台湾の陳唐山外交部長がシンガポールを「鼻くそ」と批判

中国に「おべっかを使っている」からだと発言を取り消さず

 産経新聞[9月30日]

台湾外交部長がシンガポールに「暴言」 蜜月にすきま風
批判合戦、早急な修復困難

 【台北=河崎真澄】かつては「反共」の立場から蜜月(みつげつ)関係にあっ
た台湾とシンガポールの間で“すきま風”が強まってきた。「台湾独立の動きは
中台戦争を招く」とのシンガポール高官の発言に、台湾の陳唐山外交部長(外相
に相当)が「シンガポールは中国におべっかを使っている」とかみつき、同国を
「鼻くそ」とまでこきおろす騒ぎとなった。
 陳部長は二十九日、事態に関して記者会見したが、「非公開の場で郷土の言葉
で分かりやすく話した内容が曲解された」と述べるにとどまり、発言内容は取り
消さなかった。背景には“独自色”を強める台湾の政治的な変容と、微妙な地域
バランスを重視するシンガポールの基本政策が絡むだけに、早急な関係修復は難
しいようだ。
 この問題は、シンガポールのジョージ・ヨー外相が二十四日、国連総会での演
説で地域安保の角度から「台湾独立」に懸念を表明したことがきっかけだ。「台
湾独立運動」に長年関与した陳部長は二十七日、台湾南部の支持者と懇談した中
で発言を取り上げ「鼻くそほどの大きさの国家が、中国におべっかを使っている」
と批判。これにシンガポール政府が反論するなど、双方で批判合戦となっていた。
 陳部長は会見で、「シンガポール政府を批判したわけではなくシンガポールと
は友好関係にある」などと釈明したが、同国を「鼻くそ」などと形容した事実は
否定しなかった。
 一方、台湾行政院(内閣に相当)スポークスマンは、陳外相の発言は「たとえ
が不適切だった」とコメントし“困惑”を隠していない。
 シンガポールが一九九〇年に中国と国交を樹立した後も、リー・クアンユー上
級相(元首相)の訪台や、シンガポール軍の訓練に台湾が基地を提供してきたほ
か、九三年には中台「民間」トップ会談がシンガポールで行われるなど、中台関
係でシンガポールは特別な役割を果たしてきた。
 しかし、リー・クアンユー氏の長男、リー・シェンロン・シンガポール首相が、
副首相からの昇格を控えた今年七月に台湾を訪問し、陳水扁総統などと非公式会
談したことに中国が猛反発。シンガポール大使召還を示唆するなど、リー・クア
ンユー時代にはみせなかった揺さ振りをかけ始めていた。台湾ではシンガポール
がそうした「圧力」に耐えかね、外相の国連発言などが飛び出したとして、「中
国に媚(こ)びて台湾を罵(ののし)るシンガポール」(自由時報)など厳しい
論調が広がった。
 二期目に入った陳政権に中国側の圧力が強まる中だけに、台湾側では東南アジ
アの拠点だったシンガポールへの対応を見直す動きもあり得る。



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