【警鐘】台湾を注視せよ

【警鐘】台湾を注視せよ

             「連帯する日本」 札幌幹事  海原 創 

 今月早々台湾民進党党首蔡 英文女史が来日する。

滞在中自民党、民主党議員との懇談が予定されているが日本政府関係者との会談は不明である。ダライラマ師や李登輝元総統来日のときと同じく、日本側が中国を刺激することを避けるからであろう。避けるからではなく怖れるからと申すべきか。女史の訪日目的は日本との絆を再構築するためであるが、それ以上に、この時期を選んで日本を訪れることの政治的意味の大きさに我々は注目しなければならない。

台湾では明年一月早々総統選挙が実施される。すでに選挙戦は終盤で与党国民党と野党民進党は熾烈な戦いの中にあるが、政治音痴と腐敗によってすでにレームダック化した馬英九政権に勝ち目はない。世論の大多数は民進党蔡英文女史の圧勝を予測しており、その通りの結果が生まれるであろう。その民進党が党の基本方針として掲げるのは台湾の独立と国際社会への仲間入りである。もちろん巨大な中国の圧力の下で中国経済に翻弄されている立場から、政権奪取早々に独立を宣言することは至難であろうが、少なくとも将来独立を目指すことが政治日程に織り込まれることは間違いない。

しかし、そのような政治志向が実は台湾海峡に大きな波乱を生み出す可能性をわれわれは認識しておかねばならない。

民進党が選挙戦に勝利しても、蔡英文党首が国民党の馬英九総統に代って正式に次期総統として任命されるまでにはなお数か月の準備期間を待たねばならない。他の民主主義国家であれば、その期間に政権交代による引継ぎ作業や一般国民向けの新たなキャンペーンが実施される。問題はその魔の時間である。

台湾の事情に少しでも関心を抱く者であれば理解できるように、国民党というのは本来中国大陸の政党であって戦後長く台湾に君臨し島民を蹂躙してきた。いっぽう台湾住民に根強い基盤を有する民進党は、長年民族自決による台湾の独立を夢見てきた。このような政治環境の中で、予想どうり民進党が圧勝し新たな政権が生まれるとしたら国民党のみならずこれを背後で操ってきた中国政府にとっては極めて不都合な事態となる。国民党は瞬く間に利権と支配力を失う羽目となり、台湾を自国領土と宣伝しこれまでも何かと台湾に圧力を行使してきた中国にとっては許しがたい反動として処罰せざるを得なくなる。

 現在、台湾独立のため心血を注ぎ日夜戦っている最前線の当事者にうががったところ、国民党および背後の中国にとってもしそのような現実が生まれるとしたら、彼らはそれを阻止すべくあらゆる手段を行使してくるであろうという。たとえ蔡英文女史が国民投票の結果文句のない勝利を得、次期総統に予定されても、彼らはそう易々と彼女への政権移譲に応じないかもしれない。そのとき彼らが行使するであろうと予測される手段は、例えば;

(1)国民党派がなんらかの理由をでっちあげ選挙の無効を宣言しデモや反乱を引き起こす。

(2)選挙以前もしくは選挙後のどさくさに紛れて国民党が秘密裏に中国と平和統一協定を締結してしまう。

(3)中国が独立派の新政権を国内の反乱と決めつけ、これを平定するため軍を派遣し武力鎮圧を試みる。

平和国家日本から眺めればいずれも荒唐無稽のおとぎ話に聞こえるが、元来荒唐無稽な手法で少数民族や近隣諸国に対し帝国主義を貫いてきた中国共産党にとってこれしきの芝居は決して格別な筋書きではない。

 沖縄から台湾海峡を経てマレーシアへ抜けるシーレーンはわが国の生命線である。
もし台湾が中国の思うままに支配され制約されるとしたらわが国は中国に隷属するかこれと戦うしかない。その意味で安倍政権による安保関連法案の成立は極めて重要であったが、台湾問題はそれらの法案が効力を発揮するのを待つほど悠長な事柄ではない。ならば日本人はこぞって台湾の自主独立を支持、支援しなければならない。それは過去50年間台湾を植民地としてきた日本の義務であり極東の安全保障に果たすべきわが国の大きな役割であるからだ。

 現在台湾では国民党、民進党の二大政党を理想とせず、大陸の政党である国民党を駆逐して独立を強く志向する新たな「時代力量党」が生まれた。若き学生やその支持者を中心に大きく台頭しつつある集団である。なんと羨ましいではないか。かつてわれわれが若きとき国家再建に起ち上った結社を想起させてくれる。

 日本の若者が平和を叫び、自由を尊び、豊かさを求めるのは結構である。  では平和や自由や豊かさを保障する国家の安全やその安全を脅かすアジアの危機になぜ彼らは目覚めないのか。きっと彼らはおそろしく臆病なのであろう。  すなわち心の病に冒されているとしか考えられない。

台湾の若者と交流させることで一刻も早くこれを治癒せねばならない。


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