【西村真悟の時事通信】台湾と日本=自衛権発動の問題

【西村真悟の時事通信】台湾と日本=自衛権発動の問題

 六月三十日に、名古屋で、去る四月の十日間、台湾の東海岸で、元帝国陸軍奉天
特務機関員 門脇朝秀氏(九十九歳)と供に、台湾の「山の民」に会ってきた視察
旅行の報告会があった。

 門脇氏は、我が国の貴重な誇りある歴史の生き証人であり、当日は東京から名古
屋に来られ、会場で約九十分にわたって立ち上がって、支那事変から通州事件、武
装解除した関東軍とその元にいた満州在留邦人の悲劇、そして武装解除しなかった
蒙古軍とその元にいた在留邦人四万人の無傷の帰国について語り、台湾の高砂族と
の現在に至る交流を語られた。
 私は、この門脇氏のメインの講話の前に、台湾と日本との関係について三十分ほ
ど語った。以下はその骨子である。

(1)、まず我々日本人は、日本の自衛権から観た台湾の位置を見極め、さらに台
湾の法的地位を理解していなければならない。
(2)、その上で、政治的決断を明確に行い、そして我が国の国家戦略を定める必
要がある。

(1)について
 国際法における自衛権発動の二つのケース
!)デンマーク艦隊引渡請求事件、英国対デンマーク、1807年
!)カロライン号事件、英国対米国、1837年
 ?は、トラファルガーでナポレオンの艦隊を打ち破った英国の残る脅威は、ナポ
レオンが陸路デンマークを攻略して無傷で強力なデンマーク艦隊を接収してナポレ
オンの艦隊として再び英国に攻めかかることである。
 そこで英国は、デンマークに艦隊引渡を求め、拒絶されると海上からコペンハー
ゲン市内を砲撃し、港にあるデンマーク艦隊の船をことごとく英国に持ち帰った。
 英国は、これを自衛権に基づく措置であると主張した。
 ?は、カナダにおいて英国からの独立を企てた反攻が勃発した時、アメリカのニ
ューヨークやバーモント、ミシガンなどの北部住人がその独立闘争を支援しだした
。そして、米国船カロライン号に義勇兵や武器を乗せてナイヤガラ川を往復してカ
ナダ側にそれを運んだ。それを察知した英国軍は、カロライン号を急襲し船体に火
を付けて川に流しナイアガラ瀧に投じた。
 英国は、これを自衛権に基づく措置と主張した。

 国際法は、以上の二つのケースを研究して自衛権の内容を定めている。
 よって、我々は、この自衛権の理解に基づいて台湾と日本を観なければならない

 即ち、大陸の中国共産党が台湾を飲み込めば、台湾の優秀で強力な海空軍は中共
の武力となって人民解放軍と合体して日本に対する攻撃力となる。
 よって、我々日本は、台湾が大陸に飲み込まれるならば、台湾の軍隊(特に海空
軍)を自衛権に基づいて日本に接収することができる。

 次に、台湾の法的地位に付いて
 我が国は、サンフランシスコ講和条約において
Japan renounces all right,title and c
laim to Formosa and Pescadores.
 という文書に署名した。
 即ち、我が国が放棄したのはright,title,claimであって、S
overeignty(主権)ではないのだ。
 よって、我が国は、台湾に対して潜在的な主権を有している。従って、第三国が
台湾に武力侵攻するならば、我が国は自衛権を発動できる。

 では、台湾人の国籍は何か。
 昭和二十年八月十五日、また、昭和二十七年四月二十七日に日本人であった台湾
人が、日本人でなくなったという法的事実は何処にもない。
 従って、尖閣諸島周辺の漁場は、日本人が開拓した日本人のものだが、その日本
人の中に台湾人も含まれている。

(2)について
 以上の(1)を明確にした上で、日本人は何を決断し如何なる国家戦略を確立せ
ねばならないのか。
 まず第一の前提。
 日本は中共から台湾を守る。何故なら、そうしなければ日本自身の存続がないか
らである。
 従って、この台湾防衛は、日本の自衛権に基づく行為である。
 つまり、敵は、中共・中国共産党・支那である。

