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平成21年6月17日「時局プレス会議」活動報告
講師/林 建良 「台湾の声」編集長
(文責:時局心話會事務局)
昨年以来台湾では、「三通」(中台間の直接の通商、通航、通信)の実現、公
共建設への中国資本導入、学生や労働者の受け入れ、簡体字導入などの動きが急
速に進んでいる。
中国との間にECFA(経済協力フレーム協議)を締結するという話も出てい
る。協議内容がまったく知らされないという異常なもので、これに対する民進党
主催のデモは盛んに行われているが、「犬が汽車に吠えるようなものだ」と揶揄
される状態で、まったく効果が上がっていない。
独立派と目される民進党は実は10年以上前から法理独立への目標を放棄した。
もっともひどかったのは陳水扁前総統は就任時に「将来の『一つの中国』に向け
て中国と協議する」と表明、演説の原稿まで事前に中国に見せる有様だった。
総統府内部にさえ「一つの中国」研究チームが2000年9月に作られており、
中台の経済的・政治的統合に向けて歩を進めていたのだ。
台湾の半導体技術が中国に解禁されたのもこの頃である。今明らかになってい
る陳前総統の汚職疑惑の陰に、財界の力が動いていたのは言うまでもない。
台湾の中国傾斜に舵を切ったのは陳水扁・民進党であったのだ。
先の憲法改正で選挙制度が国民党優位に改訂されてしまった。年末の地方選で
も大敗が予想される民進党が、政権を取ることは二度とないだろう。台湾はこの
まま中国に併呑されてしまうのか。
最近のアンケート調査で国民党の支持率は35%、民進党は16%とどちらも
振るわない。一方、独立支持は40%、統一支持は6.5%という調査結果もあり
、独立を望む声は馬政権後もむしろ高まっている。人口の13%を占める外省人
(中国出身者)の過半数が統一を望んでいない、という結果からも「国民党政権
誕生=中台統一」というのはあまりにも一面的な見方だと分かる。
民進党が頼りにならない今、体制外から統一を阻止するにはどうしたらよいか
。
林氏は次の3点を提案する。
1)中華民国体制の虚を突く:サンフランシスコ条約前に施行された中華民国憲
法では、当時日本領だった台湾は領土に含まれていないことを指摘する。
2)アメリカの対中台政策を変更させる:アメリカの基本政策は「現状維持」だ
が、「現状」をどう解釈するかは中国ではなく台湾が決めるべきであることを表
明する。
3)日本が立場を明確にする:戦後日本は台湾を「放棄」したが「返還」したわ
けではない。旧宗主国としてそれを明らかにするだけで、台湾にとっては大きな
力になる。
台湾には「日本精神(リップンチェンシン)」という言葉があり、台湾人は誠
実な日本人に尊敬と親愛の情を抱いている。無関心・無関係を決め込まず台湾人
の真意に耳を傾けてほしい、孤立感を深める台湾を見捨てないでほしい−林氏の
訴えは聴衆に大きな熱気と感動を呼ぶものであった。