(転載自由)
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以下は6年前に上梓した単行本「日本よ、こんな中国とつきあえるか」の一部ですが、参考のために再度掲載させていただきます。
「台湾の声」編集長 林 建良(りん けんりょう)
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(転送転載自由)
●中国人は日本をどう見ているか?
私が日本に来て一番驚いているのは、日本人の中国人観である。日本人からよく「中国人は非常に心が広い寛大な民族で、懐も深くおおらかで、道徳心が高く、信用を大事にする」というような話を聞く。
このような中国人観を聞くたびに驚くとともに、果たして日本人は中国人のことをどこまで知っているのだろうかと疑問に感じざるを得なかった。というのも、 中国人の実態をつぶさに見ざるを得なかった台湾人からすれば、日本人の中国人観とすべてにおいて正反対だったからである。
中国人を知るためには、中国人が日本をどう見ているのかを知ることが一つの大きな手がかりになる。その対日観を比べてみれば、中国人と台湾人の違いもよくわかるはずである。
中国人の対日観はおおよそ次の三つの要素から成り立っている。
(1)日本に対して優越感を抱いている。
(2)日本に対して劣等感を抱いている。
(3)日本に対して被害者意識が強い。
中国は国の名前のとおり、自分たちが世界の中心と考えている国で、中国人は、自分たちこそ四千年の歴史を持ち、中華文化というもっとも優れた文化を持っている国だと考えている。
だから、中国人はよく「日本文化は所詮、中華文化の亜流にすぎない」と言う。日本の漢字にしても中国から伝わってきたものではないかということで、日本に対しては文化的、民族的な優越感を常に抱いている。
このような考え方は国家にも反映され、国際舞台のあらゆる場面において、日本には中国以上の発言権を与えないよう常に企図している。
それを象徴しているのが二〇〇五年四月の反日デモだった。中国は、日本が国連の安全保障理事会のメンバーに加入することは中国の優位性を脅かすものであ り、絶対に容認できないと考えている。自分たちこそが世界の中心であると考える中国は、日本に対しても絶対的優位に立たなければならないと考え、それこそ が対日観の原点なのである。
●常に先を行く日本への劣等感
では、自分たちこそ世界の中心と考えている中国が、なぜ日本に対して劣等感を抱いているのか?
これは、中国は四千年来、周辺諸国を東夷、西戎、南蛮、北狄と分け、征服と朝貢の対象と考え、あらゆる近隣諸国に兵を出して侵略をくり返してきた。例をあげればキリがないが、最近では、一九五〇年のチベット侵略や一九七九年のベトナムへの懲罰戦争がある。
しかし、その長い侵略の歴史のなかで一度たりとも征服できなかったのが、東夷にすぎない日本だった。しかも日本との戦争で勝利したことがなく、一八九四年の日清戦争で負け、大東亜戦争でもほぼ連戦連敗だった。
ところが、中国は第二次世界大戦の戦勝国として国連の安全保障理事会の一員となり、確かに日本より優位に立ったかに見えた。しかし、日本は明治維新という 革命を成功させ、アジアで最初に西洋国家の仲間入りを果たした国であり、大東亜戦争では負けたものの、いち早く経済を復興させて先進国入りし、世界第二位 の経済大国となった国だ。
中国は、日本に対して常に優位に立たなければならないと考えているにもかかわらず、日本は常に先を行く。そこで劣等感を抱かざるを得なくなってしまったのである。中国にとっての日本はまさに「目の上のたんこぶ」なのである。
中国人が日本に対して被害者意識が強いことは、いわゆる「南京大虐殺」のような世紀のウソを捏造してまで被害者意識を増大させていることによく現れている。
これは戦時賠償金を放棄した中国が、何とか別の形で日本から賠償金相当あるいはそれ以上の額面を引き出すためという現実的な要請もあったが、基本的には近現代の歴史に負うところが大きい。劣等感と出どころは同じで、戦争で負けつづけた歴史意識の産物である。
その歴史意識と、日本が隣国でなかったら中国はもっと発展していたはずだという責任転嫁の心理が、被害者意識として結実したものと考えられる。
有り体に言えば、悪いのは加害者(日本)であって、被害者(中国)は悪くない。加害者が被害者に金を出すのは当たり前だと考えること自体、中国の被害者意識であり、弱者の論理なのである。
●反日思想なのに日本に来たがる中国人
このように中国人は、日本に対して優越感と劣等感と被害者意識という矛盾する三つの意識を併せ持っている。
中国には日本を表現する言葉の一つに「小日本」(シャウズーべン)という言葉がある。今でもよく使われているが、「小さい日本」「ちっぽけな日本」「チビの日本」という日本を蔑んだ言葉だ。大中国としての優越感にあふれた言葉である。
それともう一つは「日本鬼子」(ズーべンクエズ)という言葉である。中国人からすれば日本人は「鬼」のような存在ということで、軽蔑よりも恐怖感を表した言葉である。これはまさに優越感と劣等感と被害者意識が混じり合った言葉と言えるだろう。
