ベネズエラ・マドゥロ大統領拘束から見た国際秩序の変動
林省吾(Shogo
Lim)| 台湾独立建国聯盟日本本部 中央委員
3日未明、アメリカは軍事行動を実施し、ベネズエラのマドゥロ大統領を拘束した。
米国の突如の行動に対し、日本のいわゆるオールドメディアは口を揃えて「法の秩序の無視」「石油利権を狙った行動」などと批判している。
一国の元首は通常、国家元首免責特権を有する。
他国の大統領を拘束する行為は、一見すると国際法違反に映る。
しかし実際には、アメリカはこの問題を回避するため、長年にわたり法的根拠を積み重ねてきた。
まず、2019年以降のマドゥロ第2期・第3期政権はいずれも選挙不正が指摘されており、そもそも欧米諸国の多くはその選挙結果を承認していない。
加えて、トランプ政権1期目の2020年、アメリカはマドゥロを麻薬密輸などの罪で起訴している。
以上の2点から、アメリカにとって彼は「他国の元首」ではなく、「犯罪者」と位置付けられている。
すなわち今回の軍事行動は、アメリカ国内に流通する密輸麻薬の大部分を掌握する元締めの逮捕に過ぎない、という論理構成になっている。
さらに先日、国外脱出を余儀なくされた、2025年ノーベル平和賞受賞者であり、マドゥロ独裁政権と闘ってきたベネズエラ野党指導者マリア・コリナ・マチャド氏は、アメリカの行動を支持し、「ベネズエラは自由になる!」とコメントした。
石油資源を有しながら経済を崩壊させたマドゥロ政権の失脚について、ベネズエラ国民の9割が好意的に受け止めている、との報道も出ている。
マドゥロ政権と近いロシアや中国のように、搾取しかしない国々に石油利権を委ねるよりも、財政再建を支援する意思を示すアメリカに託したほうが将来に光が見える、という心理が背景にあるのだろう。
一方で、「アメリカの軍事行動を許せば、中国にも台湾の総統を拘束する正当性を与えてしまう」という論調が、マドゥロ拘束直後から台湾や日本のSNSで急速に拡散し始めた。
これは地政学を無視した認知戦の一環であり、本来は論評に値しない論点である。
そもそも中国は以前から台湾侵攻のあらゆる可能性を想定し、計画を練ってきた。
台湾の総統府を模した一対一のモデル施設を建設し、総統を拘束・殺害することを想定した「斬首行動」の演習も繰り返してきた。
国際秩序や国際法を意に介さない中国にとって、「正当性」などは不要なものに過ぎない。
その以前の問題として、中国には台湾海峡を越え、台北上空を制圧し、台湾の総統を拉致するだけの実力が現時点では備わっていない。
今回も、中国がベネズエラに提供した最新の防衛システムは、米軍の前では脅威とならなかった。
台湾が一定の抑止力となる防衛能力を保持しているからこそ、中国は軍事行動ではなく、台湾の中国国民党や民衆党などの親中派国会議員を通じて、防衛予算の国会通過を妨害し続けているのである。
「マドゥロ拘束はアメリカによる正義の実現である」と、筆者は考えない。
民主党政権であれ共和党政権であれ、アメリカが自国の利益を最優先に行動するのは当然だ。
しかし、トランプ政権が「当面ベネズエラは我々が運営する」とまで踏み込んだ以上、それに見合う結果を出す覚悟が求められる。
なぜなら、これはベネズエラを中国やロシアをはじめとする独裁国家陣営から、民主陣営へと引き寄せる好機だからだ。
そして、すでに成熟した民主的素地を持つベネズエラの人々に、再び自主独立を実践する機会をもたらすことにもなる。
真のリベラルであるならば、歪められたルールに幻想を抱くのではなく、大衆の利益から思考を出発させるべきである
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