【時論】民進党主席に返り咲いた蔡英文氏はひまわり学生運動を超えられるか

【時論】民進党主席に返り咲いた蔡英文氏はひまわり学生運動を超えられるか

日本李登輝友の会メールマガジン「日台共栄」より転載

             柚原正敬 日本李登輝友の会事務局長

 5月25日、蔡英文氏が民進党の主席に返り咲いた。蔡氏の前評判が高かったことで、元主席の謝
長廷氏はあまり立候補に意欲的でなかったために立候補を見送り、蘇貞昌氏は「太陽花学運(ひま
わり学生運動)」の台頭を見て立候補を見送ったと言われている。

 そうすると、蔡氏はこの学生運動以上に民意を惹きつけられるか、彼らの活動方針とどうコミッ
トしてゆくかが今後のポイントになるだろう。

 というのも、5月18日、「太陽花学運(ひまわり学生運動)」で学生リーダーを務めた林飛帆氏
(台湾大学大学院生)や陳為廷氏(清華大学大学院生)と中央研究院研究員の黄國昌氏らは、社会
運動によって政治改革を実現して真の民主化を目指したいとして、新しい活動組織として「島国前
進(Taiwan March)」を結成して記者会見を開き、引き続きサービス業貿協定や事前監督制度の法
制化を求め続けていくと発表しているからだ。

 特に新しい活動として、2003年に制定された「公民投票法」の改正を挙げていることは注目に値
する。公民投票は、投票者数が全有権者数の50%を超えなければならず、その上、賛成投票数が
50%を超えなければ成立しない。

 2012年の総統選挙でさえ、全有権者数は約1800万人(過半数は900万人)、投票率こそ74%
(13,452,016人)だったが、当選した馬英九氏は6,891,139票、つまりギリギリ51%ほどしか得票
していない。

 また、公民投票は全国規模の選挙と同時実施と定められているため、統一地方選挙か立法委員選
挙、または総統選挙に限られ、選挙には投票するが、公民投票には投票しないことも可能だ。事
実、陳水扁時代に総統選挙と同時に行われた2004年のミサイル防衛装備購入拡大の是非を問う公民
投票では、投票を棄権する中国国民党支持者が続出し、総統選挙の投票率が80%を超えていたにも
かかわらず、公民投票の投票率は50%を割って成立しなかった。

 さらに問題なのは、たとえ成立したとして、「公民投票法」にはその結果がもつ法的な効力につ
いての規定がないことだ。

 このように、非常に厳しい規定の上に、法的効力が保障されていない台湾の公民投票が果たして
民意を正確に反映できるかと言えば、かなり疑問だ。

 ひまわり学生運動の後身「島国前進」は、この民意反映の公民投票法の改正を要求している。蔡
英文・民進党主席は「島国前進」の活動とどうコミットしてゆくのか、政党リーダーとしての力量
が問われていると言っていいだろう。彼らとうまくコミットできれば、民意を惹きつけて、11月29
日に投開票の統一地方選挙、2016年の総統選挙に勝利する道筋も見えてくる。

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民進党主席に蔡英文氏 2年ぶり3期目/台湾
【中央通信社:2014年5月26日】

 (台北 26日 中央社)台湾の野党・民進党の主席選挙が25日行われ、蔡英文氏(=写真)が3回
目の当選を果たした。今年末に予定されている統一地方選挙と再来年の総統選挙に向けた舵取りを
担う。

 現職の蘇貞昌主席の任期満了に伴って行われた今回の主席選挙では、再選を狙う蘇氏と謝長廷元
主席が先月相次いで立候補を見送り、党体制の若返りなどを訴えた蔡氏と元高雄県副県長の郭泰麟
氏の一騎打ちとなっていた。

 全国14万3527人の民進党員を対象に行われた選挙の投票率は65.13%で、蔡氏は93.71%に当たる
8万5410票を獲得し、主席の座に返り咲いた。蔡氏の得票数は2008年の7万3837票、2010年の7万
8192票を大きく上回った。

 民進党には中国大陸政策の見直し、党体制の改革と党内結束力の強化、今年11月の統一地方選挙
と2016年の総統選挙への対応など、課題が山積している。

 蔡氏は、社会からの信頼を取り戻し、台湾の進むべき方向を指し示すためには、民進党の変革か
ら始めるべきだと強調。党内の若い世代には政策決定や運営に責任を負ってもらいたいと述べた。

 また、社会に向けて門戸を開き、各界の人材を招いて党運営に参加してもらい、民進党の視野を
広げて多様な意見を取り入れたいと意気込みを語った。

                               (蘇龍麒/編集:齊藤啓介)
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