【門田隆将】激動「東アジア」の鍵を握る台湾「蔡英文女史」の来日

【門田 隆将】 激動「東アジア」の鍵を握る台湾「蔡英文女史」の来日 

                門田 隆将(ノンフィクション作家)

【門田隆将ブログ「夏炉冬扇の記」:2015年9月30日】

 今日で9月も終わる。11月に上梓する長編ノンフィクションの執筆で徹夜の連続である。そのた
め、ブログも更新できないままだった。

 さまざまなことがあった9月だったが、なんといっても、安保法制が成立したことが、日本に
とっては大きな出来事だったと言える。対中国法案ともいうべき安保法制が通ったことは、中国に
対する「牽制」になったことは否定できない。

 中国と韓国以外のアジア諸国が法案の成立を歓迎したのは、象徴的だった。いまや東アジアにと
どまらず、世界中の懸念となっている中国の膨張主義。日米同盟の強化によって、尖閣と東シナ海
への中国の侵攻を躊躇(ためらわ)せることができたなら、安保法制も一定の役割を果たすことに
なる。

 それでも、私は、いよいよ東アジアで「激動が始まる」と思っている。来年1月に台湾総統選が
あり、そこで民進党の蔡英文女史(59)が、総統になる可能性が極めて高いからだ。

 台湾人の誇りと自立を基礎とする民進党政権に対して、いったい中国はどう出るのか。仮に“何
か”があったなら、アメリカは「台湾関係法」に基づき、台湾を守るのだろうか。その時、日本は
どうするのか。来年以降、両岸関係(中台関係)からは、いっそう目が離せないのである。

 来週、その“話題の人”蔡英文女史が来日する。日本に住む台湾人、そして応援してくれる日本
人への挨拶とお披露目が目的だが、いうまでもなく安倍政権との「意思疎通」が大きな眼目だ。

 10月6日に東京入りし、7日には安倍首相の地元・山口に飛び、村岡嗣政知事と山口県庁で会談す
る。しかも、すべて同行して道案内するのは、安倍首相の実弟、岸信夫・衆院議員である。

 事実上、「安倍家」が全面的に受け入れた形での来日なのだ。そもそも、安倍首相が「師」とも
仰ぐ李登輝元総統の外交ブレーンを務めたこともあるのが蔡英文女史である。その蔡女史が「師」
と仰ぐのが許世楷・元台湾駐日代表である。安倍首相と許氏との親密な関係は、知る人ぞ知る。

 今回、山口から帰京して、いったい蔡英文女史は誰と会うのか、中国側が神経を尖らせているの
も無理はない。いざ総統になると、中国のさまざまな妨害で「来日」は難しい。それだけに彼女の
東京での一挙手一投足が注目されるのである。

 憲法改正によって実現した1996年の第1回台湾総統選の折、中国は軍事演習を強行し、基隆沖海
域にミサイルを撃ち込んだ。李登輝氏の「総統選」勝利を阻止するためである。しかし、結果は、
逆に台湾人の反発を買って、李登輝氏の大勝利につながったことが思い出される。

 台湾の友人からは、「総統選までの4か月間が心配だ」という声も私のもとに寄せられている。
何をするかわからない中国だけに、身辺の安全も含めて徹底した警戒が求められる。そして、仮に
総統選に勝利しても、政権移譲がなされる来年5月までに、国民党の馬英九総統が何を繰り出して
くるかもわからない。

 総統に就任後、蔡女史には、“茨(いばら)の道”が待っているが、それでも日本とアメリカが
バックにいることは大きい。また、日本にとっても、東シナ海の安定のためには、「アメリカ―日
本―台湾」の強固な結びつきは必須なのだ。

 さまざまな意味で、蔡英文女史の来日の意味は大きい。安保法制が成立した折も折、来日する
「東アジア」のキーを握る蔡英文女史の動向に注目したい。


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