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李登輝元総統ご講話 日本台湾平和基金会・日本李登輝友の会共催の歓迎晩餐会

李登輝元総統は6月22日からの沖縄ご訪問を滞りなく終え、25日、宿泊されていたサザンビーチホテル&リゾート沖縄を予定より約1時間早く出発し、11時50分那覇空港発のチャイナエアライン121便で帰台されました。

 空港の貴賓室では、6月21日から沖縄入りし、李元総統の全行程に付き添った謝長廷・台北駐日経済文化代表処代表や西田健次郎・日本台湾平和基金会理事長、本会の梅原克彦・常務理事、辻井正房・常務理事など、今回の沖縄ご訪問を迎え入れた関係者と1時間半以上にわたり、同行の秘書たちも驚きを隠さないほど快活に懇談後、沖縄を後にされました。沖縄滞在中のどの場面よりもお元気な様子で、関係者は大きな安堵感を抱きつつお見送りしました。

 今回は日本台湾平和基金会と日本李登輝友の会の招聘による沖縄ご訪問で、23日にサザンビーチホテル&リゾート沖縄のコーラルグランデにおいて開かれた両会による歓迎晩餐会では、まさに声涙ともに下るともいうべき講話は200名を超える参加者に深い感銘を与えたようです。

 ご講話では、中国の覇権主義が「今日のアジアで最大の不安定要因」と指摘しつつ、日本・米国・台湾は「共同で積極的にアジアの平和と安定のために協力していくべき」と提案しています。また「中国の覇権的な膨張を押さえ込みつつ、平和的な発展を促すため、最も重要かつ必要なものは日台の協力関係をより一層強化することに他なりません」と、日台の関係強化の必要性を訴えられました。ここにご講話の全文をご紹介します。

 なお、今回の沖縄ご訪問に当り、皆さまに歓迎募金のお願いをしました。詳しくは追ってご報告しますが、40名を超える方々から100万円以上をご寄付いただきました。このご寄付から、李元総統ご夫妻に記念品として「江戸切子」を贈呈しております。この場をお借りして、ご寄付いただいた方々に深く御礼申し上げます。

————————————————————————————-日本台湾平和基金会・日本李登輝友の会共催の歓迎晩餐会におけるご講話【6月23日、サザンビーチホテル&リゾート沖縄「

 日本台湾平和基金会の西田健次郎(にしだ・けんじろう)理事長、日本李登輝友の会の渡辺利夫(わたなべ・としお)会長、ご来賓の皆さま、会場にお集まりの皆さま、こんばんは。

 これまで何度も日本を訪れるたび、皆さまから大きなご尽力をいただいてきました。本日この沖縄で、たくさんの古い友人の皆さんと再会できますことを心からうれしく感じております。それと同時に、改めて皆さんに厚く感謝を申し上げたいと思います。

 今回の沖縄訪問の大きな目的は「台湾人慰霊碑」の除幕式に出席することにあります。

 いま、われわれの生きる平和で安定した環境は、決して当然のごとく与えられたものではなく、むしろ多くの人々の善意の結びつきと、不断の努力によってこそ手に入れられるものです。

 先日、アメリカのトランプ大統領と、北朝鮮の金正恩委員長が朝鮮半島の非核化に向けて会談し、世界の注目を集めました。

 ただ、私の見方では、朝鮮半島の情勢とアジアの平和は、日本の関与なくして実現することはかなり難しいのではないかと感じています。

 2017年2月、トランプ大統領の就任間もなく、安倍晋三首相が訪米し、アジアの平和と繁栄の重要性をトランプ氏に説いたニュースを、私は鮮明に覚えております。

 アジアの人口は45億を超え、これは世界のおよそ半数を占めています。また、人口のみならず、その経済力も絶え間ない成長を続けています。

 台湾や日本が位置する東アジアについて申し上げましょう。

 2017年の東アジア全体のGDPは19・4兆ドルに達し、世界の4分の1を占めるまでになりました。これはアメリカとほぼ同じ水準に相当します。

 もはや東アジア経済が世界を牽引し、アジア経済には活力が充満しているとも言えるでしょう。それと同時に、国際社会に対する影響力もますます重要性を増しているのです。

 この経済的活力に満ちた地域に、数多くの新興経済体が続々と出現しています。

 とはいえ、こうした国々の発展は、国際社会や地域の、平和や安定に大きく左右されることは自明でありましょう。

 さて、今日の朝鮮半島の平和は、その端緒がかすかに見えたかのように感じますが、これによってアジアの平和と安定の問題は解決するのでしょうか。答えはおそらくノーでしょう。

