【目を覚ませ】通常兵器としての核

【目を覚ませ】通常兵器としての核

真悟の時事通信より転載
               

                         
                    西村眞悟

 北朝鮮が三度目の核実験をしたことはもちろん知っていた。
 それを知っていながら、直ぐにはここに所見を書き込まなかった。多くの「非難決議」が収まってから書くべきことがあるだろうと思ったからだ。
 そう思っていた昨日(十四日)、衆議院において全会一致で「非難決議」がなされた。
 核実験直後の多くの「非難決議」に何の異存もない。
 全て賛同する。そのうえで、「非難決議」が山を越えてから、書いておくべきことがあるように思う。

 まず、核は、既に特別な兵器ではなく、通常兵器である。

 なるほど、アメリカだけが核爆弾を持っていて、それを日本のヒロシマとナガサキに落としたときは、特殊爆弾だった。
 しかし、それから、ソビエト(ロシア)が核を保有して、米ソ(露)は既に六十年以上にわたって、如何にして核の使用を抑止するかのせめぎ合いを繰り返してきた。
 つまり、核兵器を保有する者同士の、コミニュケーション、話し合いを積み重ねてきた。
 そして、その間、イギリス、中共、フランス、(イスラエル)、インド、パキスタンそして北朝鮮が核を保有するに至っている。
 さらに、この度の北朝鮮の核実験には、イランが大金を北朝鮮に支払って核技術者を立ち会わせて観察している。イランの核実験も確実に迫っているわけだ。
 しかも、我が国やドイツは、核兵器を持とうと思えば何時でも持てる。
 こう見渡してくると、既に核は特別な兵器では無くなっている。むしろ通常兵器とみなして、その「取り扱い」を考える段階にきているように思う。
 通常兵器と思えば、如何にしてその使用を抑止するか。その手段方法を検討するに際しても、柔軟な思考と発想が得られる。

 一昨日、グァムで多くの日本人が殺傷されたが、犯人が使用した「武器」は自動車と包丁だ。
 各家庭での生活に不可欠な自動車と包丁を、如何にして「武器」として使用させないか、これも難問である。

 同様に、如何にして核爆弾を使用させないようにするか。之が今、我々、人類に突きつけられた課題だ。
 しかし、この課題に関しては、既に米ソ(露)が、六十年以上経験を積み重ねている。それは、次の原則だ。
「核を保有している者同士では、核を使えない」
 つまり、アメリカが一九四五年八月に、日本に核を使えたのは、「アメリカが核をもち、日本が持っていなかったからだ」

 即ち、「核を保有している者同士では、核を使えない」という鉄則は、なにも米ソ(露)の六十年以上の経験で、彼等に教えてもらうことではなく、我々日本人が、六十八年前に多くの無量の命を犠牲にしたうえで得た痛恨の歴史的教訓ではないか。

 従って、どうすれば、我が国が、ヒロシマとナガサキに続いて三度目の核が我が国民の上に落とされるのを抑止することができるのか。
 この課題に対する、特別ではなく普通に考え判断した答えは、 「我が国も核をもつ」
 ということになる。

 なお、核兵器は既に通常兵器だ、という考えは、最初にアメリカ人(CIA幹部OB)から聞いた。彼は私に、
「だって、アメリカとソ連は六十年以上、核をどうするか話し合ってきたのだから」と言った。
 従って、「我が国も核をもつ」という普通の結論は、アメリカ人に一番分かりやすいはずだ。
 問題は、「我が国が核を如何にしてもつか」であるが、これは、まず、アメリカの核を借りる(リース)ことから始めればよい。そうすれば、六十八年前に我が国に核を落として臆病になっているアメリカさんも、安心するだろう。アメリカが我が国にワシントンやニューヨークに届く核を貸すはずがないからだ。
 しかし、最大の問題は、テロリスト過激派が核をもつことだ。何故なら、彼等には「核を持つ者同士では、核は使えない」の原則が通用しないからだ。
 この危険性を阻止することが、現在行われている「テロとの世界戦争」の最大の課題だろう。そして、北朝鮮の危険性は、このテロリストに核を売る可能性があるということだ。従って、我が国は、全力を挙げて北朝鮮の邪悪な体制を崩壊に追い詰めねばならない。そうすれば、全拉致被害者の解放も勝ち取れる。
 北朝鮮の核の脅威対策と拉致被害者救出は、不可分一体の課題なのだ。

 ところで、北朝鮮の核実験の報に接したときに、まず思ったのは、アメリカは「アホ」だなー、ということだった。
「だから言っただろう」、「だから言わないこっちゃない」と思った。

 アメリカは、二十世紀、一貫してアジアの共産主義者に誤魔化されてきてアジアの不安定要因をつくり続けてきた。
 アメリカは、ソビエトと中国国民党と中国共産党を援助して日本を目の敵にして闘ったが、共産中国(人類史上最大の惨害)を誕生させてしまった。
 そして、性懲りもなく、二十一世紀に入ってもクリントン以来、北朝鮮に騙され続けて我が国や韓国に金を出させて(KEDO)、この度、めでたく北朝鮮は三度目の核実験をした次第だ。
 ジョージ・ブッシュ政権末期の二〇〇八年秋、アメリカ国務省の長官ライスと補佐官ヒルのコンビが、北朝鮮に宥和して北朝鮮をテロ支援国家リストから外し、我が国の拉致議連に、
「北朝鮮は核開発を中止するので、日本は制裁を止めて北朝鮮に援助してほしい」と言ってきた。
 これに対して、平沼赳夫拉致議連会長は、
 拉致された日本人が全員解放されることが制裁中止の前提だときっぱりと答えた。
 私は、「クリントンが騙されたのと同じ手口でブッシュさんも騙されているよ」と言った。
 だから、この度の北朝鮮の核実験に対して、
「だから言わないこっちゃない」と思ったのだ。


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