【鉄道ファンから見た】台湾新幹線と中国高速鉄道

【鉄道ファンから見た】台湾新幹線と中国高速鉄道

        李登輝学校日本校友会 事務局 片木裕一

先般、中国の浙江省温州市近郊で、高速鉄道の追突事故が発生し、多数の
死傷者が出ました。お見舞い申し上げるとともの、ご冥福をお祈りいたします。

本件は既にメディアで大々的に報道されていますが、折角の機会ですので、
整理した上で、台湾新幹線とも比較してみたいと思います。

事故は23日午後8時50分頃、温州市内の永嘉之・温州南駅間の橋の上で、
落雷事故の影響で停止していた列車(回送列車、乗客はいない)に、後続の
列車(営業運転中、1両100人程度乗車している)が追突、後続列車脱線し、
うち2両は橋の下へ転落、200人以上が死傷した、というもの。
停止していた列車は「CRH2型」という日本から正式にライセンス提供して
中国で製造されたもので、追突した列車は「CRH1型」というカナダのボンバ
ルディア社から正式にライセンス提供して中国で製造されたもの。

→以上は複数のメディアの情報を整理したものであるが、追突して橋の下に
落ちた車両は、その塗装からCRH2型(=日本型)ではないかと思われます。
そもそも正常に運行しておれば、CRH2型は温州でCRH1型を追い抜いていた
との指摘もあります。

さらに追突した列車の先頭車を、運転席にある「ブラックボックス」は回収した
として地中に埋めた、とのことですが、これは先頭車の形状を意図的に隠した
疑いがあると思われます(反対側の先頭車は早々に撤収された)。

そもそも中国への高速鉄道輸出は、台湾への新幹線輸出とは異なります。
台湾へは12両編成30本・360両が輸出されたが、これらは全て「完成品」で、
地震感知システムや自動制御システムも搭載しており、途中で打ち切りに
なったものの関係者の教育訓練まで含んだ「トータルシステムの輸出」で
した。すなわち、「新幹線」とは車両だけではなく、設備やシステム、運行
管理までを総合して初めて「新幹線」という訳です。
→万一事故があれば、原因にもよりますが、日本側の責任も免れない。

一方中国への輸出は8両編成60本・480両ということになっていますが、
「完成品」は僅か3本24両で、あとは設計図や仕様書に基づいて中国側で
製造する契約(=正規ライセンス契約)となっています。だからそれらの車両
は「中国で作った」のは間違いではありません。また、地震感知システムや
自動制御システムは搭載されていません。従って、あの車両(CRH2型)を
「日本のE2のコピーだ」と言うのは適切ではないのです。
→万一事故があっても、製造自体は中国であり、制御システムに日本は関与
 していないので、今回のような事故についての責任は全くない。

しかし、運転ミスであれシステムのトラブルであれ追突した方の列車が日本型
だったらどういうことが予想されるでしょうか。確かに日本企業に責任はないが、
大規模な日本叩きデモなどが発生することも考えられます。しかし日本を叩く
と、それが「やっぱり質悪なコピー」とのレッテルを貼られてしまう・・・
今後の経緯を見守りたいと思います。


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