り今年の「台湾2・28時局講演会」が「馬英九が目論む2・28事件の風化!」をテーマに開
かれた。
会場となった東京・千代田区内のホテルには約200人が参加し、台湾から来日した蕭錦文
氏などの話に真剣に聞き入った。
当日の進行役は柚原正敬・日本李登輝友の会事務局長がつとめ、228事件の犠牲者や台湾
独立建国運動の最大の指導者だった黄昭堂・前台湾独立建国聯盟主席、台湾独立建国聯盟
の前身である台湾青年社時代からのメンバーで政治大学への留学経験もある近現代史研究
家の鳥居民氏・そして台湾・中国関係では指折りの研究者だった中嶋嶺雄・国際教養大学
学長の3氏に対して黙祷を捧げてから開会となった。
開会挨拶に立った王明理・台湾独立建国聯盟日本本部委員長は、台湾青年社の創立者で
台湾語研究者だった王育徳氏の令嬢で、伯父で、台湾人初の検事となった王育霖氏を228事
件で失っている遺族の一人でもあり、この事件への関心は人一倍強い。
詳しくは、王明理氏が編集協力した王育徳氏の回想録『「昭和」を生きた台湾青年』
(草思社)をご覧いただきたいが、王委員長は開会挨拶で、中国の侵略主義が進行してい
る今だから、台湾、チベット、東トルキスタン(ウイグル)、南モンゴル(内モンゴル)
の悲痛な叫びに耳を傾けていただき、ともに学びたいと述べた。
この台湾2・28時局講演会の後、王明理氏はメルマガ「台湾の声」に「228事件や白色テ
ロの記憶が風化しつつある」と題して寄稿している。馬英九政権下で228事件の記憶が風化
しつつある現状とともに、「中共に台湾をのっとられる危険性がすぐそこに迫っている」
と指摘する。短文だが、胸に迫るものがある。下記にご紹介したい。
昨日の本誌で紹介したが、チャンネル桜が「台湾2・28時局講演会」の模様を20分にわた
って放送し、その中に王明理委員長の挨拶も映っている。こちらも併せてご覧いただきたい。
◆【動画】 2.28時局講演会 馬英九が目論む事件の風化 [桜H25/3/4] http://youtu.be/IrirB8oNEiY
228事件や白色テロの記憶が風化しつつある 王 明理(台湾独立建国聯盟日本本部委員長)
【メルマガ「台湾の声」:2013年3月4日】
「台湾の声」編集部による【台湾見聞記】から、台湾では近年、228事件や白色テロの記
憶が風化しつつあることが見て取れる。
人はつらい記憶を忘れたいという傾向があるが、原因は、国民党政府による意図的な風
化政策にあると思われる。台湾は未だに228事件当時と同じ中華民国という呪縛の中にあ
る。台湾人は迂闊にも中国人の甘い言葉に騙された過去の教訓を忘れてはならない。
というのも、今また、中共に台湾をのっとられる危険性がすぐそこに迫っているからだ。
2月24日に台湾独立建国聯盟日本本部が開いた228時局講演会において、チベット、東ト
ルキスタン(ウイグル)、南モンゴル(内モンゴル)の方々から、貴重なご意見を伺った。
「台湾は中国の一部であると中国人は(共産党も国民党も)60数年間宣伝し続けてきた
から、国際的にはそう思われている」
「中国人は侵略する前に、まずメディアを押さえ、情報発信ができないようにする。台
湾人は、世界に自分たちの独立性をアピールするなら、侵略されていない今しかない」
チベット人、ウイグル人、モンゴル人は中国人とは全く別の歴史を持つ民族であったに
もかかわらず、中共に侵略されたあと、国民を虐殺され、国土を破壊され、言語や伝統文
化を奪われたまま、誰からも救いの手を差し伸べられずに苦しんできた。彼らの苦悩は、
かつて国民党政権の下で苦しんだ台湾人なら、一番理解できるはずだ。
台湾は多大な犠牲を払ったあと、やっと20数年前に民主的体制を手に入れた。台湾人は
なんとしてもこの自由な民主的社会を守り抜かなければならない。
皮肉なことに、昔は蒋介石が「大陸反攻」を唱えて中共から台湾島を守ったが、今の馬
英九は、両手を差し伸べて中共とハグしようとしている。
それが、台湾人の望む「平和」であり「現状維持」なのか? 台湾人や日本人は平和や
友好を好む国民性があるが、中国人が「平和友好」と唱える時は、「侵略する準備」か、
「援助を引き出す場合」か、「資源を手に入れる場合」と考えたほうがいい。(だから、
尖閣に対して今後中国が「平和的解決」を申し入れてきた場合は要注意である)
残念なことに、すでに台湾のマスメディアには中国資本が入り込み、国民党、中共に都
合の悪い報道は操作されている。
アメリカは「台湾関係法」により、中共の武力行使に対し、武力で台湾を守ることがで
きる。だが、もし、武力でなく、平和的な話し合いで統一(という名の侵略)が行われる
場合はどうだろう? 民主的選挙で選ばれた馬英九総統が「平和的友好関係」を結ぶの
を、アメリカは阻止できるだろうか? アメリカ政府、日本政府にもそこのところを理解
していただき、早目に台湾当局に働きかけてほしい。
しかし、台湾の主人公は台湾人である。他力本願でなく、自分の国を自分で守り育てる
気概を持ってほしいと切に願う。