しかし、ほとんどの中国人は日本人と会ったこともなければ見たこともない。それにもかかわらず、中国より先んじて先進国の仲間入りを果たした日本の存在自 体を許せないと考えるのが中国なのである。だから、中国の反日意識は日中戦争とは関係ないと私は見ている。もし日本が中国より遅れている国であれば、おそ らくなんの問題も起こらなかっただろう。
中国はまわりの国をすべて軽蔑している。しかし、中国のなかに反日思想が蔓延しているという話は聞くが、反露思想や反韓思想あるいは反越思想や反印思想が 蔓延したことがあるとは聞いたことがない。つまり、中国からすれば、このような国々は遅れている国という認識であり、それに比べて日本だけが先進国として 中国の上位にあるということで、中国にとっては許すことができないのである。要は、中国の妬みなのである。
また、中国では「美国」と呼ぶアメリカに対して、国策として「打倒美帝」(米国帝国主義を打倒せよ)という国家による反米政策はあったものの、民間では反 米思想が蔓延したという話もあまり聞いたことがない。これは日本よりも先を行くアメリカなので、嫉妬する対象ともなりえないほどの格差を意識しているから だろう。
では、反日思想を抱く中国人だから日本を大嫌いかというと、決してそうではない。中国人は実利を大切に考える民族である。そこで、日本のような先進国で暮 らせるとなれば、平気で国を捨てて日本にやって来る。法務省の統計によると、日本国籍を取得している外国人でもっとも多いのは「韓国・朝鮮」で、次に多い のが中国人であり、年間、四〇〇〇人以上の中国人が日本に帰化している。その「韓国・朝鮮」とはほとんどが在日の二世や三世のことで、生活の基盤はそもそ も日本にあることを強調しておきたい。
日本に対して最大の反感を抱いているのが中国人であり、日本人になろうと一所懸命なのも中国人なのである。
これに関連して、残留孤児についても触れておきたい。
幼いころ中国に取り残された残留孤児には日本人の血が流れている。外見上は中国人と何ら変わらないものの、ほとんどの残留孤児は母国日本に行きたいと願っている。私自身も残留孤児の家族と付き合いがあり、その思いはよく理解できる。
そして、残留孤児が帰国すると、その家族五、六人が一緒に来日することになる。そのなかには子供の配偶者もいて、それは中国人だ。その中国人が反日思想に どっぷり浸かっていたとしても、ほとんど例外なく日本での永住を希望し、一緒に来日するのである。ここにも、中国人の非常に実利的な本質が現れている。
この残留孤児のなかには書類を偽造して来日している人もいると仄聞する。あってはならないことだが、それもまた実利に重きを置く中国人ならではの発想と言えるだろう。
●靖国問題でわかる台湾と中国の違い
台湾人は中国人ではない。台湾人は五〇年間、日本人と一緒に暮らしてきた民族であり、またその子孫である。中国人より日本人の本当の姿を知っている。
それでは、台湾人と中国人の対日観の違いはどこにあるのか? それは日本の優れた文化や文明を、同じアジアの一員として素直に認められるかどうかということにある。つまり寛容の心があるかないかということである。
台湾人の対日観は、中国人のような屈折したものではなく、日本が台湾の先生であることを素直に認めていることに基づく。そして、日本人の美学や日本文化を謙虚に学ぼうとしているところに特色がある。
その象徴的な人物が李登輝前総統であり、「老台北」こと蔡焜燦氏だ。李前総統は、日本の「わび」や「さび」といった文化や美学、日本に残されているサムラ イ精神、武士道精神を非常に高く評価している。松尾芭蕉の「奥の細道」をたどってみたいという思いも、実際に歩いて日本文化を実感したいからで、このよう な思いは台湾人に共通していると言ってよいだろう。
蔡焜燦氏にしても、その思いは同じで、著書である『台湾人と日本精神』という表題からもそれが見てとれる。そのなかで「われわれ台湾人にとって、また台湾という国家にとって、威風堂々たる日本がアジアのリーダーとなってもらわなければ困るのである」と書き記している。
台湾人はこのようにきわめて高く日本を評価し、尊敬できる民族として日本を位置づけ、日本文化は学ぶべきであると強く意識しているのである。
さらに、台湾人と中国人の違いは、日本人の死生観や心の問題に理解があるかどうかに顕著に現れている。そのよい例が靖国神社に対する考え方だ。
中国は、日本の靖国神社は軍国主義の象徴だと言って非難している。しかし台湾人は、李登輝前総統も靖国神社に参拝したいと表明しているし、蔡焜燦氏をはじめ、戦時中、高座海軍工廠で戦闘機の生産に携わった台湾少年工出身者など多くの台湾人が来日のたびに参拝している。
しかし、同じ台湾人で原住民出身の立法委員(国会議員)である高金素梅が靖国に祀られている台湾出身戦歿者の御霊を台湾に持ち帰ろうとしたり、訴訟を起こ している。これはどういうことかというと、父親が中国人で、母親が台湾原住民の彼女の背後には中国が存在し、彼女自身も台湾にある中国人団体の代表をつと めている。つまり、彼女の行動はまさに中国人の考え方に基づいた行動であり、決して台湾人の考え方ではないということだ。
この高金素梅と靖国問題に関しては後述するが、台湾人と中国人の対日観の決定的な違いは、まさに靖国神社への対応となって現れてきているのである。
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参考
「中国ガン・台湾人医師の処方箋」林 建良著 並木書房 2012年12月出版