【レポート】日本との安全保障上の協力関係構築を期待する台湾

「台湾の声」【レポート】日本との安全保障上の協力関係構築を期待する台湾

台湾の声編集部・多田恵 2014.8.22 22:10

8月20日(水)の夜、台北市の慕哲カフェ(カフェ・フィロ)の地下にある「サロン」で「日本の集団自衛権の解禁が台湾の戦略環境に及ぼす影響」について語り合う集会があった。

主催は台湾独立建国聯盟台北市支部、台湾安保協会の王藍輝・研究員の司会の下で、同協会秘書長でもある李明峻氏および民進党政権時代には「国家安全会議」の諮問委員を務めた陳文政氏が講師として招かれた。

陳氏は、軍事問題はそれにふさわしい注目を与えられてこなかったと前置きし四つの点を指摘した。

1)主体性の確立
台湾の軍隊が国家化したとはいうが、その実態は、2012年の総統選挙で蔡英文氏が45%の得票で惜敗したとき、軍人およびその家族の地域では蔡氏の得票率が3%あまりに過ぎなかったこと、また、中国の広州に設立された黄埔軍官学校の精神が継承されていること、馬英九が「甲午戦争(日清戦争)120周年記念」の活動を行うなど、中国との連結がまだ強い軍が台湾を守れるかという問題を指摘した。

2)米国からの武器の輸入
保険として米国から武器を購入しているが、台湾よりも空軍の整備が遅れていたシンガポールが、今では、台湾に先んじてF16C、Dを購入している。購入に頼らずに自主開発をして技術を保有するという選択肢もあるのではないか。

3)国防の国民化
共和主義の伝統がある欧州では、国家と国民の契約関係として兵役が捉えられている。他方、英米では職業の自由として扱われている。兵役は共同体意識を育てる場所でもある。台湾で兵役を廃止することをどう考えるか。文民は軍事をどう捉えるか?

4)貢献のグローバル化
自らが他人に貢献しないならば、われわれは、いかなる資格で他者がわれわれを助けることを要求できるのか?災害協力は将来の安全保障上の協力を潤滑にする。

また、李氏は、日本が武器輸出解禁することによって米国の軍事産業は影響を受けるであろうと指摘した。他方、陳氏によれば台湾が輸出しているのは弾丸であると紹介した。ただ台湾には、インターネット攻撃を防御する専門家はいるものの、産業化していないという。

また会場との討論の時間には、集団自衛権解禁の台湾での反応、および、民進党の考えについて質問があった。

これについて、李氏は、そもそも集団自衛権解禁のことが台湾のメディアではあまり取り上げられず62%の台湾人がこのニュースを知らないが、台湾が攻撃を受けた際に日本が台湾を支援することについて台湾世論の6割が賛成していると紹介した(新台湾国策シンクタンクが15日に発表した調査結果)。

また民進党の国防政策チームの召集人でもある陳氏は、日本には台湾関係法への動きがあり、台湾との関係を制度化する考えがあるが、日本側が慎重であることと、台湾側の駐日武官が日本語を習得するなどに時間がかかりコミュニケーションが十分に図れていないためか、米国国防総省からは年に2000人が台湾に来ていることと比べると安全保障における交流に雲泥の差があると指摘した。

陳氏によれば、高度な安全保障上の直接協力は、さまざまな圧力があって、すぐにはできないかもしれないが、まず最初の段階として、台湾が日本に貢献・協力できるのは、ネット攻撃への防御と軍事産業における協力であるという。

台湾のインターネット攻撃への防御の技術は世界の最先端である。中国が、そのほかの国を攻撃する前に、まず台湾でインターネット攻撃の技術を試すので、サンプルが充実している。ほかの国々は攻撃を受けたときに、台湾に問い合わせれば、資料が充実している。すでに、米国との間で、協力関係を確立しているという。

なお、民進党は22日に、「第6号国防青書」を公表した。また台湾安保協会では9月13日(土)に台北で米国および日本の専門家を招いて安全保障に関するシンポジウムを行う。


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