『兵法三十六計』は軍事だけでなく、中国の庶民にも広く使われている「生活の知恵」なのである。それを知らずに中国人と付き合うなら、百パーセント火傷をする。
本書は中国人を知るための必読の一冊である。
「台湾の声」編集長 林 建良
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単行本
上田 篤盛 (著)
¥ 1,728
内容紹介(アマゾンより)
恐るべし! 中国兵法
中国には『孫子』と並び称される『兵法三十六計』がある。
『孫子』は為政者が愛用し、『三十六計』は民間に広く普及し、その教えは今もビジネスや国際政治、国内政治応用されている。
実際、『毛沢東語録』や現在の中国指導者の発言のなかでも、しばしば『三十六計』が引用され、中国の国家戦略や対日工作に応用されている。
米国などの研究機関も「中国指導者が兵法を現代の戦略・作戦に採り入れている」として研究している。
中国の今日の対外行動の深淵には『三十六計』の応用と思われる節がいくつもうかがえるのである。
今日の日中関係を見るうえで、その真実の意図を明らかにし、次なる一手を考察するうえで、中国の伝統的な思考形態となっている『三十六計』を理解することが不可欠である。
出版社からのコメント
二〇一三年一月一三日、尖閣諸島北方の東シナ海公海上で、中国海軍のフリゲート艦が海上自衛隊護衛艦に対し、約三分間にわたって射撃管制用レーダー(FCレーダー)を照射した。日本側の抗議に対して中国外交部の華春瑩・報道官は「照射したのは監視レーダー」で、「日本側の『無中生有』だ」と開き直った(68頁参照)。この「無中生有」とは『三十六計』の第七計にあたり、「無の中から有を生ず」を意味する。この報道官の「無中生有」発言にみるとおり、中国が『三十六計』を日常的に用いていることがわかる。
同時に、現代の中国の国家戦略や対日工作に『三十六計』が応用されていることをうかがわせるものである。よって尖閣問題、反日デモなどの、中国による対日有害活動を『三十六計』にもとづいて分析すれば、水面下に隠されている中国の戦略的意図を読み解くことができ、『孫子』と同様に『三十六計』を知悉すれば、中国との競合において負けない戦いができるのではないだろうか? 『三十六計』は、一七世紀の明朝末期から清朝初期の時代の編纂であるとされる。その原本は一九四一年にフン州(寧州の前身、現在の甘粛省慶陽市寧県)において発見された。その著者は、明代に『孫子』の注釈本を編纂し、
「易」の理を軍事戦略に応用した兵法家である趙本学、あるいはその影響を深く受けた人物であるといわれているが、実態は定かではない。 中国古代の兵法書には「易経」の考え方が広く反映しており、中国古代の兵法家はいずれも「易」の理に精通していた。『三十六計』においても「易経」の考え方が反映されている。 『三十六計』は「勝戦計」「敵戦計」「攻戦計」「混戦計」「併戦計」および「敗戦計」の六組に区分され、各組が六つの計、合計三六の計で構成されている。一つの計が四文字、あるいは三文字の熟語からなる総計一八六文字から構成される極めてシンプルなものである。
その最大の特徴は『孫子』をはじめとする従前の兵法書から貴重なエキスを抽出して簡潔にまとめている点にある。それゆえに、民間人にも馴染みやすく、『孫子』よりも広く流通し、日常生活やビジネスの世界ではしばしば応用されているのである。 一方で記述内容が粗削りで、各兵法には類似点が多々あり、その解釈には明確な境界線が引けない。六組六計の配列にも合理性があるとはいえない。 こうした配列の不合理性は認識しつつも、本書では『三十六計』がどのような兵法であるのかを理解することをまず優先し、本来の配列どおりに『三十六計』を第一計から順に解説して、そのなかで筆者が現実の中国の国家戦略および対日工作に応用されている、あるいは応用する可能性がある事象を挙げて、その兵法の意義をひも解くこととしよう。