【香港VS中国】反中機運、北京と広がる溝

【香港VS中国】反中機運、北京と広がる溝 習政権「外国の干渉許さぬ」

2014.7.3 産経新聞

 英中合意に基づいて1997年に返還された香港では当初、経済混乱を懸念する声はあったものの、祖国復帰によって「真の中国人」になったという自信や希望があふれていた。しかし、返還後50年間は「不変」とされた民主的な法治社会や言論の自由の保障が、わずか17年で崩壊し始めたことに香港市民は失望している。政治的にも経済的にも北京の支配下となることへの強い危機感が、今回の行動に結びついた格好だ。

 ◆台湾の二の舞い

 香港の返還記念日のデモは、民主派団体などの主催でこれまでも毎年行われてきたが、今年のような大量拘束は異例だ。

 今年3月に台湾の学生らが立法院の議場を占拠し、反中姿勢で一定の成果を挙げたことに触発された民主派の抗議と、政治混乱を招いた台湾の二の舞いを恐れた香港当局の過剰反応がその背景にある。

 昨年1年間だけで延べ4千万人が中国本土から香港を訪れた。

 経済力を背景とした大量の観光客がもたらす圧迫感も手伝い、香港の市民の間には嫌中感情も鬱積しつつあった。選挙制度への介入に対する不満は「嫌中」の一つにすぎないのが実情だ。

 中国外務省の洪磊報道官は2日の定例会見で、「香港の政治発展は香港の内部事務であって、中国の内政だ。中国政府は外国がいかなる形式でも干渉することを許さない」と述べた。

 この発言からは、香港市民や国際社会が期待する形での「真の普通選挙」を導入する意思は伝わってこない。

 中国政府が最も恐れているのは、香港の民主派が目指す「反共の砦(とりで)」としての存在に欧米など海外勢が結びつき、民主化の波が中国本土にまで押し寄せることだ。

 ◆親中派には支援

 現職の行政長官である梁振英氏をはじめとする香港の親中派に、習近平指導部は政治的、経済的な支援を行ってきた。

 一方、民主派に近い香港紙、明報の編集幹部が今年に入り、編集長の職を追われた上、2人組に刺されて重傷を負うといった事件も起きた。

 真相は不明だが、習指導部が香港社会の「反中機運」に神経をとがらせていることは間違いなく、今後の動向にも注意が必要だ。(上海 河崎真澄、北京 川越一)


投稿日

カテゴリー:

投稿者: