台湾で学ぶ「日本精神」

台湾で学ぶ「日本精神」 

           森 靖喜(岡山学芸館高・清秀中学園長)
【産経新聞:平成26(2014)年4月19日「現代を問う33」】

 3月16日から4泊5日で生徒や保護者、学外の方ら47入で台湾を訪問した。単なる観光ではない。
高雄の南隣、屏東(ピントン)市にある姉妹校・屏栄高級中学との心温まる交流で、大正9年から
10年の歳月をかけて台南で烏山頭(うさんとう)ダムを作り、台湾人から「神様」と崇められる日
本の水利技術者・八田與一の記念館見学と墓参、日本をこよなく愛する台湾元総統「李登輝」学校
での蔡焜燦(さい・こんさん)氏の講演がメーン行事である。台北名物「士林の夜市」を楽しみ、
龍山寺や日本が造ったレンガ造りの台湾総督府、台湾大学を訪問。異国情緒豊かな観光地「九分」
も訪れる充実した旅であった。

 日清戦争(明治27〜28年)の日本の勝利で台湾は日本領となった。戦後、日本人は「米国が強要
した歴史教育」によって、日清や日露、大東亜戦争は侵略戦争、日本は過酷な植民地政策で台湾や
朝鮮に迷惑をかけたと教えられた。

 しかし、日本は白人世界のアジア侵略に抵抗し、日本の防衛とアジアの独立のために戦った。こ
れがこれらの戦争の真実の姿であった。それを証明してくれるのが台湾人であり、「台湾にある戦
前の日本人の立派な業績」である。自分たちが教えられた「日本悪者・侵略国家」という自虐的歴
史観の誤りに気付いてもらうのが、この研修の最大の目的である。

 『台湾人と日本精神』(小学館文庫)の著者、蔡焜燦氏は「台湾は日本の植民地に一度もなった
ことはない。日本人は台湾を日本の内地と平等に扱おうとした。日本人の物づくりの精神、正直・
誠実な国民性を台湾人は宝としている」「日本本土にもない上下水道やダム、鉄道、小中学や高
校、大学、病院、公衆衛生などを整備、製糖業の近代化を図った」「日本人はもっと胸を張りなさ
い。自信を持ちなさい。特に若者よ!自分の国と祖先に誇りを持って生きなさい」と講演された。

 2年生の桐山君の感想文には「台湾は日本に統治されていたので、台湾人は曰本を嫌っていると
思っていたが、実際は真逆で植民地時代、八田與一が烏山頭ダムを建設するなど日本は台湾を発展
させようと努力した。大きく勘違いしていたことに気付いた」とある。3年生の海野君は「失われ
つつある日本人精神という誇るべき美徳に基づいて行動したい」と…。同行した保護者も含め全員
が「台湾の人が、日本をこんなに良い国といってくれるのが驚きでもあり、本当にうれしい」。

 台湾人は東日本大震災で250億円という巨額の見舞金を下さった。日本人はそのことを忘れては
ならない。

 元総統の李登輝閣下、蔡焜燦氏は、「日経アジア賞」を受賞した奇美(チーメイ)実業創業者・
許文龍氏とともに、司馬遼太郎が『台湾紀行』で「老台北(らおたいぺい)」(偉人)と称賛した
方である。

 本学園の台湾研修は「日本李登輝友の会」(電話TEL:03-3868-2111、E-mail:info@ritouki.jp)
のお世話になっている。「友の会」は年間数回の台湾研修を実施しており、どなたでも参加でき
る。普通の観光ではない旅に満足されること請け合いである。

                  ◇  ◇  ◇

森靖喜(もり・やすき) 昭和16年、岡山市生まれ。明治大学大学院卒業後、43年から金山学園
(現・岡山学芸館高校)の教諭、岡山市教育委員長などを歴任。現在は岡山県私学協会長、学校法
人・森教育学園理事長、岡山学芸館高校・清秀中学校学園長、専門は政治学。趣味はガーデニン
グ、ゴルフ、読書。