 アジアの平和と安定についてお話しするのであれば、中国の覇権主義的な膨張について触れないわけにはいかないからです。

 中国はこれまでの経済発展の過程において、軍事的な影響力を駆使しつつ、もともとの大陸国家から海洋覇権国家へと、着実に拡張を続けてきました。

 さらには、太平洋から東南アジア、果てはインド洋に至るまで、中国は周辺国家との軍事的衝突や緊張さえ辞さずにその覇権主義的な野望を貫いてきました。

 中国はこの30年来というもの、常に覇権主義的な考え方を捨て去ることはありませんでした。

 20年連続して軍事予算の成長率が2ケタを記録し、この10年来では海軍力の増強を積極的に行っているのがその証左です。

 東シナ海での紛争、日中間における尖閣諸島問題、宮古島周辺の領海侵犯、南シナ海問題などの例を出すまでもなく、絶えず周辺国家との緊張状態を作り出し、潜在的な軍事衝突の可能性を生み出しているのです。

 また、南アジアやインド洋一帯にかけて、中国はアメとムチのやり方でミャンマーやスリランカ、パキスタンに海軍基地を建設しようとしています。

 台湾海峡の安全保障については多くを語るまでもなく、たび重なる中国による軍事的恫喝により、台湾は大きな脅威を受けています。

 さらに中国は民間企業にまで圧力をかけ、台湾を「中国台湾」と表記するように求めています。

 こうしたことから、中国が平和かつ安定した環境のなかで発展をしていかなければ、地域の平和や安定に貢献することが不可能なのは明らかでしょう。

 中国が一貫して捨て去ることのない覇権主義は、もはや、あからさまなものになっており、今日のアジアで最大の不安定要因となっているといえるのではないでしょうか。

 平和と継続的な繁栄を維持することは決して容易なことではありません。

 そのためには、民主主義と自由を普遍的な価値として支持する国際社会との連携や、平和を愛する民主的かつ自由な国家と手を携え、専制的な独裁国家の脅威に積極的に立ち向かわなければならないのです。

 日本と台湾はともに平和を愛する国家ですが、これまで台湾は、ミサイルを打ち込んできた中国に対し、屈することなく決然と勇気を持って、幸福な生活を追求した経験を有してさえいます。

 アジア情勢の大きな変化に直面する日本は、どのような道を歩むべきでしょうか。日本はアメリカに頼ることなく、日本自身が大きく変化する必要があるのではないでしょうか。

 今後は、日本と台湾のみならず、アメリカも含め、共同で積極的にアジアの平和と安定のために協力していくべきでありましょう。

 これまで長きにわたって積み重ねられてきた日本と台湾の交流は、さまざまな分野ですでに大きな成果を挙げています。

 しかし、中国の覇権主義的な脅威に直面し、アジア情勢が新たな局面を迎えるなか、さまざまな分野における日台の地政学的な戦略もまた、いかに実現させていくかの変化が求められています。

 具体的には、経済や文化交流のみならず、科学技術分野や軍事面における交流と協力関係の構築が重要とされてくるでしょう。

 中国の覇権主義は、その政治体制が生み出す問題です。中国は愚民政策を施し、国民の民主的思想を押さえ込んでいます。

 中国の人々は、いまだかつて本物の民主主義や自由というものを経験したことがないのです。

 私たちは中国の人々との交流や協力もまた進めなければなりません。

 とはいえ、中国の独裁政権がその覇権主義的な野心をアジアにまで広げようとする企てには断固として反対します。

 すでに民主主義を確立し自由を勝ち取った私たちは、人類の文明に対する責任を有しています。

 同時に、中国の人々に民主主義と自由の本当の価値を伝え、民主主義あってこそ本物の自由が手に入る、ということを呼びかけていかなければなりません。

 中国の覇権的な膨張を押さえ込みつつ、平和的な発展を促すため、最も重要かつ必要なものは日台の協力関係をより一層強化することに他なりません。

 そのためには、日本のみならず台湾もまた、アジアの平和と安定のための貢献を積極的に行っていく必要があります。

 日本と台湾はともに平和を愛する理性的な国家です。これからも引き続き、平和、民主主義、自由を守るため、ともに努力し、世界の平和に貢献していこうではありませんか。

 以上で私のお話を終わります。今日はありがとうございました。


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・渡部昇一先生講演録「集団的自衛権の確立と台湾」(2013年3月24日)
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