傳田晴久(台湾台南在住)
1. はじめに
素晴らしい本に出会いましたので、台湾通信をお読みくださる方々にご紹介させていただきます。本は「中国ガン」という、何となく納得したくなるようなタイトルの本です。著者は栃木県で開業医をなさっている台湾人のお医者様林建良氏で、「正名運動」(在日台湾人の外国人登録証の国籍記載を「中国」から「台湾」に改正する運動で、のちに台湾独立運動の主流となっている)を展開されている方です。
本の帯には「中国は地球のガン細胞!中国の覇権主義に対抗する5つの方策」とあり、吃驚させられます。この本はいろいろの所で取り上げられていますので、すでにご覧の方も多いと思いますが、まだお読みでない方のために以下、概要をご紹介いたします。もし、興味をそそられましたら、ぜひ「中国ガン」(並木書房 1,500円+税)をお読みください。
2. 「中国という名のガン細胞」(第一章)
[第一章]では「生物学的観点から中国を見れば、中国は『ガン』であることは明白である」と述べ、普通の細胞(肺や胃、皮膚、神経など)には「アポトーシス」(自己犠牲)という現象(より良い個体を作るため、あるいは新しい生命を生むため、古いものは自ら死んでいく)が起こるが、ガン細胞は普通の細胞と大きく異なり、非常に利己的で自己中心的であり、無限増殖する。ガン細胞は独自では生きていけず、必ず他の細胞に寄生して、その栄養素を奪い取って大きくなっていく。やがてガン細胞に蝕まれた生体は最終的には死ぬことになり、生体を食い尽くしたガン細胞も、それによって死滅する、と生物学上のガン細胞の性質を明らかにし、中国(人)が如何にそれに似ているか、事例を挙げて解き明かしている。その1:中国人の本能
自己中心的:「俺さえよければそれでいい」、「俺の物はおれの物、お前の物も俺の物」、「易子而食(子を交換して食す)―共食い」
その2:環境問題
拝金主義の結果:大気汚染(石炭→NOx、PM2.5)、水質汚染(世界最大の排水溝と化した長江、太湖のアオコ、死の海となった渤海湾)、環境破壊(三峡ダムの危険)
その3:経済問題
普通の細胞はそれぞれ独自の役割を持ち、役割を分担しながら共存している。肺の細胞は酸素を吸入し、血液に酸素を運ばせる。決して自分で独占しないが、肺のガン細胞は酸素を独占してしまうので、人は死んでしまう。
中国の社会主義市場経済というのは「劫貧済富」(貧しいものから略奪して富める者を救済する)、即ち 公権力による富の略奪と独占の経済であり、富者が貧者から財産を奪い取ると言うものである。
その4:犯罪事情
中国独特の犯罪文化:「法」は「搾取の道具」、道徳と法という言葉はあるが実在せず
中国犯罪の2つの特色:「全面的かつ普遍的」、「組織的かつ国家的」
社会的地位の利用:医者は白衣の悪魔、患者は「金のなる木」、盗まれる臓器
3. 世界に転移する中国ガン(第二章)
[第二章]では、人のガンが転移するように「中国ガン」も転移することを明らかにしている。正常な細胞は決まった場所で自分の役割を果たしているが、ガン細胞はおとなしく自分の居場所に留まってはくれない。胃ガンになれば胃ガン細胞は肝臓に入ったり、肺に入ったりする。これはガン細胞の「遠隔転移」という。中国ガンも転移する―移民、留学、投資、密入国などのルート、形態を経て世界中に散らばり、転移先の国々で様々な問題を引き起こし、その国の社会や文化を変質させる。典型的事例は有害製品、有害食品を世界にばらまいている。巨額のワイロと武器供与でアフリカの独裁者たちを籠絡する。孔子の仮面をかぶったガン細胞(孔子学院)は現在世界各地に巣をつくり始めている。中国人留学生が学術の殿堂を破壊している。
4. 中国人も中国ガンに苦しんでいる(第三章)
[第三章]では中国人も「中国ガン」に苦しんでいることを伝えてくれている。ガン細胞の増殖によって、中国の大地は汚染され、砂漠化が進み、水や農作物も毒にまみれ、貧富の格差は想像を絶するものであり、持たざる者の怨嗟の声は日増しに高まり、各地で暴動が頻発している。その結果、名誉・権力・富を一身に集める中国の政府高官たちは競って海外へ逃げ出そうとしている。国の舵取りをする高官自らが中国の行く末に希望を持っていないのだから、まさに末期ガンの状態と言える。5. 中国ガンは退治できる(第四章)
[第四章]で中国ガン治療の可能性について解説してくれる。病気の自覚がなければガンは治らない。中国ガンを治したければ、次の4つの幻想を捨てねばならない。� 中国とは共存共栄できると言う幻想(ガン細胞との共存の道はない)
� 中国はいずれ文明的、先進的な国になると言う幻想(ガン細胞が良い細胞に変わるはずがない)
� 中国を助けていい(環境汚染に加担していい)という幻想(ガン細胞の拡大は防ぐしかない)
� 中国さえ刺激しなければ安全であると言う幻想(ガン細胞を刺激しようがしまいが、その増殖は止められない)
我々人体には免疫細胞(白血球、リンパ球など)があり、有害な細菌やウイルスをやっつけ、自分の細胞から変化したガン細胞を発見し、除去している。このような細胞が「ナチュラルキラー細胞」と呼ばれる「NKリンパ球」であり、中国ガンに対してもそれに相当するものが存在する。
現在世界には7種類の「NKリンパ球」が存在している。それは
� 法輪功(メンバーは全世界に約一億人いると言う)
� 天安門事件の関係者と被害者(「天安門の母」運動の広がり)
