2009.2.18
台湾の声
台湾の対中国窓口である海峡交流基金会(海基会)の江丙坤理事長が今後の対
中関係の発展について、中国と実質的な自由貿易協定である包括的経済協力協定
(CECA)の締結を目指すことをたびたび語っている。これに関連して先日、蘇起
・国家安全会議秘書長が「両岸CECA締結は規定路線」と表明し、尹啓銘・経済部
長(経済相)もCECA締結を前向きに検討する意向を示した。
海基会の江理事長は、台湾と中国の「CECA」と香港と中国(大陸)の「CEPA」
(経済貿易緊密化取決め)は異なり、台湾の主権問題には触れないと強調してお
り、台湾が中国とCECAを締結する必要性の理由として、中国が台湾と外国がFTA(
自由貿易協定)を結ぶことに反対していることから、台湾が先に中国と経済協定
を結べば、台湾と外国(特に東南アジア諸国)とFTAを結びやすくなる(中国が反
対する理由がなくなる)と説明している。
しかし、中国はFTAが「国と国」が結ぶ自由貿易協定であることから台湾と外国
が結ぶことに圧力をかけるのであって、台湾が中国と実質的にFTAに類似したCECA
を結んだからといって、台湾が外国とFTAを結ぶことを黙認する保障はない。
また、台湾が中国とCECAを締結して中国資本や中国製品、中国人労働者の台湾
流入を自由開放してしまった場合、台湾の産業構造が崩れ、台湾経済が中国人に
握られてしまう恐れがある。中国人経営者の下で、台湾人が中国人と同一または
それ以下の賃金で働くことになったり、台湾市場に中国製の粗悪品が紛れ込み、
中国人が大量流入して台湾人の職を奪うなどの混乱が予想されるほか、さらに進
んで台中経済の開放の究極目標が完全一体化(一中市場)となれば、長期的には
台湾経済は中国経済に呑み込まれ、大企業以外は台湾が中国と同レベルの水準ま
で経済水準が落ち続けるのではないかという懸念がある。
野党・民主進歩党の蔡英文主席は、「社会的なコンセンサスもなく、効果的な
経済評価もなく、戦略的評価もない両岸CECA締結に反対する」という姿勢を明確
にし、過度な対中国開放や産業・資金の対中流出が失業を生んでいると指摘した
。
また、台湾団結連盟の黄昆輝主席は、「こんなに重要な協定を『規定路線』の
一言だけで結べるのか?」と馬英九政権の動きに疑問を呈し、「中国とCECAを結
ぶのであれば、立法院(国会)での決議のほか、国民投票で決定されるべきだ」
と主張した。