【時事評論】齋藤正樹大使の台湾未定論こそ日本政府の立場

【時事評論】齋藤正樹大使の台湾未定論こそ日本政府の立場

            「台湾の声」編集部

5月2日の自由時報によれば、台湾における日本政府の事実上の出先機関、交流協会の齋藤正樹代表(事実上の日本駐台大使)が1日、台湾地位未定の発言をし、台湾の外交部が呼び出して抗議し、齋藤代表が関連する発言を撤回し、台湾政府に迷惑をかけたと謝罪する出来事があった。

齋藤正樹代表は、1日午前、中華民国国際関係協会の招きで嘉義にある中正大学で講演した際、先日の馬英九総統の「中日和約」(日華平和条約)によって日本が台湾の主権を中華民国に譲渡したという解釈に対し、異議を表明し、台湾地位未定論を語ったという。

これについて、参加者であった楊永明・国家安全会議諮問委員が抗議し、外交部の夏立言政務次官は午後5時半に齋藤代表を外交部に呼び、発言が事実に符合していないとして、強く抗議し、中華民国政府は絶対に受け入れられない、と表明した。

齋藤代表は、すぐに、中華民国国際関係協会に対して、発言が個人の言論であり、日本政府の立場を代表するものではないと説明。また、日本の駐台代表として、発言がふさわしくなかったとして、発言を撤回し、記録から削除するよう求めたという。

また、自由時報は馮寄台・駐日代表(事実上の大使)の1日夜の言葉として、交流協会の中篤・理事長から、斎藤代表の講演での台湾の地位についての発言は、日本政府の立場を代表するものではないと説明があり、「日本はサンフランシスコ講和条約第二条により台湾に関するすべての権利権限および請求権を放棄しており、台湾の法的地位について、独自に認定する立場にない」いう書面を馮代表が受け取っていると伝えている。
この出来事について自由時報は次のように伝えている。

齋藤代表は、台湾の外交部と馬総統の対日政策のよりどころである楊永明委員の抗議によって、発言が個人的な言論で、日本政府の立場を代表しないとしているが、講演を現場で聞いていた、関連領域における台湾のオピニオン・リーダーは、齋藤代表の台湾主権についての見方は正しいと記者に語った。

また馬総統が4月28日に国史館主催の催しで「中日和約」で台湾および澎湖の主権を中華民国に譲渡されたと述べたことについて、前考試院院長(中華民国体制がとる五院制の一院の長)・姚嘉文氏らは、完全に歪曲で、事実と違っている。日本はそれらの領土を放棄したのであり、誰に譲ると示されてはいない、と反論している。
外交関係者は、齋藤代表の台湾主権についての見方は、馬政府のタブーを犯してしまった、と見ている。

以上が自由時報の報道である。

齋藤大使本人や交流協会は、台湾地位未定論が政府の立場でないかのように説明しているが、それは、馬政府に対する配慮であり、事実ではない。
なぜなら、日本政府は国会答弁等において、再三、台湾の帰属は国連が決定すべきと述べている。これは未定論に他ならない。

たとえば、平成17年5月13日の衆議院外交委員会で答弁に立った町村信孝外務大臣は、「どこの国に対して放棄したかは明記していないわけでございます。したがって、台湾がどこに帰属するかについて、これは専ら連合国が決定すべき問題であり、日本は発言する立場にない、これが日本側の一貫した法的な立場であります」と述べている。
したがって、齋藤大使の講演での発言こそ、日本政府の一貫した立場に他ならない。

実は、今回、馬総統が、日華平和条約に言及したのは台湾の法的な成熟を示すものである。なぜなら、これまでは「中華民国」も中国同様「カイロ宣言」に基づいて台湾の領有を主張していたからである。しかしカイロ宣言なるものの問題点が次第に明らかになり、日華平和条約という法律に基づこうとする姿勢は良い方向であろう。
しかし、立場上、その解釈は、おかしなものとならざるを得ない。台湾が中華民国の領土であるかどうかは、中華民国憲法体制が、長く解決できなかった大きな問題である。憲法上の領土編入手続きもまだ行われていないのである。

馬総統がおかしな解釈を発表したのは、国際政治上の対中依存を深める中、日本やアメリカの関与を願ってのことではないか、という見方もできる。本音と建前の使い分けである。

齋藤大使の講演会での発言は、実は、馬総統への援護射撃になっていたかもしれないのだ。

台湾の真実を知る我々は、齋藤大使の講演会での発言こそが正しく、台湾の地位未定論こそ日本の立場であると日本、台湾、および国際社会に伝えていく必要があるのではないか。

齋藤大使の勇気ある行動に拍手を送りたい。


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