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台湾の検察当局が六月三十日に李登輝氏が総統在任中、国家機密費を横領し、シンクタンク設立の費用に充てたなどとして起訴したことに関し、同国内では馬英九・国民党政権の謀略とする見方が一般的だ。
李登輝氏は来年一月の総統選挙に向け、「棄馬保台」(中国傾斜を強める馬英九への投票を拒否し、台湾の主権を守ろう)と訴えるなど、民進党候補の蔡英文氏の側に立っている。だから国民党政権の狙いは選挙に勝つため、蔡英文陣営のイメージダウンを狙ったもの、蔡氏の支持者や本人への恫喝効果を狙ったもの、あるいは国民党をバックアップする中共の指示を受けたもの等々、さまざまな憶測が流れている。
在台中国人勢力主導の国民党にとり、法律、司法は政敵打倒の道具であるのは、戒厳令時代に嫌というほど見せ付けられているから、台湾人の多くがこのように受け取るのも無理はない。
テレビの討論番組では国民党寄りのコメンテーターたちでさえ、「なぜ今頃、十年以上も前の案件を引っ張り出すのか」と、馬英九の関与を疑っていた(李登輝氏に同情しているわけではないようだが)。
そこで馬英九氏は起訴の翌日には記者会見を開き、「私はこれまでも司法を尊重し、その独立を守ってきた」と強調し、関与を否定した。その真偽はともかく、法務部門が相当暴走しているのは事実らしい。
李登輝氏が横領に関与した証拠は示されていない。その上での起訴など、「暴走」以外の何物でもないだろう。
そこで国民党内部でも批判の声が噴出している。李登輝氏への迫害は有権者を怒らせ、かえって選挙に悪影響を及ぼすことを懸念しているのだ。。
起訴から二日後の七月二日、党の「大老」である許水徳元考試院長は李登輝氏を訪問した。「九十一歳の日本人女性が李登輝氏と会いたがっている」と伝えるためで、起訴の話は一切しなかったと本人は語っている。もともと李登輝氏とは関係の良好な許水徳氏だが、もしや国民党本土派(台湾人)の「李登輝氏との関係は良好」とする有権者へのアピールだったのか。ちなみに党内の本土派はもともと、国民党の台湾化を推進した李登輝氏には好意的だ。
それほど選挙には不利に働く起訴を、検察当局があえて行ったのには、それなりに理由ああるのだろう。何が何でも選挙に勝って政権を守りたいという、強烈な意志が働いたに違いない。
それは国民党内部のものなのか、中共の意向を汲んだものなのかはわからないが、後先を考えずに恫喝に出てしまうところは、いかにも中国人的な作法に見える。
証拠があろうがなかろうが、言ってしまった方が勝ちだとするのも中国人的なやり口だが、実はそうしたものは台湾人にも、そして日本人にも、とても有効だ。狡猾さに欠けるこれら民族は、いとも簡単に、そうした宣伝、印象操作にやられてしまうものだ。
たとえば日本では、今回の起訴をNHKニュースが報じる際、「李登輝被告」と呼んでいた。これだけで全国の日本人は、李登輝氏が悪事を働いた証拠が見つかったと誤解したのではないか。
日本人にとって李登輝氏は台湾の象徴的な人物だから、これで台湾のマイナスイメージが広くもたらされたことだろう。そうなると今回の起訴で一番喜ぶのは、誰よりも日本と台湾の関係悪化を望む中共ではないか。
もちろんだがらといって、今回の起訴の「黒幕」は中共だと断じるわけではない。ただそうした状況に乗じた中共やその傀儡が、日本において李登輝=台湾の巧妙な誹謗宣伝に乗り出すことはだ。警戒した方がいいと思う。
話は台湾に戻るが、馬英九氏は本当に司法の独立を守るだろうか。選挙で破れ、総統の座を追われれば、待っているのは政敵の報復だと怯えるのが中国人というものだ。李登輝氏など台湾人勢力に、恫喝や弾圧を加えないとは誰にも言えない。