だが国家の安全や国民社会の
融和、例えばマリファナ合法化や同性愛結婚などよりテロ防止や戦
争廃止のほうが大切ではないだろうか。

●アメリカの分裂

アメリカの分裂はオバマが大統領になってから急激に進んだ。オバ
マは恣意的に民主党と共和党の分裂を促進させ、人種問題を加熱さ
せた。ヒラリーが当選する思っていたが、ヒラリーが落選したら政
権をバトンタッチしたはずのオバマは公然と「影の政府」を作って
トランプのロシアゲートの調査や罷免運動を推進し、民主と共和両
党はアメリカの国情を無視して闘争に明け暮れている。毎日のよう
にトランプのニュース、殆どがネガティブなものが紙面を賑わして
いる。

私はトランプの支持者ではないが、オバマ・民主党は正直言って嫌
いだ。アメリカの国益を考えるなら現職の大統領が提出した政策に
悉く反対する民主党議員、そして反トランプの公務員がメディアに
機密を漏洩する行動は卑怯未練だ。ロシアゲートだのFBI長官罷免
にまつわるトランプ批判は罷免に値するものは発見されていない。
トランプを批判するより今回のトランプの外訪はテロ対策や中東問
題、サウジアラビアで行った講演やバチカン訪問などでかなり成果
をあげたと思う。トランプの外交成果はアメリカの国益であり評価
すべきである。

国際問題でトランプが受け継いだのはオバマ政策の失敗である。も
ともとISISの蜂起はオバマ執政8年の無作為が原因である。オバマ
は大統領になると直ちに先任のブッシュ政権の中東政策を徹底批判
し、イラクとアフガニスタンからの撤退を主張した。

オバマはアメリカの軍隊を撤退する代わりに中東諸国に民主主義を
推進し、チュニジア、エジプトとリビアの独裁者を倒した。しかし
オバマとヒラリーが革命軍側に秘密裏に提供した武器をシリアに移
そうとして失敗し、ベンガジ事件が起きてオバマ政権は大打撃を蒙
った。ヒラリーが失った武器がアルカイーダとISISの蜂起、シリア
の動乱に続いているのだ。トランプはオバマ8年の中東失策を受継
いだのである。もしもヒラリーが当選してオバマの後を継いでいた
ら中東の現状はもっとひどいことになっただろう。

もっと卑劣なのはオバマが引退しても「影の政府」を作ってトラン
プ政権の妨害を行っていることだ。選挙で負けた民主党は事ごとに
トランプに反対し、陰に陽に妨害を繰り返している。民主党議員が
連日テレビでトランプ批判をしているさまはまさに、「些細な議論で
は人後に落ちず、国家社会には無為無策」である。民主主義の基本
である二大政党制度がアメリカの分裂と衰弱を招いているのである。
民主主義が利己主義に陥ったら国が亡ぶ。

●台湾と日本

台湾と日本の民主主義も似たようなものだ。台湾人民は70年以上も
国民党の独裁で苦しんだが、去年の選挙で民進党が国民党に勝って
台湾人が政権を取った。しかし蔡英文・民進黨は政権をとったけれ
ど外省人・國民黨と中国の制圧を受け、現状維持で平和を保とうと
しているが、現状維持とは中国と國民黨の制圧を受けて政策が進展
しない、つまり「降参しないが叩頭する」である。蔡英文政権が発
足して一年たつが、台湾のメディアは半分以上が國民黨のニュース
である。蔡英文の政策は国民党の反対でなかなか進展しない。台湾
が二大政党制度を維持すれば台湾独立は達成できない。

日本でも二大政党制度が国家政策の邪魔をしている。日本民進党の
自民党・安倍首相に対する反対は、オバマ・民主党が行うトランプ
反対とソックリである。森友学園、加計学園などで安倍首相夫人の
関与や国会喚問を主張するさまはトランプのロシアゲートの追及と
ソックリだ。北朝鮮のミサイル発射や核実験、中国の漁船の尖閣諸
島の近海侵入や憲法改正は空転するばかりで進展がない。

●民主的利己主義は国を亡ぼす

民主主義が利己主義に陥れば国家の衰退は避けられない。ところが
自由民主と人権平等を主張すれば大衆は個人的な主義主張を簡単に
受け入れ、国家の安全や将来は一部有識者の議論に限られてしまう。

国民は常に受動的である。国民が支持するリーダーが必要である。
政治が国益よりも政党を優先すれば私利私欲に駆られた議論が国家
社会をダメにする。政党闘争は国を分裂させ弱体化させる。

民主国家に必要なのは国益を優先する指導者だけではなく、国民の
愛国心と繁栄に貢献する団結心である。国が繁栄し平和であってこ
そ国民は「生けるしるし」を感受し感謝するのである。

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