小川清史・元陸将が中央通信社の取材に台湾の防衛特別予算案成立を期待と回答

陸上自衛隊元西部方面総監で陸将だった小川清史(おがわ・きよし)氏は、台湾の中央通信社の取材に「行政院院会(閣議)が昨年決定した防衛特別予算案が立法院(国会)で成立した場合、台湾の防衛力は強まる」と回答し、また、日本の防衛力や米軍の支援能力の増強との相乗効果で「中国に対する抑止力が大いに強化される」との認識を示したと中央通信社が報じた。

小川氏は「米国と日本、台湾の防衛力を合計した戦力によって台湾防衛は行われる」とし、「日本の防衛力強化は台湾の防衛力を強化することになる」とも答えたという。

日米安全保障条約の第6条には「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される」とあり、日本政府は「極東」の範囲について「フィリピン以北、日本とその周辺海域、韓国、台湾」とする見解を公にしている。

台湾有事、すなわち中国が台湾を武力侵攻した場合、昨年11月に高市早苗総理は「それが戦艦を使って、そして武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になり得る」と答弁した。

台湾支援のために台湾海峡などに入った日本と軍事同盟を結ぶ米軍が中国軍の武力攻撃を受けた場合、外交交渉など武力以外の方法では対処できない状況だとしたら存立危機事態になり得るとの認識であり、日本は他国領域であっても限定的な武力を行使できる。

一方、中国の習近平・総書記は台湾への武力行使を否定しない発言を繰り返し、2022年10月の第20回中国共産党大会においても「決して武力行使の放棄を約束せず、あらゆる必要な措置をとるという選択肢を残す」と明言した。

しかし、日本と中国は1972年9月の日中共同声明で「両政府は、右の諸原則及び国際連合憲章の原則に基づき、日本国及び中国が、相互の関係において、すべての紛争を平和的手段により解決し、武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認する」と謳っている。

1978年8月の日中平和友好条約でも「両締約国は、前記の諸原則及び国際連合憲章の原則に基づき、相互の関係において、すべての紛争を平和的手段により解決し及び武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認する」と定めていた。

中国が台湾への武力行使を放棄しない限り、日米安保条約を守る立場にある日本からすれば「日本の防衛力強化は台湾の防衛力を強化することになる」という小川・元陸将の指摘は当然であり、日本も米国も台湾も中国に対する抑止力を大いに強化しなければならないという結論になるのも、これまた当然であろう。

一方、「台湾有事は日本有事」というフレーズが一人歩きしているような印象があり、いささか気になっている。

安倍晋三・元総理は2021年12月1日の台湾向けの講演において次のように述べた。

「台湾有事は日本有事すなわち、日米同盟の有事でもある。

この点の認識を、北京の人々は、とりわけ習近平主席は断じて見誤るべきではない」

続けて「私たちは経済力、軍事力を充実させて決意を示すと同時に、理性的に、中国が自国の国益を第一に考えるなら、中台関係には平和しかないと説かねばならない」とも釘を刺した。

私たちはこの箴言とも言うべき発言を思い出し、日本も台湾もまず経済力、軍事力を充実させることで中国に対する抑止力強化に努めたいものだ。

なお、小川・元陸将は、本会理事の鈴木純治・元陸将とは防衛大学校の同期であり、陸幕装備部長、第6師団長、陸上自衛隊幹部学校長などを歴任後、西部方面総監に就任し、2017年に陸上自衛隊を退官(陸将)。

現在、本会の政策提言を取りまとめている日米台関係研究所の上席研究員をつとめ、今年度の政策提言「攻防バランスの取れた防衛力と国際発信力の強化に関する提言」の原案作成者でもある。

全国防衛協会連合会常任理事や日本安全保障戦略研究所上席研究員もつとめている。


台湾の防衛特別予算 元陸将「中国に対する抑止力大いに強化」【中央通信社:2026年3月13日】https://japan.focustaiwan.tw/politics/202603130005

(台北中央社)陸上自衛隊元西部方面総監の小川清史氏は、12日までに中央社の取材に書面で回答し、行政院院会(閣議)が昨年決定した防衛特別予算案が立法院(国会)で成立した場合、台湾の防衛力は強まるとした上で、日本の防衛力や米軍の支援能力の増強との相乗効果で「中国に対する抑止力が大いに強化される」との認識を示した。

2月の衆院選で自民党が大勝したことについて小川氏は、高市早苗首相が掲げる防衛政策や昨年11月の台湾有事を巡る発言が日本国民に支持されたと指摘。

防衛力強化と存立危機事態に関連する政策が進むと語った。

その上で「日本防衛イコール台湾防衛」だと強調。

「米国と日本、台湾の防衛力を合計した戦力によって台湾防衛は行われる」とし、「日本の防衛力強化は台湾の防衛力を強化することになる」と述べた。

中国が昨年12月に台湾周辺で実施した軍事演習については、2022年8月の演習と比べ、演習区域が日本の排他的経済水域(EEZ)から外されていたことに言及。

「日本が介入しないように、日本を刺激しない演習区域とした」、「高市首相の発言に対して、中国はかなり敏感に反応している」との見方を示した。

また日本の東アジア地域に対する秩序構築のためには、ロシア、中国、北朝鮮を抑止することが必要だとし、台湾の防衛特別予算が成立し、防衛力が強化されることを期待していると述べた。

小川氏は同日、北部・新北市の淡江大学で「中国の動向と日本の防衛」と題した講演をオンライン形式で行った。

(呉書緯/編集:齊藤啓介)。

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