【中国、台湾に「政治対話」迫る】北京APEC「馬総統招待」切り札に

【中国、台湾に「政治対話」迫る】北京APEC「馬総統招待」切り札に

2014.1.29 産経新聞
 

【上海=河崎真澄】中台当局間の閣僚級による初の公式会談は、経済交流から始まった中国の台湾統一工作が、実質的に「政治対話」に一歩を踏み出すことを意味する。中国側は査証(ビザ)発給業務など領事館に当たる出先機関の相互設置や、報道機関の交流拡大などを求める見通し。北京で開催されるAPEC首脳会議への馬英九総統の招待も切り札に、揺さぶりをかける。中台の攻防は今後、激しさを増しそうだ。

 中台は1949年の分断後、東西冷戦時代の軍事衝突も含め激しく対立。互いに「一つの中国」を代表する政権だと主張し、外交関係を結ぶ国を奪い合ってきた。だが、2008年に政権を奪還した中国国民党の馬政権は対中融和にカジを切り、投資や貿易など両岸(中台)の経済交流を急ピッチで改善させてきた。

 相互に主権を認めていない中台は当局間の直接協議ではなく、中国の「海峡両岸関係協会」と、台湾の「海峡交流基金会」という“民間組織”を通じ、間接的に協議することが定着してきた。これを当局間の閣僚級会談に格上げするのは、中国側が台湾統一に向けた政治対話の進展で、強い自信を抱いたことの表れとみていい。

 12年11月に誕生した中国の習近平指導部は、「中華民族の偉大な復興」を掲げて、香港やマカオの返還で使った「一国二制度」を台湾にも適用したい考え。習国家主席が議長として主導権を握る北京APECを、台湾統一工作での“平和的進展”を国際的に誇示する場に仕立てる戦略も練っているもようだ。

 経済的に中国なしに成り立たなくなった台湾が、中国の政治対話の要求を拒み通すことは難しいともみられる。

 ただ、本格的な政治対話に踏み切るまでには、南シナ海や台湾海峡のシーレーンをめぐる日米など国際社会の動向や、民主主義体制の現状維持を強く望む台湾世論などハードルも高い。台湾で16年に行われる総統選もにらみ、馬政権は政治対話に応じる格好を見せつつ、一方で現状維持のための現実的な道を探ることになる。

台湾閣僚2月11日から訪中 分断後初、南京で閣僚級会談

 【台北=吉村剛史】台湾の対中国政策を主管する行政院大陸委員会は28日、王郁●(=王へんに奇)主任委員が2月11〜14日の日程で初訪中し、11日に中国・南京市で中国国務院(政府)台湾事務弁公室の張志軍主任(いずれも閣僚級)と公式会談を行うと発表した。中台当局間での閣僚級による公式会談は1949年の分断後初めて。

 2008年の馬英九政権発足以降、台湾は経済を軸に対中関係を改善してきた。一方、将来の台湾統一を目指す中国は台湾に政治対話を求めてきた経緯があり、従来の民間窓口を通じた交流から、当局間の直接交流に昇格させることで、中台間の連携強化を演出する狙いとみられる。

 発表では、王氏は20人余の訪問団を率いて11日に空路南京入りし張氏と会談。今後の中台当局間の連携方法や双方の出先事務所設置などについて意見交換する。12日は孫文の陵墓・中山陵を訪れ、南京大学で講演。13、14日は上海でテレビ局や台湾人ビジネスマン子女の現地学校などを視察し上海から帰台する。

 今秋にはアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が北京で開催される予定で、馬英九総統が出席するかに関心が集まっている。


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