【参考資料】日台アライアンス政策提言 Vol.1

日台アライアンス政策提言
Vol.1 (2022年7月20日発行)

安倍元首相が唱えた日台間安全保障対話の構築を

【参考資料】

安倍晋三元首相は2022年3月22日、日華議員懇談会総会に出席、台湾の蔡英文総統とオンライン会談を行なった。その際、安倍元首相は蔡英文総統に対し、安全保障に関する日台間の情報共有を蔡英文総統に呼びかけた。
https://www.youtube.com/supported_browsers?next_url=https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fwatch%3Fv%3DJx6kmWHsoLg&ab_channel=%E6%97%A5%E8%8F%AF%E8%AD%B0%E5%93%A1%E6%87%87%E8%AB%87%E4%BC%9A%E4%BA%8B%E5%8B%99%E5%B1%80
実はこれより前の2019年3月1日、蔡英文総統は産経新聞のインタビューで「安全保障やサイバー攻撃の問題について日本政府と是非対話をしたい」と述べ、同様の呼びかけを当時の安倍政権に対して行っている。蔡英文総統は「東アジアに位置する台湾と日本は同じ脅威に直面している」と強調し、「安全保障協力の対話のレベルを上げることが非常に重要だ」として、日本側に法律上の障害を克服するよう求めたが、その後進展はなかった。
https://www.sankei.com/article/20190302-5T2QZLWVBRMSVNVRGDT3UOPO5E/
それから2年の月日が過ぎ、米中貿易戦争の勃発、コロナウイルスによるパンデミックとサプライチェーンの混乱、香港の一国二制度の破壊、ウクライナ戦争の発生により、世界は第二次世界大戦以来の激動の時代を迎えた。その間も中国の習近平政権は南シナ海における拡張、東シナ海、台湾海峡での挑発や軍事的威嚇、全方位的な戦狼外交と国際秩序への挑戦を繰り返し、現在、「台湾は明日のウクライナ」とも言われるほどの緊張状態を台湾海峡にもたらしている。
こうした世界情勢に即応し、安倍元首相は2021年末より「台湾有事は日本有事、日本有事は日米同盟の有事」と明言、アメリカに曖昧戦略を捨てて明確戦略を打ち出すようはっきりと求めるようになった。そして日米台の同盟とも呼ぶべきさらなる協力関係の構築を呼びかけていた矢先に、暴徒の凶弾に倒れた。
安倍元首相が目指したもの、それは日本とインド太平洋地域の平和と安定である。そして日本を防衛するためには、同盟国アメリカのほか、自由と民主主義の価値観を共有する台湾との協力関係が不可欠であることを見通していた。国交のない台湾と同盟関係になければ、日本は自国の安全を守れないことを知っていた。そこで、現行法でできる範囲での第一歩として、日台間の安全保障対話の構築を主張したのである。
長年、最前線で中国と政治的、軍事的に対峙してきた台湾は、中国の動向を最も迅速に察知している。同じ言語を使用するため、大量の情報を素早く取捨選択して処理することができ、中国が仕掛けるフェイクニュースなどの情報戦に対しても高度な分析能力を備えている。そして、世界のスタンダードとは大きく異なる中国人的思考を熟知している。これらの要素により、台湾の対中国インテリジェンスは世界一質が高く有益であると言える。
日台両国は今すぐにも安全保障対話のルートを築いて日頃から情報交換を行ない、不測の事態に備えなければならない。

安倍元首相が2021年11月29日に受けた台湾の民視テレビのインタビューを抜粋して紹介する。
(日本語インタビュー)
獨家專訪/安倍晉三重申台灣重要性「台灣有事等於美日同盟有事」
(18分鐘完整版)-民視新聞
https://www.youtube.com/supported_browsers?next_url=https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fwatch%3Fv%3Dd2KOnnh7smU&ab_channel=%E6%B0%91%E8%A6%96%E6%96%B0%E8%81%9E%E7%B6%B2FormosaTVNewsnetwork

―インド太平洋では日本と安倍元総理の力が絶対に必要です。南シナ海はかつてない中国の脅威に晒されています。どうお考えですか。

安倍元首相
・インド太平洋構想については私がかつて2007年にインドにおいて「二つの海の交わり」という演説を国会で行いました。インド太平洋という地政学を世界に初めて示したんですが、その後2016年にケニア・ナイロビにおいて、「自由で開かれたインド太平洋戦略」として、より洗練されたものとして発表しました。
・海というのは公共財であり、その海を自由に行きかうことができなければ、世界が交流、交易をして富を生み出すことができない。だからこそ世界がしっかりと国際法を守り、海を公共財として自由で開かれたものにしなければいけません。
・そのためにはこうした概念、あるいは自由・民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値を共有する国々が協力しながら、こうした概念を広げ、定着させていく必要があります。
・その意味において、台湾は私たちと同じ価値観を共有しています。台湾とも協力をしていきたい。
・中国による一方的な現状変更の試みについては大変憂慮している。南シナ海、東シナ海、台湾に対しても軍事的な威圧を高めている。世界がこうした問題意識を共有しながら対応していくことが求められている。

