る。版元は月刊「WEDGH」を発行するウェッジ。A5判という通常より大きいサイズ(月刊
「文藝春秋」などと同じ大きさ)で、ハードカバー。本文272ページ。
まずカバー表紙に目を魅かれる。表紙のタイトル文字はいまどき珍しい金箔押し。この金箔押し
の文字と帯の色、表紙の色がマッチして深みを出し、品格を感じさせる。本文の組み方も、通常よ
りゆったり組んでいるので読みやすい。本文紙の手触りもふんわりとして上品だ。
ほぼこれだけで、本のクオリティが分かる。ウェッジ編集部の意気込みと気配りが隅々まで届い
ていることが一目瞭然で、心地よい緊張感がみなぎっている。
本書の内容は、これまでのいわゆる李登輝本の集大成と言ってよい。15年前の6月に出版された
『台湾の主張』(PHP研究所、1999年)に匹敵するインパクトがある。『台湾の主張』を出発点
とするなら、本書は帰結点を為すのではないだろうか。
ただし、李登輝元総統は昨年から、台湾の民主主義をさらに深化させるため、地方自治の健全化
を実現しようと「台湾第二の民主化」を全身全霊で進められている。現在はその途次にある。
その点で、残りの人生を捧げると宣言されたこの「第二の民主化」が達成されたときが終結点と
も言え、本書はこれまでの総括という意義を有している。
下記に、本書の目次とともに、いささか長い「はじめに」の全文をご紹介するが、本書の内容が
この一文に凝縮されている感がある。まさに字義どおり「日本人必見」の本だ。
*本書は本会でも取扱う予定で、近々ご案内します。
・著 者 李登輝
・書 名 『李登輝より日本へ 贈る言葉』
・体 裁 A5判、上製、272ページ
・定 価 本体2,400円+税
・版 元 (株)ウェッジ
・発 売 平成26(2014)年6月11日
◆『李登輝より日本へ 贈る言葉』
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3591
はじめに
第1章 再生する日本
日本が明るくなった
安倍総理によって攻勢に転じた日本外交
アベノミクスと「失われた二十年」
日銀改革に期待
「原発ゼロ」の非現実性
夢の「核融合」発電
トリウム小型原発の可能性
安倍新政権の使命の重大さ
安倍総理へのエール
第2章 李登輝の台湾革命
自我に苦しんだ少年時代
小我をなくして大我につく
マルクス主義への傾倒
二・二八事件「犬が去って、豚が来た」
台湾の歴史の暗黒時代
蒋介石による排日教育世代
国民党に入党
蒋経国学校
台北市長・台湾省主席をへて副総統に
「私ではない私」
軍を掌握する
国民党との闘い
司馬遼太郎と私
台湾人のアイデンティティ
「歓喜の合唱」
台湾の改革、いまだ終わらず
台湾における「中華思想」の復活
第3章 中国の歴史と「二つの中国」
「中国五千年」
新儒教主義
なぜ「支那」がいけないのか
中国人には「現世」と「私」しかない
「天下は公のために」
台湾モデル
「一国二制度」はあり得ない
台湾は「生まれ変わった」
特殊な国と国との関係
「台湾中華民国」
第4章 尖閣と日台中
台湾にとっての「尖閣」
中国が狙う両岸の「共同反日」
「千島湖事件」と「台湾海峡ミサイル危機」
安倍総理の断固とした態度
中国の独善的な論法
韓国人と台湾人
「日本精神(リップンチェンシン)」と「謝謝台湾」
第5章 指導者の条件
人命より体裁を優先した民主党政府
緊急時の軍隊の役割
リーダーは現場を見よ
指導者は「知らない」と言ってはならない
「生きるために」――日本の大学生からの手紙
孤独を支える信仰
「公義」に殉ずる
「公」と「私」を明確に区別する
カリスマの危うさ
劉銘伝と後藤新平
台湾で最も愛された日本人
権力にとらわれないリーダーシップ
福澤諭吉の問題提起
「伝統」と「文化」の重み
エリート教育の必要性
「知識」と「能力」を超えるもの
第6章 「武士道」と「奥の細道」
オバマ大統領の最敬礼
『学問のすゝめ』
儒学の思弁より実証的学問
東西文明の融合
「武士道」の高い精神性
日本文化の情緒と形
「奥の細道」をたどる
靖國神社参拝批判は筋違い
変わらぬ日本人の美学
一青年からの手紙にみた日本人の精神文化
第7章 これからの世界と日本
「Gゼロの世界」
平成維新のための「船中八策」
若者に自信と誇りを
おわりに