恵・主席代理らを破って当選した。
台湾紙「台湾国際放送」の記事を下記に紹介するが、この台湾国際放送も中央通信社も、洪秀柱
氏が当選した背景や国民党の今後の展開について触れていない。むしろ、日本メディアの方が選挙
をきちんと分析し、今後の国民党の行末について触れている。
中でも、西日本新聞の横尾誠・台北支局長は、洪秀柱氏当選の最大のバックボーンとなった急進
統一派の「黄復興党部」の名称を挙げ、「『中国人意識』の強い退役軍人らで作る党内組織『黄復
興党部』(公称約19万人)は党活動に熱心で『党内選の勝敗を左右する』とされる。外省人の両親
を持つ洪氏はこうした党員の支持を集めた」と指摘するとともに、「『台湾人意識』を高める民意
に逆行する人選ともいえ、党再生の道は一段と不透明さを増した」と解説している。
毎日新聞の鈴木玲子・台北支局長もまた「洪氏が世論の支持を獲得できるかは未知数だ。国民党
内の路線対立は、さらに激しさを増す可能性がある」と指摘している。
朝日新聞の鵜飼啓・台北支局長も迂遠な表現ながら「洪氏の統一志向の強さには党内でも警戒が
残る。洪氏が今後、こうした主張を強めれば、中国との統一を主張する小党・新党のようになりか
ねない、との指摘もある」と書いている。
日経新聞の山下和成・台北支局長もやはり「『親中路線では民意の支持を得られない』(党中堅
幹部)との指摘も多い。今後は黄氏など台湾の独自性を重視する『本土派』が反発し、分裂騒ぎに
発展する可能性もある」と懸念を隠さない。
大きな組織が小さくなったとき、往々にして急進的見解を述べる人物が組織を牽引してゆくケー
スが少なくない。洪秀柱氏は「三民主義で中国を統一する」という選挙公約を掲げて当選した。こ
の急進的見解を国民党員は支持した。
しかし、台湾の民意は現状維持を経た台湾の自主独立にある。国民党寄りといわれる大手紙「聯
合報」による3月14日発表の世論調査でも、「現状維持」や「独立」という、中国とは別個の存在
を望む割合は80%を超えているのが台湾の現状だ。さらに、今後の台湾をになう20代の85%が「自
分は台湾人」だと考えている。
ヴァンダービルト大学名誉教授のジェームス・E・アワー氏も「正論大賞」受賞直後の「正論」
では台湾の選挙をテーマに「2016年の選挙は、自決権を行使したいとする彼らの熱望を最も印象的
に明示した」と指摘している。台湾人の現状からすれば、正鵠を射た指摘だ。
したがって、国民党が選挙公約に「三民主義で中国を統一する」を掲げた洪秀柱氏を主席に選ん
だことは、台湾の民意から完全にかけ離れていて、その末路を予想できる選択を示したと言える。
国民党が政権与党に返り咲くことは、余程のことがない限りあり得ないとも言えよう。
報道によれば、洪秀柱氏には習近平・中国共産党総書記から祝電が届いたという。洪氏も感謝を
示す電文を習氏に送ったという。国民党は中国の傀儡あるいは代弁政党となる可能性がすこぶる高
くなった。
国民党主席補欠選、洪秀柱氏が当選
【台湾国際放送:2016年3月26日】
洪秀柱・前立法院副院長は26日、国民党の党主席補欠選挙で当選、新たな党主席になることが決
まった。洪・前立法院副院長は午後7時、国民党中央党部で記者会見を行い、「党の再建の為に全
力を尽くす」と述べた。
総統選挙で敗北した朱立倫氏が党主席を引責辞任したことにともなう与党・国民党の党主席補欠
選挙が26日に行われ、即日開票の結果、洪秀柱・前立法院副院長が当選、新たな党主席になること
が決まった。
洪・前立法院副院長は、当選の条件である党員投票の過半数を越える7万8829票(得票率
56.16%)を獲得し当選、党主席になることが決定した。国民党史上、女性の党主席は初となる。
洪・前立法院副院長は、28日に正式に党主席に就任する。任期は2017年7月末まで。
今回の党主席補欠選挙には、洪・前立法院副院長、黄敏恵・主席代理、陳学聖・立法委員、李
新・台北市議会議員と、過去最高の4人の候補者が出馬した。洪・前立法院副院長に次ぐ得票数を
獲得したのは黄・主席代理で4万6341票(得票率33.02%)。続いて李・台北市議会議員が7604票
(同5.42%)、陳・立法委員が6784票(同4.83%)を獲得した。
投票は午前8時から午後4時まで行われた。国民党の開票センターの統計によると、投票資格をも
つ党員33万7351人のうち、14万358人が投票、投票率は過去最低となる41.61%だった。
洪・前立法院副院長は北部の台北市、新北市、桃園市、基隆市、新竹市、東部の花蓮県で約6割
の得票、離島の金門に至っては8割を獲得するなど全22の自治体のうち16県市で得票率1位となり、
対抗馬と目された黄・主席代理を圧倒した。