―台湾有事は日本有事と言われているが、その時日本はどんな行動を取るでしょうか。

安倍元首相
・日本の与那国島、先島諸島と台湾の距離は100キロ、だから台湾有事は日本有事、日米同盟の有事になっていくと考えなければいけないと思っている。
・有事にならないように努力し、台湾海峡の平和と安定を重視する、日米首脳会談、G7でも合意、盛り込まれている。
・世界の意志を中国が受け取って自制することを強く望んでいる。

―最近の台湾の世論調査では中国が台湾に侵攻した時、日本が助けてくれると考えている台湾国民は6割を超えています。この考えは果たして正しいのでしょうか。また、安倍首相は、アメリカが台湾を守ることはどこまで現実的であると思われますか。

安倍元首相
・まず米国は今まで戦略的な曖昧さ、いわゆるambiguity政策を維持してきました。これは、台湾を防衛する義務を果たさないとは言っていないですね。果たすかどうかを明確にしないというだけであります。そのことによって中国、台湾双方が自制するのではないか、という戦略なのだろうと思っております。
・それと同時に米国というのは、自由世界、民主主義世界のリーダーですから。自由と民主主義を尊ぶ台湾の存在を重視するのは当然のことなんだろうと私は考えています。
・そして台湾は日本の古くからの友人ですね。台湾は日本をさまざまな機会に支援してくれました。東日本大震災で最も多くの額を支援していただいた。それは台湾です。私たちはそれを忘れません。
・ですから今回ワクチンを提供し、台湾からはマスクをいただいた。そういう関係はこれからも変わらないのだろうと思います。
・軍事的な対応については状況に応じて現行法に則って我々は対応しなければいけないと考えています。

―安全保障以外に日台経済の協力はとても大切です。熊本にTSMCの工場ができますが、日本や世界にどのような影響を与えるでしょうか。

安倍元首相
・COVID19以降、日本では経済の安全保障の重要性が再認識された。安倍政権では経済安全保障をずっと言い続けてきましたし、NSC(国家安全保障会議)に経済班を設置しました。
・必要なものを必要なだけ、自国で確保できるようにするということ。もう一つはサプライチェーンが常に正常に機能していくこと。そしてもう一つは世界で最先端の技術を確保していく、あるいは稀少鉱物資源について常に確保できるようにしていく。
・そのために同志国との協力を高めていく。テックアライアンス、技術、生産で同じ価値観を持つもの同士がお互いに協力をしていくことが求められていく。
・間違いなく台湾は私たちと価値を共有している友人ですから、まさに半導体、まさに産業のコメ、半導体において協力していくべき。世界トップレベルの技術をもつTSMCが日本で拠点を持つことは、日本のみならずテックアライアンスの利益になる。

―日本は台湾が困っているときにアストラゼネガのワクチンを贈ってくれ、台湾人は非常に感謝している。こういう時に真の友情の真価が分かると思います。感染症が落ち着いたらどの国へ旅行に行きたいかという調査で、9割近い台湾人が日本に行きたいと答えました。日台関係はさらに強化すべきですが、たとえば台湾関係法のような法律は日本には必要ありませんでしょうか。

安倍元首相
・台湾関係法に準ずる法律を作るべきだという議論は日本でもあり、超党派の日華議員懇談会でも議論されています。
・台湾が国連のさまざまな国際機関に入っていくのを応援したいと思っていますし、自由で開かれたインド太平洋構想においても台湾という存在は極めて重要であると認識しています。
・台湾関係法が今すぐ必要かと言えば、私はそれが今すぐ必要であるとは考えていませんけれど、現行法の中において台湾有事になればそれはもう日本有事に発展していく可能性は限りなく高いわけです。その中で日米が共に地域の平和と安定を守るために台湾に対してさまざまな支援をしていくことが大切だと思っています。
・もし台湾が有事になれば、それはもう事実上日本の有事に発展していく可能性は限りなく高い。その中で日米が共に地域の平和と安定を守るために台湾に対してさまざまな支援をしていくことが大事です。

―エドワード・ルトワック氏は中国は台湾に対して武力侵攻ではなく、大規模なフェイクニュースやサイバー攻撃を仕掛けて台湾の抵抗する気力をなくして、投降するようにさせるということを言っていました。現在空前の緊張状態にある台湾人に対して、勇気づけるアドバイスをくださいませんか。

安倍元首相
・今の戦争・戦闘は兵隊通しがぶつかり合うというのは遠い過去のものとなり、サイバー、宇宙、電子戦、電磁波、サイバー、それに合わせた世論戦という分野に変わってきました。
・台湾もそれに備えていく必要はあるし、我々もそうした認識を持ちながら対応をより強靭にしていく必要があると思います。


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