台湾独立建国聯盟日本本部 林 省吾
今年3月に、大手製薬会社アステラス製薬の50代の日本人男性社員が中国当局に拘束された。中国外交部の発表によると「スパイ活動に関わり、中国の刑法と反スパイ法に違反した疑いがある」という。
中国は法律を利用した「法律戦」を展開している。中国の国内法は外国人も含む中国に関わる全ての人間が対象になっている。例を挙げると、事実上の香港併呑が達成された2019年には、《反国家分裂法》と《国安法》を台湾人に適用し、《反スパイ法》の名目で香港駐在の日本人を拘束するなど、中国当局が捕まえたい人を意のままに「合法的」に逮捕することができる。
特に今年4月に中国全人代で可決された《反スパイ法》の修正案は、その中身に不透明なところもあるが、適用範囲が拡大されることは確実だ。修正前はどちらかというと、習近平が政敵を粛清するために使う法律という要素が強かったが、修正後はより一層外国人向けになったように見える。中国の目的は、駐在する外国の民間人社員から外交官まで、この法律でコントロールすることだ。中国の利益になるような言動をさせるのはもちろん、本国で逆スパイ行為を働かせることさえあり得る。
「郷に入れば郷に従え」という考え方もある。4月に着任したばかりの中国駐日大使、呉江浩は「罪のない日本人が拘束されたのではない」と主張した。だが、呉氏が言わなかったことが一つある。それは、罪があるかないかは中国当局の言い分で決まってしまうということだ。このような法治国家ではない国に限って、法律を使った法律戦を展開し、侵略を繰り返す。そして中国の次の一手は、《台湾基本法》の制定である。
台北大学犯罪学研究所助教授で中国のハイブリッド戦に詳しい沈伯洋氏は、中国は近い将来に必ず《台湾基本法》を制定し、台湾のことを国内法で処理しようとすると指摘している。香港返還後に制定した香港基本法のように、「一国二制度」を盛り込んだ法律である。その際に、今まで文化交流の名目で訪中した台湾の民間人から元軍人、政治家に至るまで、中国に言わせるとこの《台湾基本法》の制定の「協力者」ということになり、「海峡の両側は同じ中国であること」を台湾人と協議した証拠として主張する。このでっち上げた「民意」を盾に、中国は台湾問題の解決において、国際社会に関与させる隙すら与えないだろう。
仕掛けられた法律戦に対しては法律戦で対応するしかない。米豪のように《外国代理人登録法》を作るのもいいだろう。日本も《経済安全保障推進法》を制定するなど、中国への警戒を強めた。だが、既に戦場に立たされている当の台湾は、この中国の法律戦に対して無防備と言える状態だ。例えば、フェイクニュースを規制する「数位中介法」(Digital
Media Communication Regulation
Act、デジタルメディアコミュニケーション法)や、中国への協力者の資金調達を透明化できる「境外勢力影響透明法」(Foreign
Influence Transparency
Act、外国勢力による影響を透明化する法)など、台湾の有識者達は幾度も法案の成立に尽力してきたが、中国国民党を始めとする親中勢力にことごとく妨害され、立法化されていない。
台湾の問題は外部の敵よりもむしろ内部の協力者を排除することが先決だが、日本はどうだろう。日本の学術界においては「千人計画」で既に多くの研究成果が中国に流出しており、防衛の観点から中国資本による日本国土の購入も問題になっている。更に中国の「警察業務拠点」が日本中に数カ所あることが既に判明したにも関わらず、それを取り締まる対処法がなく、実態把握に急ぐのがせいぜいというのが現状である。
法治国家である以上、法律で国益の堤防の穴を塞いでいくしかない。だが、こういった議題に関心を持ち、積極的に立法化に取り組む日本の官僚や政治家は、残念ながら見当たらない。今こそ国民のために立ち上がり、行動で日本国を守る信念を示すときだ。有権者は必ずその動きを注視する。
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