科学を装う「非科学的」イデオロギー放射線論

科学を装う「非科学的」イデオロギー放射線論

              茂木弘道

 ヘレン・カルディコットという小児科医がさる7月7日、東京国際文化会館で、福島放射線問題に関して講演を行った。ノーベル平和賞受賞グループに所属している専門医なのだから、良心的で科学的な話をすると誰でも思うだろうが、ところがバッテン、とんでもない無知とドグマに満ちた講演であることが明らかとなった。

 講演録を放射線問題の専門家である札幌医科大学の高田純教授にお送りして検討して戴いたところ「高田純のHカルディコット講演への反論」と題する反論を放射線防護センターのサイト http://rpic.jp/ に発表してくださった。

 何しろひどい。福島3号機の単なる水素爆発が、広島原爆の1000倍だというのである。熱量にしても、放射線量にしても、10万を超える死者(これは大部分熱線によるものだが)を出し、放射線量で言えば36,000,000ミリシーベルト/時という広島の1000倍だとどうなるのか?一人の死者も出さず、最大被曝量が「年間」で50ミリシーベルト、瞬時の最大が2ミリシーベルト/時という福島とそもそも比べるのがおかしいのである。それを逆に広島の1000倍だと?

 こんな講演に対して、直ちに「人をなめた、馬鹿、ウソを言うな!」という抗議が上がっておかしくないと思うのだが、こんな詐欺以上のウソを当たり前に聞いている人がいたというのだから驚くほかない。尤も全国から札付きの反核カルトが聴衆に加わっていたようであるが。

 彼女たちの間では、「今やヒロシマではなくフクシマだ」と言うのが合言葉のようになっているというのだが、どうもこれには隠された「黒い」心理、というより意図があるのではないかと想像したくなる。

 原爆投下はアメリカ人の大きなトラウマになっていることは間違いない。フーバー元大統領もその回顧録『Freedom Betrayed』の中で、「原爆投下はアメリカ史上並ぶもののない残虐行為である。それは永遠にアメリカ人の良心に重くのしかかるであろう」(p.882)と書いている。

「フクシマ」をそのトラウマを消す事件に仕立て上げたいと思っているのではないかと推測してもおかしくはないだろう。(カルデコット女史はオーストラリア出身だが、オーストラリア人は一般にアメリカ人以上に反日傾向が強く、グループのアメリカ人たちと意識を共有していると見ることもできよう。)

 ともかく、こうでも考えないことには、こんな暴論を正義、良心面を装って平気で言える心理を私には理解できない。

 ただ問題は、こんな暴論が平気でまかり通っている日本の現状である。さる6月18日、高田純博士の「タリム盆地核ハザード調査報告会」のご案内の中で私は、「私はあえて断言したい。放射線恐怖を撒き散らす反核論者はよくいって偽善者、ズバリ言えば「詐欺師」である。」と書いたが、その確信をますます深めている次第である。


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