 では、この中共・支那とはなにか
 それはあらゆるものを飲み込もうとする力の信奉者である。彼等には、デモもア
ピールも焼身自殺も通用しない。ただ、彼等に勝る我らの決死の力こそが、彼等を
退かせることができる。
 そして、この彼等は、核ミサイル戦力と海空軍戦力を飛躍的に増強させている。
時が来れば、躊躇なく使うためである。

 従って、今我が国国民が成すべき事は、まず、軍事的脅威に対して我が国を対処
不能にしている占領憲法の無効を確認してそれを廃棄することである。
 これによって、明日にでも、軍事の増強と自衛隊を国軍として迫り来る中共・支
那のもたらす危機に対処する体制構築を始めることができる。

 「護憲」よりはましだが、我が国の現に迫りつつある具体的な危機を観ない人た
ちが言っている「占領憲法の改正」などで、この危機に対処はできない。
 そもそも改正に何年かかるか分からないではないか。その間に中共にやられてい
る。
 さらに、「改正」には日時がかかりすぎるから、「改正規定の改正」をして改正
しやすくしようという人たちも最近出てきた。しかし、また問いたい。「改正規定
を改正する」のに何年かかるのか。
 そして、彼等に、基本的な問いを投げかける。
   そもそも、「無効なものを改正してどうする」
 さらに、改正がなるまでの間に危機が襲ってきたら、君たちは現在の占領憲法で
その危機に対処するつもりかと問いたい。
 そうだというならば、彼等はいわゆる護憲派と称する中共シンパと同じだ。むざ
むざ日本を、中共の餌に提供する点で両者は同じだからである。

 占領憲法は無効なんだから、無効として捨て去り、明日から新たに前進できる政
権を一刻も速く創設しなければならない。

 以上の通り書いてくると、諸兄姉は、また西村は相変わらず過激だなあと思われ
ると思う。わたしも、「あやしゅうこそ ものくるおしけれ」と思うこともある。
 しかし、私は、こう書かざるをえない。
 中共の意図と脅威を肌で感じるからだ。
 そして、決して孤独ではない。
 あのチャーチルやドゴールも、第二次世界大戦前夜のイギリスとフランスで、戦
争屋や危険人物として孤立に堪えていたんだ、と思うからだ。
 そして、事態は、チャーチルやドゴールの言っていた通りになったではないか。
チャーチルやドゴールが、その事態を作ったのではなく、その事態に事前に無関心
な者達が、敵に誤ったサインを送り、その事態を誘き寄せたのだ。
 六月三十日の名古屋で、チャーチルの大著である、
「THE SECOND WORLD WAR」の「JAPAN、PERL HARBORUR!」のある巻をお借りし
た。英語を読むのは苦手だが、読んでみようと思う。

 最後に、今日(二日)の産経新聞朝刊の「FROM EDITOR」というコラム(八面)
が、それとなく我が国の現在の馬鹿さ加減を指摘しているので触れておきたい。
 それは、我が国の将校養成学校である防衛大学校(昔の士官学校、兵学校に相当
する)が、三年生から工業専門学校の卒業生を受け入れる検討をしているという記
事である。
 この発想は、防衛大学校の前の学長である五百旗頭氏の頃に出てきた。五百旗頭
氏は、防大に来る前には神戸大学にいた、どちらかというと左翼的な国際政治学者
である。
 しかし、一年の入学時から最高学年の四年生と同じ部屋で共同生活する全寮制の
防衛大学校に、三年から編入してくるのは無理であろう。
 第一、士官学校や兵学校という軍隊の将校養成校に、途中編入を認める学校など
世界にない。
 そこで、コラム氏ははっきり言わないが触れている。そもそも、士官学校や兵学
校の校長に、軍人でない者が次から次になってくる日本の現状こそ異常であると。
 そのとおりだ。いずれは戦場に出ることになる将校養成学校の若き将校の卵を養
成する学校の校長は、赤銅色に焼けて砲弾の下をくぐってきたような匂いのする将
軍、提督連中から選ばれるべきだ。
 これをすれば士気は確実に高まる。
 第一、将校になろうとする夢を抱いた若者の校長に、次から次へと、左翼学者や
そつない役人を送り込むなど、どうかしている。しかも、これらは、「自衛隊は軍
隊ですか」と聞かれれば、保身と占領憲法への忠誠のために、「軍隊ではありませ
ん」と答える輩だ。
 将校を目指す若者が、可哀想ではないか。


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