台湾独立運動推進者が日本人支援者に宛てた手紙、50年超経て初公開=書籍刊行
(台北中央社)台湾独立運動の推進者で元総統府資政(顧問)の彭明敏氏が、自身の台湾脱出計画を支援した日本人、宗像隆幸さんに当時宛てた手紙の内容を記録した書籍が先月、台湾で刊行された。
229通に及ぶ手紙は宗像さんによって約50年にわたり銀行の金庫に保管されており、宗像さんの死後、妻の瑞江さんが台湾の重要史料を保存管理する機関、国史館(台北市)に寄贈。
同館が書籍としてまとめた。
手紙の内容が公にされるのは初めて。
書籍の発表会が20日、同館で開かれ、瑞江さんや陳儀深館長らが出席した。
書籍に収められたのは、彭氏が1968年8月から72年9月にかけて宗像さんに送った手紙。
宗像さんは2020年に、彭氏は22年に亡くなった。
70年に実行された彭氏の脱出計画で、宗像さんは重要な役割を担った。
当時、2人は顔を合わせたことがなく、やりとりは手紙のみだったが、それでも互いを信頼していたという。
2人が初めて会ったのは脱出から1年余りたった後の71年5月。
米国で初対面を果たした。
2019年12月には宗像さんが訪台し、これが2人にとって最後の面会となった。
瑞江さんはあいさつで、当時宗像さんがなぜ会ったこともない彭氏に協力するのか理解できなかったと明かしつつ、2人の手紙のやりとりを目にして初めて、彭氏が非常に深みのある人物であり、2人が脱出計画を秘密にすることを約束していたことを知ったと話した。
宗像さんが手紙を銀行金庫に保管することを決めたのは、自宅を捜索されて内容が明るみに出るのを心配していたからだという。
陳館長は書籍を通じ、彭氏の知られざる思想や、戒厳令下の白色テロ時代などにおける台湾独立運動家の思考や選択を垣間見ることができると語った。
同館によれば、宗像さんが彭氏に宛てた手紙は、彭氏が当時の国民党政権によって厳しく監視されていたため保管することができず、脱出前に燃やされた。
彭氏の手紙は宗像さんの鹿児島の実家に送られており、宗像さんの妹が代わりに管理していたという。
同館は宗像さんについて、中華民国からの台湾独立を目指す政治団体「台湾独立建国連盟」の前身の一つで、日本で結成された「台湾青年社」に加入した最初の日本人だと紹介。
その一生を台湾人を助けることにささげたとしてその貢献を称賛した。
(温貴香/編集:名切千絵)
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