� 地下教会(7,000萬人の信者と欧米諸国の支持)
� 抵抗するエリート層(共産主義者は本質的に反体制派という矛盾)
� 海外の民主運動家(団結できないと言われる中国人がネットで団結)
� 香港(中国の真実を発信し続けるている)
� ウイグル、モンゴル、チベットなどの圧迫されている民族(世界を味方にする3民族)
である。
ガンの治療法には�手術、�化学療法、�放射線療法、�免疫療法の4つがあるが、切除できるなら�が最も望ましい。しかし、中国ガンは既に世界の隅々まで転移しているので、世界全体が受ける害を最小限にしながら中国ガンを退治するには�の免疫療法しかない。免疫療法は身体全体の免疫系統を活性化させ、中国内部に存在するNKリンパ球を支援する事である。
6. 日本はブラックジャックになれるか?(第五章)
[第五章]は中国ガンを具体的にどのようにして退治するかについて述べているが、著者林建良さんは「中国というガン細胞に立ち向かえるのは、名医『ブラックジャック』のような国だ」と述べている。ブラックジャックは手塚治虫が作った漫画の主人公で、無免許であるが、法外な報酬をとりながら、次々と難病を治していく医師である。この漫画は1973年11月〜1978年9月に連載された作品である。医師ブラックジャックは他人の批判を恐れず、型破り、破天荒な発想、哲学を持ち、きわめて大胆な治療を行う。その哲学は「どんな方法を使ってでも、この病気を治す」である。
中国ガンが日に日に膨張し、絶えず遠隔転移している。このままではいずれ地球全体も壊滅する。それを防ぐ方法はたった一つ、中国を分裂させて無害化することである。共産党の一党独裁が終われば、その瞬間にこの国は分裂するのである。中国ガンの治療は限定的切除と広範囲な免疫療法によって無害化する以外に道はない。このような神業はブラックジャックを生み出した日本しかできないのだ。ブラックジャックならどのように治療するか考えて、次の「5つの処方箋」を書く。
(1)「民主化」を中国に求める
日本は中国の民主化状況を監視し,インターネットや各種メディアを動員して中国のNKリンパ球を元気付けること。
(2)「言論の自由化」を中国に求める
日中双方の取材の自由、報道の自由が保障されるように監視活動を行う。
(3)「中国人権法」を制定する
中国に人権の尊重を強く求めるために、北朝鮮人権法にならって中国人権法を制定する。
(4)「環境問題の解決」を中国に求める
環境税法を作り、中国に進出している日本企業の環境汚染に対して課税し、また日本に輸出している中国企業の環境汚染に対して課税する。
(5)「日本版台湾関係法」を制定する
米国の「台湾関係法」に倣い「日本版台湾関係法」を制定し、日台関係に法的根拠を与える。
日本が本気で中国ガンを退治しようとするなら、台湾と連携しなければならない。従来台湾政府も日本政府も中国の嫌がることをせず、中国に媚びる姿勢に徹することで中国ガンを助長してきた。
7. 台湾の役割
林建良さんは台湾について次のように述べている。
中国の恐喝の常套手段は「核心的利益」と勝手にきめつけながら、戦争を仄めかすことである。これはチンピラと同じで、「手を出したら刺すぞ」と虚勢を張る態度なのだ。核心的利益という言葉は、対外的には「手を出すな」という恐喝の効果と、対内的には「強い態度で臨んでいる」というアリバイ作りの狙いがあると同時に、台湾に対して「独立するな」との警告も含めている。実際中国が一番恐れているのは、台湾が「事実上の独立」(de facto)から「法理上の独立」(de jure)に移行する事であろう。台湾の法理的独立が中国の分裂を促す最大の起爆剤になる。
しかし、中国がもっと恐れているのは台湾の独立宣言でなく、台湾が中国の民主化運動を積極的に支援する事だろう。台湾が民主主義をもって中国に圧力をかければ、独立宣言と同等かそれ以上の破壊力を持つ。なぜなら、中国人も現在の共産党独裁体制に不満を抱き、言論の自由、民主化と人権尊重を求めているからである。
2008年5月に総統に就任した馬英九はすぐさま中国人観光客に台湾旅行を開放した。その結果、中国人観光客が知ったのは台湾社会の自由な雰囲気と台湾人の善良さである。台湾人は中国人と接触する機会が増えれば増えるほど、自分は中国人ではなく、台湾人だという意識が強まる。中国人は台湾人と接触すればするほど、「同じ中国人」なのになぜ台湾人に出来て自分には出来ないのかという疑問が深まる。その疑問は、いずれ中国共産党にぶつける奔流となり、独裁体制をなぎ倒す力になろう。
8. おわりに
実は今までに多くの方が書かれた中国(人)諭を読みましたが、それらはいずれも結構時間を要しました。しかし、この本は実に面白く、分かりやすく、一気に読んでしまいました。そして今まで見聞きしてきた中国(人)についての「いろいろ」について、ことごとく納得させられてしまいました。同時に空恐ろしさ、薄気味悪さを感じると同時に、何かしなければいけないと思いました。
本書「中国ガン」には、中国の実態について色々な状況が紹介されています。概要は上記の通りですが、是非とも多くの方々にこの本を読んでいただきたいと思います。またこの本が中文に翻訳されることを切望致します。
「中国ガン・台湾人医師の処方箋」
『台湾の声』 http://www.emaga.com/info/3407.html